『マッドサイエンティストの手帳』263
●青春18で東海道を江戸にくだる
在来線を乗り継いで大阪から東京まで移動してみた
2003年1月15日
●印(米原以東)は以前降りたことのある駅である。
青春18という切符は一度使ってみたかったが、なかなか機会がない。
金券ショップの前を通りかかったら、使用残1、2回というのも売っていることが判明。
上京する予定があるので、2回残を6000円で購入した。……つまり、片道3000円で東京まで行くわけである。
むろん経済的効果が大きい。
以前、広島でのSF大会に横浜から2000円で移動した猛者にはかなわないけど。
それもあるが、東海道線の在来線を一度「おさらい」しておきたいと考えていたのである。
魔界と化した東海道の話は、ずっと前、20年以上前から頭にあるのだが……そして伊吹や御殿場など、何ヶ所かは現地まで出かけているのだが、構想ばかりで何も進んでいない。
会社勤めの30年間に、仕事で東海道線の駅にはずいぶん降りた。
最寄りの新幹線の駅から在来線に乗り換えて、である。
ほとんどは繊維に関連する工場である。泊まり込みでの工事もずいぶんあった。
仕事で行った在来線の駅をつないでいくと静岡県までカバーしている。
熱海以東はSF関係で行った場所が多い。
いずれにしても、時間ができたら、一度たどってみようと思っていた。
1月15日、夕刻から東京で会合がある。
天気も良さそうである。
ということで、1日かけて、東海道線で東下りすることにした。
大阪〜米原
7時過ぎに穴蔵を出る。
7時20分に大阪駅の改札でスタンプを押してもらう。
7時28分の米原行き新快速に乗る。
通勤時間だが、さほど混んでいない。
大阪は晴。が、京都を過ぎると雪である。草津、野洲、近江八万、能登川、彦根とずっと雪。このあたりはよく来る場所で新味も懐かしさもなし。
8時50分、米原着。
8時55分初の大垣行きに乗り替える。 乗客のマナー(主におばはん)たちまち悪くなる。田舎であるなあ。ロングシート(というのだったかな、窓に沿った長い、通勤電車型のシート)に荷物を置いて譲る雰囲気なし。困ったものだ。
(結果として、東海道線で座れなかったのは米原〜近江長岡の間だけであった)
米原〜大垣
雪で、5分遅れて発車。
●醒ヶ井 養鱒場に泊まったことがあるけど、以来、鱒は30年、食べる気がしない。
伊吹山がきれいである。ここは敦賀から吹き込む風が雪を降らす重要ポイントである。
●関ヶ原 ●垂井
この2駅にある2工場、泊まり込み日数がいちばん多かった場所だ。SF大賞受賞の時も、垂井で機台の下に電ドル持って潜り込んでいた。思い出したくない辛い記憶も多いなあ。朝やん、元気か? ノラクロ、どうしてる?
●大垣に9時半着。ここもよく来た駅だ。客先の工場が10以上あって何度も来た。
多くの工場は閉鎖されている。
大垣に9時半に着く。
大垣〜浜松
大垣から浜松行きの快速に乗り換える。
9時48分発
ここからもよく来た駅が続く。
●穂積 ●岐阜 ●木曽川 ●一宮 ●稲沢
機械メーカー、それに羊毛関係の工場が多い。
●名古屋 まあ、ここは移動の拠点であった。
●金山 ●熱田 ●笠寺 ●大高 ●大府
繊維関係以外に、某宇宙産業に関わる重工業の工場にも縁があったなあ……。
●刈谷 ここも重要ポイント。うどんの出汁の関西/関東の境界である。
不思議なことに、この駅、立ち食いうどんがない。東西で揉めるからであろうか。
●安城 ●岡崎 岡崎は静かで落ち着いた町である。東海道の中でもいちばんいい印象が残っている。内田修先生がいるジャズの町でもあるからだろうか。
●蒲郡 コーシンの産地だが、小規模な織物工場で工事した回数はいちばん多いのではなかろうか。
●三河三谷 ここはSF大会で来たところだ。
●豊橋 高橋良平くんの産地。松並にあった工場で泊まり込みの仕事が多かった。松並木がきれいで、岡崎とともに好きな町のひとつだ。
●鷲津 ●新居町
このあたりから、遙か前方に富士山が見え始める。鷲津の取引先工場は「富士見町」にあったはずだ。
浜名湖を過ぎる。
●舞阪
●浜松に11時38分着。
この区間、あまりにも懐かしい駅が多くて、本はほとんど読まず、ただ車窓から景色を眺めているだけであった。
ちょっと時間があるので改札を出て、構内のうどん屋で昼飯。
うどんの出汁は関西の味である。チェーン店だからか。
浜松〜熱海
浜松12:09発の熱海行きに乗る。3両のロングシートである。
天竜川を過ぎて大井川まで、この間には意外にも降りたことがない。
大井川を過ぎて、島田である。
米朝一門の歯の主治医であった歯抜き師のハラダはん、こちらに開業してもう10年以上かな。
島田で時々上方落語の会をやっている。
●島田 ●藤枝 ここには大手メーカーの工場があってよく来たが、ハラダはん開業以来、来る機会がないままになった。途中下車してみようかなと迷うなあ。
●焼津 ●安倍川
●静岡 まあ、ここは専属料理人の産地であるから、来る機会は多い。仕事でも清水へはよく来たなあ。
●清水 村松敬太くん、元気か。
ここから沼津までも降りたことのない区間である。
富士川を渡る。快晴で、富士山かいちばんきれいに見える場所である。
もっとも、こんな場所はごく限られていて、東海道(に限らず、全国どこへ行っても)蜘蛛の巣状の電線と無粋な建造物が視界にあって、「絵に描いたような風景」など望むべくもない。
今回の移動も、景観を楽しむことなど、最初から期待していないので、気は楽である。
●沼津
14時23分着。ここで降りる。つぎの東京行きの方が車両がいいのではないかと判断してである。
と、14時27分沼津発の東京行き、狭いボックス席とロングシートの旧型車両である。
しかたないか。
●三島 ……繊維関係の仕事で来たのはここが東端かな。(あとは足利、群馬まで飛ぶ)
●熱海 ……ここはSF作家クラブの旅行で何度か来て、それ以外の旅行では降りたこともない。
熱海14時46分着。つぎの快速が先に着くらしいので、ここで乗り替えである。
熱海〜東京
熱海始発の「快速」これも同じ旧型車両であった。
米原〜姫路間の新快速がいかに快適かを実感するなあ。
14時55分発。
湯河原を過ぎて、「真鶴」を通る。
急に血圧が上がってくる。
先日、松原隆一郎『失われた景観』(PHP新書)を読んで、この町の「美の条例」とやらに、悪党面したチンカス三百代言・五十嵐敬喜が関わっていたことを知ったからである。
『失われた景観』はいい本で、特に蜘蛛の巣状の電線については、もう生きているうちに地中化されることはないとあきらめていた。それが確認できる本でもある。
教えられること、共感すること多いが、「美の条例」にだけは違和感を感じた。
理由は色々あるが、まあ五十嵐敬喜みたいな外道が関わるとロクなことがないという確信からである。
真鶴は別になんてことない、雑然とした、狭い町である。
谷底みたいな土地に小さな家屋がひしめいている。山の方も見るが、湯河原あたりと別に変わったところはない。
根府川、早川と、小田原に近い方が見晴らしはいい。
まあ、大規模マンションの造成をストップさせたということだろうが、貧しい家屋がギシギシと乱雑に並んで、「美しい町並み」なんて期待できそうにないな。わしゃ住みたくもない。
真鶴町、将来きっとこの条例で自縄自縛になって揉めるぞ。
●小田原 ●平塚 ここは化学関係の工場があって何度か来た。
●藤沢 石原藤夫博士主宰のハードSF研究所の例会があって何度も来たところだ。
最初は、御殿場を「取材」し、三島に降り、沼津に泊まり、翌日に藤沢へ来た記憶がある。
倉田卓也さんとお目にかかったのもこの時だった。懐かしいなあ。
●大船 SF作家クラブの旅行では、鎌倉で大伴昌司氏の墓参のあと、ここから熱海に移動するのが7回忌までもパターンであった。
●戸塚 某大手電機メーカーの工場にはよく来たなあ。いい思い出はないが。
●横浜 ●川崎 ●大森
●品川で山手線と合流。
●新橋に16時24分着である。
山手線乗り換えて有楽町。もう夕暮れである。
中天に夕方の月。大阪とは実質時差18分ほどの移動だが、心なしか日暮れが早い。
なんだか、あれよあれよという間の移動である。
本は3冊用意していたが、1冊目の途中までしか読めなかった。読まなかったというべきか。
景観チェックのために眼鏡を着脱するのが途中から面倒になってしまったのである。
疲れはほとんどない。
帰路も在来線で帰るかとなるとちょっと迷うが。
夜行はとうてい無理だが、次の「青春18」シーズンには、途中数泊で動いてみてもいいかなという気分である。
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