HORI AKIRA JALINET

『マッドサイエンティストの手帳』236

●マッドサイエンティスト日記(2002年4月後半)


主な事件
 ・滝川雅弘ライブ(16日)
 ・エンターテインメント・ノベル講座(20日)
 ・本間祐氏『超短編』の会(21日)
 ・株式会社堀晃?(26日)

2002年

4月16日(火)
 朝からの雨が10時ころに上がったので、自転車で本町。某銀行の貸金庫にタイムマシン設計図と実印を戻す。
 午後、来阪中の兄から電話、2時間ほど時間があいたというので、梅田のホテルのロビーで1時間ほど雑談。邪馬台国と宇宙論がメインであるが、平均年齢60に近い兄弟がこんな雑談をしているというのは珍しいであろうなあ。……『ホーキング未来を語る』を、もう読んだからとくれる。某書に掲載の拙文を書店で「座り読み」したのだが、申し訳ないからとホーキングを買ったのだという。宇宙SFを書けという催促でもある。
 そのせっかくの意見を無視して、夜、地下鉄で谷九のSUBへ。
 滝川雅弘カルテット、本日はドラムが東敏之である。
 だいたい常連で8人ほど。松竹・関西支社の川合氏に、7月公開の「タイムマシン」について聞く。もう試写は終わったらしい。残念。あとは、数名で、滝川音源について「著作権者を前に」よからぬ打ち合わせ。ははは。  
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 2ステージ目は各メンバーのフィーチャー大会になって、ベース「ミスティ」、ピアノトリオ「Love For Sale」(滝川さんは「知らない曲なので」といったが、むろんウソ。八木さんの新CDに入っている曲なので、トリオ演奏にしたのである)、ドラムでなんだっけ、ついでにHYUNさんの「Body and Soul」も。ヴォーカルが何曲か入るとやっぱりいいなあ。

4月17日(水)
 雨である。
 早朝から電車で播州龍野の実家方面へ移動。
 雑用色々。
 先日、母が墓を新しく建てた。……何やら色々な儀式が伴ってややこしかったのだが、ともかく完成。その写真を撮ったのだが、背後に石灯籠みたいな格好の墓がニョキっと立っていて、どうも目障りである。
 で、Photoshopで後ろの墓を「消す」ことにした。1時間もかからずに、我ながら見事な仕上がりである。
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 某国の歴史写真から時々歴史上の人物が消えてしまうが、その面白さがわかるなあ。ははは。
 で、仕上がった写真を母に渡す。
 「恨まれへんかしら」
 むむむ。
 夕刻帰阪。

4月18日(木)
 海外関係雑務色々。
 土曜にやる大阪シナリオ学校のエンターテインメント・ノベル講座「SFの書き方」の資料作成。
 何冊か最近の「小説の書き方」に関する本を読むが、異論もある。特に「書き出し」に関しては、小説がテレビドラマというか「時間芸術」を過剰に意識しているのではないかと思う。
 参考までに、手元にあるSFの「書き出し」部分10例ほどをコピー。林譲治が「模範的」で神林長平が「没」かな、あくまでも「指南書」に従えばだけど。
 ※テレビドラマはあまり参考にならないという一例。
 4月15日に前評判の高い(というよりも前宣伝の凄まじい)『空から降る一億の星』というドラマを見かけた。が、冒頭の3分でイライラして切る。あまりにも酷い。刑事らしいさんまが「現場」をウロウロする場面で、鑑識が「そこは触らないで」という注意が3回も繰り返される。これ白痴ドラマなのか? 連続ドラマ冒頭のこの不愉快さはただごとではない。毎週1時間のドラマというのには、何か「お約束ごと」があって、おれがわからないのかと心配になる。……よく考えると、テレビドラマというのは「元禄繚乱」以来見ていない。その前が、かんべむさし原作の「課長さんの厄年」か。どちらもショーケンというのが不思議だが。

4月19日(金)
 朝からまたも市内ウロウロ。
 昼前に「穴蔵」に帰ると上山高史さんから留守電。日経の「交遊抄」というコラムに上山さんのことを書いたのだが、掲載日が本日なのであった。お互い、30年を超えるサラリーマン歴があるから、やっぱり日経の読者と重なるところは大きいようである。
 ネクタイ生活は終わったものの、相変わらず雑用多し。
 小説すばる5月号。
 世の中わけのわからんことが多く、どう評価していいのか困るときに、橋本治のコメントの切れ味は当代一であろう。……「創世記明快事典」で辻元清美の往生際の悪さを見事に分析している。橋本治は女を「おもろい女」「つまらない女」「やな女」に分ける。この線引きは、それぞれの「自覚」の持ち方で微妙に異なる。「つまらない女のままでいる」のはあきらめがいいということで、この対極が「あきらめの悪い」つまり「往生際の悪い」女ということになる。……下手な要約より原文に当たっていただきたい。
 「この人には空洞がある」と書いて、言ってはならないような恐ろしいことを言ってしまったのかもしれないと、註までついている。はっきりいえばカラッポと感じるんだろうな。辻元はカラッポを理屈でカバーしようとしてきたが、カラッポを自認するのが怖いというところなのかな。
 おれは辻元を「いかがわしさを感じる」と書いたが、「やな女」というのが適切であったのだ。
 参考人質疑は25日らしい。
  楽しみは ドブに落ちたる辻元の
  石投げられての のたうち回り

4月20日(土)
 夕方からシナリオ学校「SFの書き方」講義。
 本日は概論で終わり、次回のために「課題」を出す。
 題目は『光世紀の悪魔』……ハードSFなのかサイファイなのかわからんところが凄い。
 ぼくも「対等参加」である。
 終了後、近くの中華屋でビール。
 なんと、とり・みきにそっくりなのがいてびっくりする。
 「おい、きみはとり・みきに似てるなあ」というと、「先週、高井信センセイにもそう言われました」
 誰が見てもそっくりレベルなのである。
 参考までに、以下に写真を並べる。
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 左がとり・みきである。表情がちょっと違うが、実物は、見間違うくらいである。
 よからぬ利用法がないか議論になる。まあ、これも「講義」の続きである。
 帰路、梅田地下街の広場で、ストリート・ミュージシャンと阪神ファンが「共演」というか「競合」というか、音量を競っている。甲子園、どうやら阪神が勝ったらしい。

4月21日(日)
 午後、心斎橋、アメリカ村あたりにある小さなイベント会場へ。
 本間祐さんが主宰している超短篇のグループによる『超短編SENGEN 2002』というイベントである。
 本間さんの『超短編SENGEN』出版記念を兼ねてのイベントである。
 詩の朗読や映像パフォーマンスなどあり、後半が「超短編」の朗読会。6人ほど。
 超短編については、ぜひ『超短編SENGEN』をお読み下さい。「数文字から数百文字の短い物語である。定義はこれで尽きる」とあり、形式的定義はそうなのだが、解釈は無限か。生成途上のジャンルだし、こちらも面白がれるのや、よくわからないのやら、色々で、評価に自信なし。SFの創生期だってそうであった。
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 ※本間祐『超短編SENGEN』(発行所:澪標 大阪市中央区船越町1-6-2 TEL/FAX:06-6944-0869)
 最後に本間氏が「言い尽くせないほど世話になっている」と夫人を紹介、このあたりが本間さんらしい優しさである。
 感心したのをひとつ紹介。
 タカスギシンタロさんの作。

  『ピアノ』
 荒れ地に一台のピアノがあって
 鍵盤を叩いたが
 何の音もしない
 月面の出来事

 うまいオチのようで感心させちょっと笑わせ、ではなぜ月面にピアノが放置されているのかというところから無数の物語が広がる。タカスギさんの他の作品も(睾丸の左右が入れ替わる話があったり)SFマインドが溢れていてすごく面白い。
 夕方から近くのメキシコ料理の店で懇親会、20人近く。ソリトンの真殿剛さん、児島康子さん、シナリオ学校の山崎さんなど久しぶりに会う人も多く、ガヤガヤと21:30まで。

4月22日(月)
 月曜の習慣で、朝から市内数ヶ所をウロウロ。ついでに新聞配達でもやろうかしらん、などと愚考する。
 昼のニュース、テロップで大阪高検公安部長・三井環(57)を「詐欺容疑」で逮捕!というのが流れる。調査活動費の流用疑惑を内部告発しようとしたための「口封じ」逮捕らしい。どうなりますやら。橋本治のコメントが聞きたいところだ。
 午後はずっと穴蔵。断続的に三井環のニュースを見るが、たいした進展なし。

4月23日(火)
 午後、自転車で市内ウロウロ。野田阪神まで行ったついでに、かんべむさし氏の仕事場へ。1時間ほど。
 三井環くんの事件について意見を聞く。この種の事件と北朝鮮関係については、かんべの判断がいちばん速くて的確なのである。「捜査を察知したから内部告発しはじめたので、口封じではないでしょう。もう黙らすわけにはいかんから、これからがおもろいでっせ」ということらしい。
 ついでに、四ツ橋筋沿いに帰ると面白いものが見られると教えられて、自転車で北へ。
 なるほど、休業した堂島ホテル1階にとつぜん「堂島葬祭社」というのが入っているのである。
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 格調高い造りの建物にスモークガラスの扉の店。なんとなく不気味で入りづらそうな。葬儀社(に限らないけど)は明るい店構えにしないとお客さんが来はりまへんでとアドバイスしたくなる、商売気があるとしての話だけど。

4月24日(水)
 朝から珍しくスーツで出かける。まあ「信用」(服装で演出される信用なんてたいしたものではないのだが)を見られる相手なのでいたしかたなし。
 昼前に帰宅。作業服に着替えて播州龍野のガレージに移動。
 夜、帰阪。ああしんど。

4月25日(木)
 10時から辻元清美の参考人質疑を見る。茶番。泣きよる。虚脱したような顔だが、ノラリクラリはなかなかしたたか。「簡潔に答えろ」と前の辻元みたいにいう議員がいないのが情けない。涙には弱いのかねえ。まあ質問する方も選挙の愚民の反感を気にしてというのが見え見えだけど。
 辻元は「やな女」から「つまらない女」になった(なにかをあきらめた表情)ということである。
 あんまり悪口ばかり書くもんじゃないな。カラッポはおれも同様である。人間のアタマもひとつの宇宙であって、当然ボイドが大部分を占める。自分のどのへんがカラッポであるか自覚して、無理しない方がいいのである。
 午後、梅田に出たついでに、西梅田まで行って、地下街の「だまし絵」を見る。
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 外国風の店ばかりでいまひとつ面白くない。串カツ屋、立ち飲み屋を並べてほしいものだ。
 それにしても、梅地下、知らないところでずいぶん変わっているなあ。このところ、取材が追いつかない変わり様である。

4月26日(金)
 とつぜん、先日の「信用を要する」相手から電話がかかったきた。
 「あの……○○(←ま、名前でなくセンセイと呼ばれたと思ってくだされ)ですか? つかぬことお伺いするんですが、お住いはずっと○○ですか?」「20年以上引越はしてませんよ」「ああ、そうですか、奈良の方に同姓同名の方がいらっしゃるので、ひょっとしてと思いまして……」
 何かの「審査」なんだろうか。
 わしゃ借金を申し込んでいるわけではないよ。海外がからむと何かとうるさいことになるのかねえ。どうも奈良方面に、ブラックリストに載っている同姓同名がいるような、嫌な予感がする。
 そういえば先日、京都に「堀晃」という会社がありまっせと教えてくれた人がいる。
 和泉元彌の宗家商標登録ではあるまいし。
 ホントかなとGoogleで検索すると、「株式会社堀晃」というのがあった!
 住宅会社で、どうやら社長さんの名前を略して、ホリコーと呼ぶらしい。堅実に発展してほしいものである。

4月27日(金)
 終日穴蔵。
 ニューオリンズ・ジャズ・カーニバルで知り合った名古屋の今高さんから、賛美歌、ゴスペル、ジョージ・ルイス関係の資料とMDを送っていただいたので、それを流しながら雑用。
 絵心のある方で、MDのラベルに、切手より少し大きい程度のイラストが数枚描かれている。ジョージ・ルイスの体つき、特に指の特徴が見事にデッサンされている。もったいないので、スキャナーで取り込んで拡大、パソコンのデスクトップに飾る。
 ちなみにその一枚。これでも原寸より大きいはず。
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 意外にポピュラーな曲も数多く演奏していて、ジョージ・ルイスの音楽性の広さに改めて驚く。

4月28日(日)
 ボンクラ息子その1が約1月ぶりに帰ってきた。「研修」終了とかで、5月からは大阪勤務。
 連休初日で新幹線指定がとれず、どうにか夜行バスに乗れたのだという。
 専属料理人……というよりも、ボンクラ息子の母親……張り切ってご馳走を作るつもりでいたらしい。が、一眠りするとたちまち遊びに行ってしまった。
 ボンクラ息子その2は焼き肉屋でバイト。
 夜、専属料理人とふたりで数皿並べてワイン。
 ……だから料理は子供主体で考えず、一汁一菜数アルコールでいいのだって。ボンクラ息子その1はこのまま居着いてしまうのだ。食費を入れさせろって。いっそこちらが扶養家族にしてもらう手もあるのだが。

4月29日(月)
 小松左京マガジン6号を読む。
 小谷真理さんの「テクハラ裁判」に関する手記でこの裁判が終結したことを知る。
 前におれも何か書いたなと調べたら、98年3月1日にちょっと触れていた。今から考えると、やや気楽に、「条件闘争」でどこかで和解だろうと予想している。が、そんな生やさしいものではなかったようだ。過去の記事を改竄するのはいかんので、ここでお詫び申し上げます。……経験的にいうと、どちらかが和解をいい出して裁判所から和解勧告が出ると、それを蹴るには大変なエネルギーとある種の覚悟を要するのである。わが裁判の場合、徳間康快氏が、多少心証を悪くしてもかまわんと覚悟の上で、テーブルをバンバンと叩いて「向こうから起こした訴訟だろう。それを和解してくれとは何事だ。こっちは絶対に和解には応じないんだ」とやって高裁での判決が出た(一審のままだったけど)経緯がある。ハゲ頭の五十嵐敬喜、ニヤケ面の堀敏明、アホの菅原哲朗の「三匹の犬」というか「三バカ大将」、おれは生きているうちに全部書くぞ、ったくもう、恥知らずどもが。あ、ちと興奮した。
 小谷さんも中途半端な妥協はしなかったわけだ。4年かかったわけか。
 いずれにせよ、たいへんだったと思う。
 そして「『言論の場で勝負せよ』と一見もっともらしく言い続ける殿方も多かったが、こういうお方に限って裁判こそ究極の言論の場であることを知りもせず、法廷を駆け込み寺か何かとカンちがいしているのであった」……まったく同感である。(「懲罰の場」と錯覚しているチンカス三百代言も三匹いるけど。) それ故にこそ、おれも膨大な「言論活動」の記録をCD−R化しようといまだ苦労しているのである。
 がんばらなくちゃなあ。先に死んだらおしまいだものなあ。
 18時過ぎからNHK−TVで上野都喜雄さんの「響け、最後のトランペット」を見る。3月16日の日記に書いているポケット・トランペットの製造秘話である。最初はニニ・ロッソが使っていたのか。最後に白井のおっちゃんが出てきたのに感激である。
 19:30〜今度はNHK「樹海」の案内役で坂田明さんが出てくる。ビールを飲みながら樹海探検。ジャズ関係での知り合いが続けて登場する不思議な日である。

4月30日(火)
 ふだんより1時間早く目が覚めてしまった。
 空腹である。
 午前3時、自転車で天五の某店へ行って朝食。
 帰路、扇町公園を抜けて堂山町経由で帰る。
 ルン吉くんを長い間見ていない。1月23日に堂山町交差点で見かけてから、もう3月以上である。
 先日、北野勇作さんが「扇町近くであさってはりましたで」と教えてくれた。今の塒はこの近所なんだろうか。暑いほどの日があるから、ピンクの防寒服では、またも蒸れる季節である。
 膿を見つめていた 扇町公園にいた
 風の噂はルン 天六デビューのルン
 赤く汚いブルゾンだけを 胸に羽織ってあさって歩く
 ルン ルン どこにいるのかルン
 誰かルンを知らないか
 ……終日穴蔵で4月は終わる。


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