HORI AKIRA JALINET

『マッドサイエンティストの手帳』112

●マッドサイエンティスト日記(1999年6月後半)

主な事件
 ・時差ボケから回復しないままボンクラ生活
 ・柳美里の敗訴に疑問
 ・兵庫県の「芸術文化団体」半どんの会

1999年

6月16日(金)
 また2時前に目が覚めてしまった。パリから帰って以来、深夜起床が固定してしまったようである。しばらくパソコン。午前4時、朝刊、7時前に朝食、7時半に本町の会社。
 昼過ぎに眠くなる。が、2時間ほどがまんすると回復する。
 まっすぐ帰宅。早寝。この繰り返しである。

6月17日(木)
 2時起床。
 7月3〜4日のSF大会の往復切符を手配。新大阪→名古屋→松本→南小谷のルートと、大阪→糸魚川→南小谷ルートを比べると、時間的にはほとんど変わらないことが判明する。ずっと本を読みながら移動するなら日本海ルートだが、長時間シート固定はパリ往復でしばらくはご勘弁気分、結局中央線経由にする。松本から「蕁麻疹が出そうな名前の特急」に乗らねばならぬのが苦痛だが……。
 血圧128-68。時差ボケがいいのだろうか。

6月18日(金)
 2時半起床。少しずつ起床時間が遅れている。
 午後、姫路方面へゴソゴソ。夕方、播州龍野の実家に寄る。
 80歳の母と晩飯。
 やはり田舎で、蛙の声かまびすし。ああ、カエルを餌にする、その名を口にするだけでも気持ちの悪い動物もいるんだろうか。
 さういえば、今朝の朝日新聞の「折々のうた」

   飲まれても蛙ののみど光らせる
   ほたるは三度光て終る

 これ、凄いけど、この蛙を飲むやつがいるんだから恐ろしい。こいつのノドで光ってたら「孫光り」なのかしらん。
 ただ、ぼくはこのような光景は見たことがない。子供の頃は蛍は多かったが。母も見たことはないという。創作であろうか。ぼくは創作であったほうが面白いと思う。
 それとは関係なく老母としゃべっていたら、話がガラクタのことになる。書庫から「超芸術トマソン」を出してきて見せたら、母がえらく興味を示し、龍野の古い商店街のはずれに、何というのか「雁木」に似た竹細工が塀の外にあるやつ、その塀が無くなって細工物だけが残っているのがあるはず……とか。
 なんやら妙な好奇心を刺激してしまったみたいである。
 実家泊。

6月19日(土)
 夜中起床、睡眠、またも断続的になる。
 本を枕元に20冊ほど積んで、午後3時まで寝たり読んだり、起きあがらず。
 帰阪が面倒になり、夕方、早めの入浴、ビール。
 また寝たり読んだり。
 谷岡ヤスジの電話帳サイズ「ギャグトピア」や「アニマルぞろぞろ」など再読。涙。

6月20日(日)
 2時起床。
 このまま寝たり読んだりを続けると、月曜まで続きそうで心配になる。
 7時過ぎに出て、9時、大阪に帰宅。家族全部いぎたなく寝ている。
 またも寝たり読んだり。
 夜、1日早い誕生日とかでシャンパンのハーフボトル。……もう今更なあ。ボンクラ・サラリーマンの「余命」を考えると、気分は屠殺場に送られるニジリ牛気分である。

6月21日(月)
 サンケイの朝刊を見たら、NHKのプロデューサーの不倫スキャンダルで懲戒免職になったらしい。なにかと思ったら「週刊現代」の広告にそれらしい「スクープ」。早業ですなあ。しかし、愉快な男みたいじゃないか。
 心斎橋へ行ったついでに、MHVでスティーブ・グロスマンの「with MICHEL PETRUCCIANI」を買ってくる。「Body & Soul」や「 In a Sentimental Mood」などスタンダードが泣かせる。

6月22日(火)
 夕刊に、柳美里の「石の泳ぐ魚」が出版差し止めの判決の記事あり。NHKの午後9時のニュースを見ていたら、原告側代理人で出てきた弁護士、これ木村某ではないのか?
 判決読まないとコメントできないが、「自伝的小説」作家の朋友だけとすると、疑問を感じるなあ。……ぼくが気にしているのは小説の「質」についての言及の有無。これだけといっていい。ことと次第によっては、本ホームページに「別室」を作ってもいい。……と、裁判となると血が騒ぐ。「宇宙法廷」ノートもそろそろ再開しなれりゃなあ。
 判例時報が待たれることである。

6月23日(水)
 ボンクラ・サラリーマンの日。……「終日原稿」と書きたいところであるが。

6月24日(木)
 2時起床。パリから帰国2週間経っても時差ボケ生活が変わらんなあ。

6月25日(金)
 夜、出張で来阪の兄と会う。焼鳥屋「てころ」へ。
 ビールを飲んで、斜め前のインタープレイ「ハチ」の前にハチママ発見。最近は昼間しかいないずなのに。で「ハチママ!」と声をかける。
 ハチママ、わが兄を見て、「やっ、○ちゃん!」
 ○の部分にはドラゴンに相当する言葉が入る。わが兄の略称である。……兄貴をここに連れてきたのは、ぼくの独身時代に1度だけ。20年以上前である。なんという記憶力。
 もっとも、兄貴はその時、シャレでぼくの所有するドラゴンの刺繍入りTシャツを来ていた、それを覚えていたそうである。

 off

 賢兄愚弟世のならい。重役とボンクラの間でハチママのみ若々しい。

 なお、ハチママがこの時店のオモテにいたのは、次のポスター貼り出しのためである。
  『1999年8月8日(日) 山下洋輔ソロ! 午後6時30分〜』
  お問い合わせは、06-6363-4888 ハチへ。


6月26日(土)
 1時に目覚めてしまう。
 「朝まで生テレビ」という番組を初めて見る。キッチュの「朝までナメてれば」の原作。睡眠時間と見事に重なっていて、今まで見る機会がなかったのである。「盗聴法」がテーマで、電話嫌いのぼくには個人的には被害に遭う可能性はほとんどないという事情を差し引いても、議論散漫。警察や公明党を「信用しろ」といっても無理なのは当たり前の話である。……ひとり、なんとかいう政治家、真面目な発言をしているらしいのだが、顔が横山たかし(金持ちのおぼっちゃま)によく似ていて、いつ「泣き出す」のかが気になって、話の内容まるで残らない。
 朝刊を読んでから寝たり起きたり。
 昼、神戸へ。元町の上、兵庫県民会館。
 兵庫県の芸術文化団体「半どんの会」というのがあり、その文化賞表彰式。
 わが母が短歌関係で「県民感謝賞」を受賞、その顕彰式である。

 off

 眷属集合。
 「枇杷の花」という歌集があり、その中の一首は拙作「地球環」(「梅田地下オデッセイ」所収)に引用させてもらった。

6月27日(日)
 午前2時起床。集中豪雨。終日、寝たり読んだり。
 山本ちず「会社がつぶれてしもたがな」……新入社員とは信じがたい観察力である。これ、入社時点と執筆時点の時差はどの程度なのだろう。

6月28日(月)
 またも2時前に目が覚めてしまった。兄のいうには、目覚めの時間「午前3時」が境界で、これを過ぎれば「その日」のバイオリズムに引き込まれるという。……日照、蛍光灯と白熱球、サイバネティックスなどを援用しての理論で説得力はある。
 西から帰ってくるのは「満腹なのに無理矢理食べさせる」ようなもの。東からの帰国は飢えを我慢するようなもの。前者の方が辛い、とも。なるほど。

6月29日(火)
 年に一度の株主総会。シャンシャンと20分。アホらしくなる。
 夜、午後9時頃に「専属料理人」を連れて雨の中を外出。サントリー5へ。サウスサイド・ジャズバント出番の日。
 梅田の旭屋へギリギリで行ったら10時まで営業時間延長になっている。……ジュンク堂への対抗策らしい。ありがたいことである。宇宙作家クラブで話題のポリャコフ博士「地球を離れて2年間」を購入。ミールでの滞在記録である。
 サウスサイド、2ステージ目から。天気が悪くてガラガラ。
 最終、23時近くまで聴く。
 就眠0時を過ぎる。久しぶりの夜更かしである。

6月30日(水)
 午前7時起床!
 やった、「午前3時」の分水嶺を越えたのだ。人間、やっぱり無理するに限るなあ。ふだんより3時間も寝過ごしで、朝刊熟読の時間がなくなってしまった。
 これで時差ボケ・ボンクラサラリーマン状態から脱出できるか……。


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