HORI AKIRA JALINET

『マッドサイエンティストの手帳』11

●マッドサイエンティスト日記(1996年12月)

主な事件
・冬の谷甲州邸訪問
・「虚無回廊」のこと
・ハチママ、ヤノピ追っかけホームページ嫉妬事件
・ソリトン大阪オフ
・とり・みきの年末年始小松邸襲撃がなくなって新年の風物詩が変わった

12月5日(木)  大阪新聞のT記者と打ち合せ。大阪新聞は関西の夕刊紙。裏表紙に当たるカラー ページをリニューアルし、週一度、ビジネスマン向けの「書評」コラムを設けるとい う。
 どちらかというと、「目から鱗が落ちた本」とか「生き方が変わった本」とか「魂 を揺さぶられた本」などを、同じビジネスマンとか経営者が談話形式で紹介する企 画。
 色々候補はあがったが、この年になって「生き方」にまで影響を受ける本はめった にない。
 そこで「元気が出る本」として宮崎学「突破者」を取り上げることにした。
 ぼくが「談話形式」の原稿を書き、それを記者にまとめてもらう。
 したがって、予定の倍くらい「語った」。
 せっかくだから、その元の談話体原稿をつぎの回にアップしておきます。

12月6日(金)
出張で福井から小松へ。敦賀を過ぎると天気が一変して、みぞれ混じりの雨とな る。夕方、小松駅で谷甲州氏と会う。谷夫人がRV車で出迎え、急にタイヤを交換す ることになって手間どったという。去年の春来たときのおだやかな天気とはまるで違 う。これからが本格的雪下ろしの季節らしい。谷邸で熱燗酌み交わしつつ、2時間半 ほど、年末上京できなかった甲州に事務報告その他……いかん、何をしゃべったのか ほとんど覚えていない。午後8時前、またも甲州夫人運転の車で小松駅。雷鳥で大阪 に向かう。甲州はそのまま仕事場へ護送され、まだ途中という長編連載第1回を徹夜 で続けるという。わしゃ大阪への車中、谷夫人が作ってくれた「肴パック」で飲みつ づけ。いかんなあ。

12月11日(水)
 ネット関係の情報から、夕方、梅田・旭屋「このミステリーがすごい」のコラムを 確認して愕然。「虚無回廊」の「完結編」を小松さん本人が書かないというのは本当 らしい。……「虚無回廊」騒ぎの始まりだが、この件については、不明瞭な発言と誤 解が重なった結果らしい。ここでは触れないでおこう。
 森下一仁氏もショックを受けたらしいが、氏のホームページ(jalinetのリンクご 参照)の近況12月30日〜を読むと、その冷静な対応ぶりに感心する。さすが人格 者である。

12月21日(土)
会社の暦は休日なれど、滞積している雑件を処理してしまおうと自転車で本町まで 出勤。と、10時を過ぎると部員2名、同じように出てきて、午後には近くの分室に いる貿易関係の者までが、書類の束を抱えて「たぶん出社しているだろう」と決裁の 依頼に来る。何のための休日かわからんではないか。だいたいが昭和天皇がややこし い時期にややこしい……ええ、その結果、年末の慌ただしい時期に休日が増えて、そ のしわ寄せが遡って、こんなことになるのである。
 夜、大阪、インタープレイ8で山下洋輔〜菊池成孔のデュオ。久々の快感。
 終演後、おなじみ焼鳥屋「てころ」でビール。
 インターネットでヤノピさんおっかけホームページがあり、主宰しているのは「女 性」であると知って、ハチママ嫉妬で怒り狂う。ネット上とはいえ、自分よりもヤノ ピさんに近いところにいるのが若い女性であるのが気に入らないのである。「そんな ら対抗上、わしのホームページに一緒の写真を載せますがな」となだめて写ったのが つぎの2枚。「エラ風の」ハチママと山下洋輔さん。あとハチの看板を「ヴィレッジ バンガード風」に見立てての記念写真、左から山下、ハチママ、菊池、筆者。
 ハチママ、これでよろしいかな? ついでに、ハチママは怒るだろうが、MINさ んのホームページにリンクを張らせていただくことにしよう。

off off

12月22日(日)
会社の暦では3連休の2日目、またも懲りずに自転車で会社へ。今日は誰も来ない だろうと思ってたら、エレベーターで某要職部長とばったり、しばらくして某要職理 事出社、なにやら会議かしいことが始まる気配。FAX数件処理してそそくさと退散 する。
午後2時、梅田へ。
忘年会を兼ねたソリトン大阪オフ。気が向けば参加という方式で、予約なし、昼間 のビアホールに集合して勝手に飲む方式である。
参加者12名。東京からたまさん、てほちのアトソン2名。初参加者としてなんと 第3回パスカル、「蟻」で優秀賞受賞の岸根誠司さん。「くろ」の本間佑さん(左) と並んだのが下の写真。ともに実にいい表情であり、雰囲気がどことなく似ている。 岡本賢一さんと並べると、今回の物静か偏差値は異常だ。……あ、天羽孔明みたいな 騒々しいタイプに受賞のチャンスがない、というのではありません。それをいいだせ ば、某「世にも暑苦しいSF作家」など作家を名乗れるわけがないのである。
……夕方5時半まで。やや疲労がたまって、二次会は失礼する。。

off off

12月23日(月)
 会社の暦では3連休の3日目。自転車で会社へ……の元気はなく、自宅でゴソゴソ と作業。年賀状331枚を宛名書きを含めて約3時間で作成。投函。……カラープリ ンターなど使うとこうはいくまい。
 ホームページを通じて拙作の翻訳を引き受けてくださった岡安知子さんから「真空 漂流」の英訳が届く。ありがたいことである。
 近日、英文短編のコーナーを開設の予定である。

12月28日(土)
 会社の暦では正月休みだが、兼任の工場と研究部門は本日も仕事。雑件処理のため 滋賀県八日市市へ。午前中会議。午後は大掃除というので、昼までで大阪へ向かう。
 やっと休暇入りだが、まるで実感がわかない。

12月30日(月)
 暦の上では休みだが、自動的に朝4時に目覚めてしまう。5時、NHK。久田直子 さん、もうお休みである。正月番組期間で来年1月6日(月)まで会えないわけか。 やっと休み入りの実感がわく。
 ここ3、4日の風邪がちとましになったが、ずっとゴロ寝。昼前、ヨコジンから電 話、何か切迫した口調で「小松さんが『虚無回廊』のつづきを(以下略……森下ホー ムページ御参照)」

12月31日(火)
 朝の新快速で、家内と中学生の二男の3人で姫路経由、龍野に向かう。車内ガラガ ラ。家族で正月に実家へ帰省など何年ぶりのことだろう……と考えて、初めてである ことが判明した。
 独身時代から、ぼくは正月に実家に帰省したことがない。別に旅行に行くわけでも ない。じっと部屋に閉じ込もって過ごすのである。20年前だと、コンビニはなく、 デパートも正月3日は休業である。したがって大晦日に3日間の食料を買いに出る以 外、極力外出もしない。溜った本を読み、原稿を書く。ただし、10年以上前の数年 間は、どういうわけか、とり・みきが年末から正月にかけて小松のおやっさんのとこ ろへ押し掛けてきて、こちらに声がかかることがよくあった。
 結婚してからも、家族を家内の実家に追い払ってひとり正月を迎えるのが習慣だっ た。ガキが大きくなるとそうもいかない。今年は、脚が完治していない母親のため に、帰省して雑用を片づけねばならぬ。
 ・ひとりでポルノを観られない正月……
 ・とり・みきが小松邸に来ない正月……
 新年の風物詩は確実に変わっていく。
 龍野の実家で、買物、掃除、本の整理、盛大な焚火、と精力的に動いているところ に、なんとヨコジュンからこちらにまで電話、興奮した口調で「小松さんの『虚無回 廊』の件だけどさ(以下略……森下ホームページ御参照)」
 慌ただしい年の暮れだ。


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