HORI AKIRA JALINET

『マッドサイエンティストの手帳』300

●マッドサイエンティスト日記(2004年4月前半)


主な事件
 ・「桂歌之助」完売記念飲み会(1日)
 ・播州龍野にて(2日〜)
 ・「玩具修理者」舞台を観る(10日)

2004年

4月1日(木)
 わ、今回「第300回」なのであった。  といっても惰性で続けているだけなので、特に記念行事は行わないのであった。
 播州龍野行きに備えて、雑用を色々片づける。
 夕刻、歩いて「大甚」へ。
 「桂歌之助」完売記念の祝賀会というか慰労会というか、編集委員+広報担当してくれた日高さんを加えての飲み会。
 刺身の舟盛りでスタート、宴たけなわの頃に、ウチの専属料理人も帯の掛け替えとか発送作業で貢献したのだから呼ぼうということになって米輔さんが電話。15分ほどで来たが、刺身は残り少ない状態であった。
 米輔さんが珍しくもデジカメ使用……近日桂米輔ホームページ開設のためという。
 5月27日(木)太融寺からスタートして、毎月(太融寺とワッハ上方と交互で)「ドガチャカ落語会」を開く。プレ35周年活動で、かなり気合いが入っている様子。楽しみなことである。
 ビール、酒、湯割り、最後に「豚カツ茶漬け」……ちと飲み過ぎであるなあ。
 off
 もっと鮮明な写真は写真家・永野一晃氏のページにあり、こちらからもリンクを張らせてもらうことにする。
 ファイブでマホガニーホール・ストンパーズ演奏中であるが、もう22時近い。
 明日が早いので、まっすぐ……じゃなかった千鳥足で、歩いて帰宅するのであった。

4月2日(金)
 わ、雨である。
 当座の着替えと書物をバッグに詰め込んで、早朝の電車で播州龍野に移動する。
 移動の途中に雨があがり、見る見るうちに雲が移動して、姫新線・本竜野についたら快晴である。
 花見に行くらしい老人の団体が多い。
 老母が入院中の病院へ。
 ずっと詰めていた兄と見張り番交替である。
 病院に泊まり込む必要はなくなったので、夕食に立ち会いの後、実家に戻る。
 帰路、スーパーで買ってきた総菜を並べてビール。
 セリーグ開幕戦、「読売・阪神戦」を見る。
 8-3で読売敗退。ははは。

4月3日(土)
 播州龍野における一日の「標準的パターン」は以下のごとし。
 ・午前4時に目が覚める。
 ・5時、朝刊を読む。
 ・7時、病院へ。2キロちょっと、自転車で10分くらいである。朝刊を届ける。
 ・10時頃にいったん実家へ戻る。場合によっては洗濯など。
 ・昼前からリハビリのある午後2時ころまで、また病院。
 ・午後は雑用、タイムマシン格納庫にも寄る。
 ・夕方、また病院へ。
 ・午後7か8時頃までいて、実家に戻る。
 ・ビールを飲みながらダラダラ、午後10時には眠る。
 ・だいたい1日自転車で3往復。10数キロ走る計算か。まあ健康にはいいなあ。
 病室では本を読めるが、パソコンは使いづらい。
 老母も起きている間はたいてい本を読んでいる。
 親子でずっと何か読んでいることになる。
 昔、受験勉強していた2階の部屋にパソコンを置いているが、ダイアルアップ接続は面倒で、階段の昇降もわずらわしくなる。
 というわけで、夜は居間でビール飲みながら、「読売・阪神第2戦」
 読売、5-1で連敗ではないか。ははは。
 午後10時頃に就眠である。

4月4日(日)
 昨日と同じく、龍野の「標準的一日」である。
 が、雨であって、自転車での移動はつらいなあ。
 日曜で、花見客がいちばん多い日だが、龍野公園はどんな状態なのであろうか。
 夜はビール飲みながら、「読売・阪神第3戦」
 この3連戦、解説者のランクが極端であるなあ。
 第1戦が星野と原……前年の監督を並べて、これは見事。星野はいうまでもないが、原が意外にいい。
 第2戦が江川と掛布……在籍していたチームをよく言わない同士で、あまりいい印象は受けない。何か腹にありそうな発言が多いのである。掛布の声はなんとかならんのかねえ。
 第3戦が中畑と水野……話に何の内容もない。水野なんて、そういえばそんなのいたかなあ。あまりに中身のない発言ばかりだから、アナウンサーがやたらうるさく誘導する気配で、これがまた耳障り。音声を消したくなる。
 松竹梅というかABCのランク順というか、一戦ごとに解説者の格が落ちていくのが凄い。
 結果は8-5で読売3連敗。ローズの内野安打という「珍中の珍」があり(わしゃ大リーグボールかと思った)、試合そのものはなかなか面白かった。

4月5日(月)
 龍野の標準的一日である。
 桜が満開であるから、龍野公園まで行ってみようかと思うが、公園の桜、たいしてきれいではない。あまり手入れされてないからかな。
 「堀家」(わが実家ではない)の門前にひっそりと咲いている桜がいちばん優雅なのであった。
 off

4月6日(火)
 龍野の標準的一日である。
 実家の床下をねぐらにしている野良、少し大きくなりかけだが、これが雌。
 そのためか、発情期らしい別の野良が、入れ替わり立ち替わり裏庭に出現する。
 悪相の茶、大型の赤茶、愛嬌のない灰色の三匹。
 床下への猫の出入り口を確認するが、よくわからん。古い家屋だからなあ。
 そのうち猫屋敷にならないか心配である。

4月7日(水)
 龍野の標準的一日である。
 あまりにも「平坦」な毎日に頭がボケてきた感じがする。
 お掃除・洗濯・料理の繰り返しで、それぞれに工夫を凝らす余地はあるのだが、そんなものに面白みを覚えてもなあ。……変態性欲者にして日陰者の今岡清なんて、こんな生活を20年以上続けているわけか。もともとアタマがおかしいから耐えられるんだろうな、などと愚考する。
 夜は、まだ肌寒いので、2階広間にストーブを持ち込んで、こちらに保管のLPを聴く。
 広い家にひとりなので、大音響でも気にせずにすむのがいい。
 コルトレーンの「アフリカ」、森山威男「イースト・プラント」、「ジョニー・ドッズとジミー・ヌーン」なんてのも持っていたのであった。
 久しぶりにジャズを聴いた感じ。これからは毎晩これだな。

4月8日(木)
 龍野の標準的一日である。
 週刊新潮に料理研究とアートフラワーの飯田深雪さんの日記が載っている。
 なんと100歳なのである。……昨年8月に右の大腿骨骨折したが、元気に復帰という。
 わが母より一回り以上年上ではないか。
 母に読ませるとちょっと元気が出てきた様子である。
 夜、ビール飲みながら、阪神が負ける試合をダラダラ見ていたら、21時前に「イラクで日本人3人が人質、3日以内に自衛隊撤退しなければ殺害する」とニュース・テロップ。
 21時からNHKに切り替える。
 22時前にちょっと興味があるので「報道ステーション」に切り替えてみる。と、予想通りというか、古館の仕切り、オタオタして視線も話も焦点定まらず。突発的大ニュースにはからきし対応できないことを露呈してしまった。5分も見てられない。この番組、惨敗必至であるぞ。
 30年ほど前だが、「11PM」で大橋巨泉がそれまで隠していた「硬派」の面を発揮して男を上げた「事件」があったはずだが、ありゃ何の事件の時だったかなあ。アメリカと国際電話でつないで堂々と英語でやりあった事件があったはず。古館、ペケ。
 ということで珍しく夜中までテレビを見てしまった。

4月9日(金)
 わ、朝6時まで寝てしまった。
 慌ただしく朝の雑用(ま、朝食も雑用である)を片づけて病院へ。
 レントゲン撮影の結果、異常なく、今日から少しずつ体重をかける訓練に移るという。
 午後のリハビリでは両手で「手すり」を持って歩くまでになった。
 午後、妹が到着してバトンタッチ。
 夕刻帰阪。
 久しぶりに専属料理人の作った料理(カツオ・タタキの洋風サラダ、アサリのパスタなど)でワイン。
 郵便物や新聞が溜まっているが、精読する元気なし。

4月10日(土)
 定刻4時起床、午前中は久しぶりに穴蔵に籠もって雑件処理。
 午後、地下鉄で下寺町・松屋町筋にある「シアトリカル應典院」という小ホールへ。
 アジマリカム公演『玩具修理者』を見る。
 生玉神社の崖下、ホールロビーの正面は墓地で、ホラーにふさわしい立地だ。
 off
 100人ほどの小ホール。出演者は実質ふたり(他に喫茶店のウェイターが無言で出てくるだけ)……だが、このふたり(亜里、松本秀明)で8役をこなすという異色の構成。
 特に松本秀明は、道雄・猫を修理する少女・父親・母親・道で会うオバハン・玩具修理者の5役をこなす。声域が広くて、全部声を変える、女性の声もきちんと出せる、しかも同一人物の声がテープの回転が遅くなるように変調したり、まさに怪演である。映画版よりもホラー濃度が高い印象。
 終演後、小林泰三さんのトークショーあり、デビュー事情から近作まで、色々。会場からの質問者が女性ばかりというのが凄い。ハードSFでは考えられないことだ。
 会場に来ていた喜多哲士さんたちとしばらく雑談。ちょっと一杯やりたいところだが、体力いまひとつなので失礼する。

4月11日(日)
 終日穴蔵。
 天気がいいし出かけたいところもあるのだが、出歩く気力が湧いてこない。

4月12日(月)
 平日に処理すべき雑件が溜まったので、朝から市内ウロウロ。
 初夏の陽気である。
 昼は「大甚」でカツ丼。
 ……と、昼前のニュース。イラクの人質解放が進展しないままといったところに、臨時ニュースみたいに「経済評論家の植草一秀がスカートのぞき見で逮捕」、な、なんじゃこのニュースは。
 今岡清が女子トイレで捕まったのなら面白いが、こりゃびっくりしますなあ。
 午後、穴蔵に戻る。
 夕方のニュース・サーフィンとネットで「詳報」を調べる。
 植草「教授」は43歳というから、関西方面に多数生息するSF作家と同年代か。
 この世代は「スカートの中」が好きなんだろうか。
 井上章一『パンツが見える。 羞恥心の日本史』では、パンチラ幻想(下着崇拝)は昭和30年代はじめに生じたと分析されている。植草くんはちょうど「パンツが物神化」された時期に生まれているから、生まれながらのパンツ覗き、パンツ崇拝の申し子といえるかもしれないな。
 わしなんぞ、子供の頃、田舎でオバハンが「立ちション」するのをよく見たから、物心ついたときからの「幻滅」世代。スカートのぞきだけは心配ない。
 それにしても、ハレンチ罪で逮捕となるとなあ……どうなりますことやら。
 SF作家諸君、気をつけてくれたまえ。

4月13日(火)
 本日も快晴……ほとんど初夏の陽気。
 10年ほど乗ってきた自転車がいよいよ寿命である。
 ゼロハン(ランナウェイ)を廃棄してから、市内の移動はほとんどこの自転車を使ってきた。
 後輪が去年パンク……これはタイヤがすり切れたためである。3000円で交換。今度は前輪のタイヤがほとんどすり切れ状態。推定走行距離は5千キロ……1万はいかないだろうな。
 それにペダルが重くなった。たぶんベアリングの不調であろう。
 近所のサイクルショップで買い替え。
 電動アシストにするか迷うが、盗難を心配するのも面倒だし、結局旧型同等のありふれた軽快車にする。
 盗難や事故などなければ、これが「最後の自転車」になる可能性が高い。

4月14日(水)
 夜半からの雨、昼過ぎまで止まず、終日穴蔵で雨読。

4月15日(木)
 昼前から市内ウロウロ。
 昼、以前の勤務先の近くで知人とランチ。
 おれは自由業なので中ジョッキ。昼間、ボンクラ・サラリーマン諸君を眺めながらビールを飲むのはなかなか気分がいい。
 午後、かんべむさし氏の仕事場に寄って雑談1時間。
 穴蔵に戻ると、桂喜丸さんの訃報メール。先日「大甚」での歌やん関係飲み会の席で、米輔さんから「脳内出血で倒れた」と聞いていたが、やはりだめだったのか……。明るい芸風で、それに「桂歌之助を偲ぶ会」などでは司会役と決まっていた。この種の会を仕切るのが抜群にうまかった。昨年末の歌やん3回忌パーティの時が体調不良で来られなかった。寂しくなるなあ。
 鷺沢萌は「自殺」とか、横山光輝氏が火事で重体とかの記事も。嗚呼……。
 夜、阪神連敗を確認したところでテレビ切り替えると、イラクの人質3人「解放」のニュースが流れている。
 5分ほど見て切る。
 まあ結構なことだが、またこれから数日、延々と情緒的報道が垂れ流されるのかと思うと気が重くなる。
 しばらくはテレビは見ないことにする。
 特に「親の顔が見たくない」気分である。

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