『マッドサイエンティストの手帳』361
●マッドサイエンティスト日記(2005年12月前半)
主な事件
・播州龍野の日常(1日〜)
・ニューオリンズ復興支援ライブ(4日)
・穴蔵の日々(9日〜)
12月1日(木) 播州龍野の日常
わ、12月になっていたのであった。
雑用色々。
夕方に近い時間になって、龍野公園へ出かける。晴は今日までらしいので。木曜日、公園には誰もいない。結城昌治。
紅葉の写真を撮るつもりだったが、落葉多く、ちと遅かったようである。
ちょうど1週間前(11/23)は、まだ鮮やかさが足りない印象、1週間後が見頃と判断したのだったが。紅葉も意外に短いのかな。
もっとも、おれは別に紅葉が見たいわけではない。
昨年末(12月29日)にDimage A200を購入、これで「龍野の四季」を撮ってきた。老母の3冊目の歌集のためである。
正月の雪から始まって、一応季節のポイントは押さえてきたが、紅葉の写真だけは撮り損ねてしまった。
まあ、来年でもいいか。急ぐことではなし。
12月2日(金) 播州龍野の日常
夕方のNHK地方ニュース、こちらでは神戸局からの「ニュース神戸発」で、わりとよくスタジオ・ライブがある。
昨夕の松永貴志につづいて、本日は鍋島直昶さん登場、その差60歳。
いいねえ。今年の神戸JSでは聴けなかったひとり。
ヴィブラホンが聴きたくなり、今シーズン、初めて石油ストーブ使用、寒い部屋でLPを聴く。
大阪から送ったまま整理していないLPをゴソゴソやっていたら、雪村いずみのLP『super generation』が出てきた。
服部良一の曲を歌ったアルバム。
先日、『朝ミラ』に出たときに「胸の振子」をリクエストしたのだが、同じ雪村いずみでも別バージョンだった。今聴くと、アレンジが浅薄。1974年のコロンビア盤……どんなきっかけでこのLPを買ったのかよく覚えていないのだが、わが記憶では「モンティ・パイソン」(「空飛ぶモンティ・パイソン」の題で、タモリ発のレギュラー番組だったやつ)を放映していた時、その「日本コーナー」(チャンバラトリオだけが面白かった)のバックで流していたからではなかったか。ちょっと記憶があいまいだが。ディレクター・川添象郎、キーボードに松任谷正隆、エレキベースに細野晴臣なんて名が並んでいる。こんな時代だったのだなあ。
OBC保管のLPの方が古く、正統的なオーケストラ・アレンジで「道頓堀ジャズ」の雰囲気を出していた。
12月3日(土) 播州龍野の日常
午前4時の室温ついに10℃を切る。
明日からいよいよ本格的な寒さで、さらに気温が下がるらしい。
出所を待ちわびる気分……などといってはいかんか。
ムショとちがって自由はあるわけで、飲めるし暖房もできる。
が、独房(3畳)とちがって、80畳にふたりとなると、冷暖房は基本的に無理なのである。貧乏性がいかんのか。
(ご近所の)「監視の目」はあるし。
広い独房で生活している気分である。
明日は仮出所だ。
12月4日(日) 播州龍野→大阪/ニューオリンズ支援ライブ
本格的な冬の到来である。
小雨だが「リサイクルデーは実行」という町内放送あり、新聞・ビールのアルミ缶をオモテに出す。3月に1回、小学校のなんとか費用。
ビール缶の量にわれながら驚くが、次回は寒いから少し減るだろう。
昼の電車で帰阪。
天満のOAPへ。
ODJCのニューオリンズ復興支援「ビッグリバー・チャリティ・ジャズライブ」である。
HP管理人代行としては、特別何かを手伝うわけではないのだが、少しは支援の気持ちを伝えねばならぬ。
ということで、その模様はODJCホームページの「Bourbon Street」に拙速レポートをアップ。
寒い。
久しぶりに専属料理人の作ったメニューでビール、湯割り。
仮出所は1日だけである。
12月5日(月) 大阪→播州龍野
うへ、大阪の穴蔵、朝の室温が15℃で、これは真冬の気温である。
防寒服を着込み自転車で市内ウロウロ。
タイムマシンの部品を受け取りに行った先が青空書房の近くなので、ちょっと寄って坂本さんにあいさつ。
向かい側が信州そばの店である。
天なべ定食がうまいらしい……と、これは山本一力さんのエッセイで知った。
「この店でっか、鰻屋の取材だから空腹で行くという山本さんにごちそうしたのは?」
「山本一力さん、おとといも来はりましたで」
「また取材か資料探しですか」
「いや、新歌舞伎座で『あかね雲』やってますねん。私も昨日見せてもらいましたけど、十朱幸代、よろしいなあ……」
おれは天なべの方に興味があるが、本日は時間が早いので、後日にする。
扇町公園通過、ルン吉くんはいない。
去年も12時から春まで、姿が見えなかった。
冬眠の季節であろうか。
午後、播州龍野へ移動。
風さらに冷たく、みぞれ混じりの雨が降る。
酷寒の独房へ自ら収監である。嗚呼。
12月6日(火) 播州龍野の日常
朝から氷雨。
キンタマ波動関数の収縮する季節となりにけり。
終日雑役。
晩飯の片づけが終わるのが20:30。
それから落ち着いてLPを聴きたいところだが、オーディオ部屋を暖めるのが面倒である。パソコン用スピーカーとしてタイムドメインのを大阪から持ってきて、ハロゲンヒーターでキンタマ暖めつつ聴くのがベターなようである。
今度運ぶことにして、本日は、バーボン水割りを横につまらん付属スピーカーでネットのを聴く。
クマゴローさんの「北国の青い空」なんて聴くと、キンタマが…じゃなかった、胸が締めつけられる気分になる。今度「朝ミラ」へ行ったら、この曲をリクエストしよう。
12月7日(水) 播州龍野の日常
参考人質疑に姉歯は欠席、なんでも「死にたい」と漏らしているらしい。
それこそ関連した連中が待ち望んでいることだろうなあ。
はやぶさの「弾丸」は発射されていなかった可能性が高いという発表。
うーん。しかし、ともかく帰還してほしい。よくやったではないか。
期待しているものがともに視界から遠ざかる。
厄日か。
12月8日(木) 播州龍野の日常
タイムマシン格納庫でキンタマ収縮させつつ仕様変更作業。
某所から送られてきたマシンを直して某国へ送る。
寒くてエポキシの硬化に時間がかかるなあ。
送り先……某国というのはベトナムである。
現地に行く必要はないのだが、アセチレン・ランプさんのブログで「ベトナムのマンガ事情」を読むと、ちょっと行ってみたくなる。何よりも避寒地としてよさそうな。
20年前だと韓国ルートでしかつながりがなかった。
時代は変わっておるなあ……。
12月9日(金) 播州龍野→大阪
朝からSF的ニュースなど3件。
・SF大賞の発表。飛浩隆氏の『象られた力』。おめでとうございます。
・SF的ニュース。みずほ証券が「61万円で1株売る」ところを「1円で61万株を売る」と入力しただけであっという間に(というか、1日のうちに?)数百億円(最低で270億円)の損失という。
うへー。バクチの世界は恐ろしいね。「システムに問題あり」なんて「常識」が通用する世界ではなさそうな。こんな「単純ミス」でも「掟は掟」なんだろうなあ。
証券会社というのは「胴元」で、損はしないものと思っていたが、これはおれの勘違いであった。胴元は取引所であって、証券会社は客の金を預かって張っている博打打ちというか「代打ち」というのか?なのだ。……それにしても、入力したのはどんな人物だったんだ? まさか派遣社員ではないと思うけど。針の筵どころではなかろう。
ギャンブルはまったくやらない(だから、自分の不幸に張る「保険」もできればかけたくないのだが)おれには、想像を絶する世界だ。
・SF的番組。今朝の『朝ミラ』に梶尾真治氏登場。かんべむさしさんによる電話インタビューだけど。ふだんの熊本弁は出ず、意外にも品のある落ち着いた語り口。カジシン、堂々たる作家になったなあ。近日ぶらっと会いに行ってみようかなと思う。
午後の電車で帰阪。
本日から神戸ルミナリエ。電車はふだんより少し混んでいる気配である。
梅田で「遠来の客」と打ち合わせ2時間。前から進めていた本作りの「仕上げ」である。近日紹介予定。
小学館文庫の小松左京『日本沈没』が届いている。
いまさら紹介する必要もない名作であるが、実はこの解説を書いているのである。
来年夏の公開に向けて再映画化が進行中。
再読……じゃなかった、読み返すのは5、6度目と思うが、やっぱり凄いなあと感嘆するし、色々なことを考えさせてくれる。
文庫化はこれが4度目。この前が阪神大震災の少し後であった。
読み返してわかることだが、やはり震災に対して、官民ともに、「知識」は増えるが「意識」は変わらないところがある。だから「最悪最大の災害」を「物語で体験する」意味は大きい。
ただし解説のポイントは(先人の立派な解説のあとだから)ハードSFとして見たSF的仮構(「ナカタ過程」や「列島下の熱のトンネル現象」)の方がメインだけど。
御大が『虚無回廊』でやろうとしていたのは、宇宙創成に関する大トリックであったことがなんとなくわかってくる(過去形で書いてはいかんのだが)……。
12月10日(土) 穴蔵
定刻4時に起きる。そのまま着替えもせず、パジャマのまま直ちに机に向かえるとは何たる幸せ。
暖房もせず、室温17℃である。
溜まっている雑件の処理。
正午に青空書房の坂本さんから電話。
山本孝一さんが来ているという。
ちょうどお願いしたいこともあったので、10分後に自転車で駆けつける。
小学時代の同級生・中山一江さんが出した『ハッピー介護の秘密』を置いてもらうためである。
この本については別に紹介するが、脊髄小脳変性症に襲われたご主人の介護生活を描いたもの。
今放映中のドラマ「1リットルの涙」の設定がこの病気らしい。
……と話したら、山本孝一さんと同行の若いSFファンが「ぼくの同級生がそうなんです。学生の時から車椅子生活になりました」という。
20代という。意外に身近にあるのだなあ……。
山本さんからはスグキの漬物をいただく。ありがたいことである。
向かいのソバ屋で、山本一力さんが褒めた「天なべ定食」食べようかと思ったら、
山本「さっき食べましたよ、うまいですわ」
待っててくれればよかったのに。
坂本さんの話。
電話がかかってきて、おばちゃんらしいのが青空書房の位置を細かく訊く。
後刻、ソバ屋から出てきたおばちゃんふたり。
「あ、本屋さんにもお礼いうとかな」「かまへんかまへん、もう食べたんやから」
この声から判断するに、ソバ屋の場所を確認するための電話だったのである。
人気があるのだなあ。一力さんもソバ屋も。
「天なべ」は後日にして、また穴蔵に戻る。
夕刻、妹と電話で話す。
ちょっと先の龍野行き予定について。
「じつは21日の都合が……」と切り出すと「吉朝さんのお別れ会でしょ」
わかっているではないか。兄思いの妹である。
夜はスグキに熱燗で一杯やりながら、上山高史さんのCD「ONLY LOOK AY YOU」を聴く。
たまらんなあ。
12月11日(日) 穴蔵
終日穴蔵。
正確には朝夕2度、食事のためにドアの外に出たが、パジャマの上にフリースをはおった格好。
日曜だから来客の可能性もなく着替える必要もないのであった。
毎日こうだとこりゃ泣けてくる。
12月12日(月) 穴蔵
12月9日に、みずほ証券の「61万円で1株売る」「1円で61万株を売る」誤入力事件について、「システムに問題あり」なんて「常識」が通用する世界ではなさそうな……と書いたところ、東証が「一転」して「システムの不具合」を認めて謝罪のニュース。
どんな「不具合」なのかはよくわからんが。
それでもバクチの世界は恐ろしいという印象は変わらず。
「ストップ安」「ストップ高」というのはだいたいわかったつもりだが、1円で買えてしまったというのは構わないのだろうか。
いや、これはぜひ知りたいというほどの疑問ではなく、1円株をかっさらってボロ儲けした連中がいるということで、たいしたものだと思う。おれは株なんてものには手を出さないけどね。
寒い日らしい。
終日穴蔵に籠もりたいが、9時頃に出かける。
新大阪駅のホームで、のぞみで来てひかりに乗り換える兄とブツの受け渡し・10分間ほど立ち話。
新大阪駅に来るのはたぶん1年ぶりである。「決死の覚悟」で新幹線に乗ったのが昨年10月だったからなあ。店……とくに売店の様相はだいぶ変わっている。
懐かしいので、歩いて西中島まで。
四半世紀以上前に住んでいた集合住宅の前まで行く。
ローズコーポ、大規模修繕のあとらしく、きちんと建っているのであった。
近所の馴染みだった店もほとんど残っているのがうれしい。「鯛商店」とか……といっても、チャンバラ・トリオのファンでないとわからないだろうけど。チャントリの事務所が目と鼻の先にあったのである。
午後は穴蔵に籠もる。
ただ黙々と雑用処理。
わ、夜はキムチ鍋である。
明日、M歯科へ行くというのに。センセには辛抱していただくしかあるまい。かなり手荒いことになりそうな……。
12月13日(火) 穴蔵
この冬いちばんの冷え込みというが、午前4時の室温16℃。天国みたいである。
したがってどこにも行きたくない。
と思いつつ、午後、某歯科とか雑件いくつかあって外出。
北風が強い。
さっさと帰館。
また穴蔵で雑件処理。
明日「終日テレビ中継を見る」予定なので、雑用は片づけておかなければならぬ。
集中してやったら、ほとんど終わった。やればできるではないか。
と学会『人類の月面着陸はあったんだ論』(楽工社)を読みつつ早寝。
12月14日(水) 穴蔵
終日穴蔵。
テレビを見るというのがこんなに苦痛だとは思わなかった。
前日から雑用片づけ、朝食後は、穴蔵で夕方までテレビを見る計画。
穴蔵で飲食することはほとんどないのだが、本日はクッキーとかみかんを持ち込んで、長期戦に備える。
9時30分から国会中継。証人喚問……いよいよ姉歯秀次登場!
が……最初に「質問」に立った自民党の渡辺具能なる議員、これがあまりにもひどい。質問よりも大部分が演説。「時間がありませんので」と繰り返しつつ延々と喋る。何かの時間稼ぎとしか思えない。イライラしてきて、血圧高騰の気分である。最後の方(1時間ほど)になって、「そろそろ結論をいわねばならんのですが」というセリフまで出てきた。
箇条書きにした質問を読んで答えさせたら10分ほどで終わる内容である。
どこかからナンボか貰ろたのか?と疑いたくなる。
ともかく張りつめていた気分が萎えてしまった。
嫌になって……しかし何か面白い局面があるかと、テレビはつけたままパソコンに向かう。
「みずほ証券が誤発注事件」……おととい「1円株をかっさらってボロ儲けした連中がいるということで、たいしたものだと思う」と書いたのだが、1円株をかっさらったのはスイスに本部をおくUBS証券117億円を筆頭に証券会社数社と判明。「批判が高まって」返上の動きがあるとか。プロの博打打ち同士なんだから、かまへんのちゃうか、といいたくなる。次のチャンスに取り返せばいいんだから。だんだん常識的な方向へ動いていくところが面白くない。
「松浦晋也さんのL/D」で、はやぶさに関する川口プロマネの会見の模様が報じられはじめる。
はやぶさは不安定な状態にあるが、「未完のミッション」なので、長期的につづけてほしいものだ。
軽い昼食のまま、午後も引き続きテレビ中継。
木村建設の元東京支店長・篠塚明がアタマを擬装していないことは確かだ。篠塚のうしろにいる「補佐人」はなかなかいい女だが、弁護士か? などと愚考する。
内河健は初めて見たが、これはしたたか、逃げ切りの様相である。
それにしても疲れた。
ロッキード事件の時の面白さを期待したおれがバカだったのか。
12月15日(木) 穴蔵
寒いのであった。
昨日、8時間以上テレビを見た反動で、やたら活字が恋しい。
しわ寄せで雑件もあり。
梅田まで出るが、それ以上の距離は寒くて自転車では走れず。
「大阪の愛犬家殺し」の上田、上告棄却・死刑確定というニュース。
まだ生きていたのか!?
この上田、確か吉朝さんと同級で、同姓なものだから、犯人と間違えられてたいへんだったはず。
惜しまれて逝く人と正反対のと……。
夜、急に雨と雷鳴。
なぜかチャド・オリバーを再読したい気分になるのであった。
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