内田修『ジャズが若かったころ』(晶文社)
読みそびれていたジャズ本の傑作。
今頃になってだが。
これは内田修先生の評伝『ドクター・ジャズ』のベースとなった、ジャズメンとの交友録である。
発行は1984年で、もう20年以上前。
内田先生の人柄がそのまま文章化されたような語り口で、やっぱり面白い。
内容は『ドクター・ジャズ』とも重なるし(レーシング関係のことなど、それからライブのデータ、1985年以降のことなどは、『ドクター・ジャズ』の方が詳しい)、写真も重なるのが多いが、細部のエピソードはやはり面白く、びっくりするのもある。
その代表格。
ジュージ・ルイスが岡崎の内田邸に来た時の写真がある。
へぇ〜〜〜。
内田先生の興味からいえばバップ以降かなという印象だったのが、なんと懐の深い……。
しかもジョージ・ルイスが来たとき、内田邸には富樫雅彦が滞在中だったという!
これは正確な日時が不明だが、おそらく1964年の来日ツアーの時であろう。
この日(ルイスのアフターアワー・セッションは名古屋の「東京クラブ」であったということで、内田邸では演奏しなかったようだが)、ジョージ・ルイスと富樫雅彦の「対面」はあったのだろうか。
これは、普通に考えればあり得ない組み合わせである。
それが、ひょっとしたら、このふたりがセッションをやったかもしれないと想像させるところがドクター内田の凄いところだ。
意外な人物が意外な場所で遭遇したらどうなるか……これはSFでは魅力的なテーマのひとつで、近年の傑作では、かんべむさしの短篇『幻夢の邂逅』だが……ジャズの世界ではこれが起こりうるからなあ。
こんな舞台を作りつづけたのがドクター内田の偉業である。
おれはグッドマンのバックでハービー・ハンクックが弾いているCDを見つけて驚いたことがあるが、こんなので驚くようでは、おれもまだまだである。
(2006.1.31)