串崎吉光『千葉から鹿児島へ 夫婦歩き旅』（新風舎）

　串崎くん（串やんという方が慣れているのだが）はわがボンクラ・サラリーマン時代の同僚である。
　一時期、同じ業務を東西で分担していた。
　鹿児島県内之浦出身。
　その串やんが銀婚式記念に、夫婦で千葉県八千代市から内之浦まで「歩いて」帰郷した。（奥さんも同郷である）
　そのことは2004年8月3日の記事で紹介している。
　ともかく類のない徒歩旅行だから、ぜひとも記録をまとめておくべきだと伝えた。
　昨年の7月21日に会ったら、原稿がまとまったということであった。
　それが本になった。
　
　下書き段階のは読ませてもらっていたが、想像以上の面白さである。
　なによりもデータが面白い。
　日記形式だが、毎日の移動区間・歩行数・歩行距離・宿泊場所・費用が詳細に記録されている。
　装備やトレーニングについても書かれていて、ウォーキングの実用書でもある。
　意外なこともわかる。
　たとえば、おれの行動域は東海道（主に大阪〜東京間）がほとんどだが、この距離はせいぜい１／３に過ぎず、ページ数でいえばあっという間に過ぎてしまう。
　日本は広いんだなあ。
　しかも、終点は内之浦。宇宙ファンにとっては種子島と並ぶ「聖地」のひとつである。クライマックスがここというのが素晴らしい。
　内之浦は最近の市町村合併で、わが故郷（たつの市）同様、けったいな町名に変わってしまったようだが……。
　筆致は、淡々と旅程が記述されているが、この場合、これがいちばんいい方法である。日本列島の西半分のウォークに同行している気分になってくる。
　串やん、やったね。
　ついでに、余計なリクエスト。
　串やんは、座談の名手であって、ともかく特異な経験を語る時に絶妙の話術を発揮する男である。
　たとえば、韓国にいた時（25年以上前）、バーベキュー・パーティに招かれて犬のキンタマを食べた話とか、インドネシアで○○○○とか、東京地裁で横に○元がいて○○○○とか、ともかく滅茶苦茶に面白いのである。
　時効を過ぎたこともあるわけだし、次はこういう話芸を反映させたものにチャレンジしてほしいところだ。
（2006.2.1）