『マッドサイエンティストの手帳』113
●やねこんレポート
第38回日本SF大会
1999年7月3日〜4日
ホテルグリーンプラザ白馬
1999年
7月3日(土)
7の月に合わせたため、今年のSF大会はひと月以上早い。
1:30に目覚めてそのまま朝までパソコンその他。7時半に家を出る。新大阪午前8時過ぎの「ひかり」、名古屋10時の「しなの」で松本に正午到着。それらしきグループ散見。ここで新宿始発の「蕁麻疹が出そうな名前」の特急に乗り換えである。糸魚川経由の方が゜良かったかなあ。……北陸線・糸魚川経由で来ても時間はほとんど変わらない。ただ、北陸線の怖いところは、小松で下車して谷甲州と飲みたくなることである。
ホームで松本空港から来た野阿梓氏と会う。「嫌な名前の特急ですなあ」と挨拶、よく考えれば野阿氏も同名であった。失礼失礼。13時43分、南小谷着。
会場へのシャトルバスには乗り切れず、駅前のそばやでビール。野田さんもいる。水鏡子といっしょになるが、かれは糸魚川から回ってきたという。
ホテルグリーンプラザ白馬へ14時半頃に到着。
第38回日本SF大会「やねこん」会場である。スイスのチロル風というらしいが、雨に煙ると妖気漂う古城に見えないこともない。
早朝到着のソリトン同人・帆羽ちゃん、臨時スタッフに入って入口で案内係を務めている。
部屋割り、どうやら8名のスキーシーズン詰め込み型らしい。まあ、たぶん寝る時間はなさそうだけど。
オープニング、三河三谷の温泉以来の長い大広間。ホテルの外観とはずいぶん違う「温泉型」宴会場である。マイクわるし。島根ならマイク不要だが。
星雲賞のっけに発表。
発表順に……
海外短編部門 「最後のクラス写真」ダン・シモンズ(嶋田洋一・訳)
海外長編部門 「タイム・シップ」スティーブン・バクスター(中原尚哉・訳)
「レッド・マーズ」キム・スタンリー・ロビンズ(大島豊・訳)
日本短編部門 「夜明けのテロリスト」森岡浩之
日本長編部門 「彗星狩り」笹本祐一
メディア部門 「機動戦艦ナデシコ」佐藤竜夫
コミック部門 「ルンナ姫放浪記」横山えいじ
アート部門 赤井孝美
ノンフィクション部門「宇宙を空想していた人々」野田昌宏
笹本裕一でかした。やりましたね。「宇宙作家クラブ」発足にふさわしい慶事である。
ロビーで永瀬“チェリオ”唯氏に会う。
出たばかりの『欲望の未来 機械じかけの夢の文化誌』(水声社・2500円)をいただく。
……この本、帰路、ちくまの中で途中まで読むが、後半の作品論中心の章が特に面白い。「幻想の未来」に関連してクリシンをバッサリ斬っているところなど見事である。
野田さんの「ペンネーム30周年パーティ」まで、SFアートギャラリーを見る。今年は「訪問者」というテーマでの競作展示。いい作品が並んでいるが、気に入ったのは、同姓のよしみというわけではないが、堀直樹氏の作品。
魚型のなんというエイリアンなのか、下宿に帰るとこいつが訪ねてきていたという。西日の射し込む部屋のうらぶれた雰囲気が泣かせる。
野田さんパーティは盛会。柴野さんはじめ、おなじみの人たち大勢と挨拶。……デジカメの電池が切れてしまったので、肝心の部分、写真なし。
【野田さんとの記念写真】
↑いっしょの写真を撮ってもらったので、どなたかが送って下さったら、ここに補充します。
料理は良心的で、広島プリンスとはえらいちがいである。ワインいっぱい飲む。
ちょっと休憩……のつもりで部屋で横になる。と、見事に午前1時半起床。パリから帰国後、いつもこの時刻に目が覚める。しまった「ハードSFのネタ教えます」の時間と睡眠が見事に重なってしまった。前野“いろもの物理学者”博士、まことに申し訳ない。
あたふたと「宇宙作家クラブ」の部屋へ。ここは笹本祐一さんの司会で進んでいる。宇宙作家クラブの面々、入れ代わり立ち代わり……ぼくはスプートニク打ち上げ時の「世相」を体験者として報告したが、この時生まれていた人は会場にはほとんどいない感じである。
2時半頃に、中核メンバーといえる野田篤司さんと松浦晋さんが来てから、現実の宇宙開発論議になって、気がつけば朝4時である。
3時間半ほど眠る。
7月4日(日)
7時半頃に帆羽ちゃんと缶ビールとバイキングの朝食。隣の女性が挨拶、なんとアサヒネット・落語の部屋の「ゆうよ」さんである。まさかSF大会で会うとは……。
どこに誰がいるかわからんなあ。
8時半からクロージング。大広間で、半分は眠っていたようである。
ファンジン大賞と暗黒星雲賞。……記憶朦朧。ただ、野田さんがダブル受賞、それにホテルの支配人の人気が急騰という珍しい現象が生じたことは覚えている。
11時半。小鯛亜紀さんのクルマで数名、南小谷まで送ってもらう。
後泊組もけっこう多いようである。
天気が良くなってきたから、後泊組の方が本格的SF大会になるかもしれない。
後泊のメイン企画は何でしょう。雨で中止になったペットボトル・ロケットの打ち上げ。残った材料でのキャンプファイア。カラオケ大会。どれでしょう。
答。カラオケ大会。昔からよう言いまっしゃろ。後泊歌合戦。
なにか悪いものが伝染している。
南小谷駅で始発の特急を待つ40分ほどがクロージングの雰囲気。
SFで貸し切りである。東京方面組が多い。
ソリトン同人の帆羽英一氏と。それに星雲賞・日本短編部門受賞の森岡浩之氏と。笹本氏の写真がないのが惜しい。
↓関西の誇るSFまんがカルテットも駅前に集合している。記念写真。
左から田中啓文、小林泰三、田中哲弥、牧野修の各氏。このようにバカ話のし続けがそのまま血肉になる時期というのがあって、懐かしいというかうらやましいというか。SFの中核を担うメンバーが関西にいるというのは心強い限りだ。
↑帰りも松本まで「蕁麻疹が出そうな名前」の特急。と、同じ車両にまたも野阿氏。いや、あんたに恨みはないんだって。
松本で同好同行4人いっしょにそば、軽くビール。
次のSF大会でもまた会おう。
2000年 第39回 ゼロコン 8月5〜6日 パシフィコ横浜
2001年 第40回 これはなんと関東のどこか。武田氏が名乗りを上げた。残念ながら(?)島根ではなかったのだ……。
14時36分発、大阪直行の「しなの」で、永瀬唯氏の「欲望の未来」を読みながら、快い疲労感とともに大阪に向かう。
……まさかそこに恐ろしい「予定」が待ち受けているとは知らず、わしゃ車中、居眠りと読書を繰り返していたのである。(つづく)