『マッドサイエンティストの手帳』216
●マッドサイエンティスト日記(2001年10月後半)
主な事件
・滝川雅弘4を聴く(16日)
・ルン吉くん帰る(18日)
・大阪シナリオ学校のエンターテインメント小説講座(20日)
・今さらだが、かんべむさしの仕事場を訪ねる(30日)
2001年
10月16日(火)
やっぱり朝4時に目が覚めてしまう。
ビデオ録画しておいた昨夜のクラーク出演番組を見る。……が23時の予定が30分遅れに変更されたらしい。高橋源一郎と大森一樹がゲストで「2001年宇宙の旅」の製作秘話のようなもの。後半が切れてしまっている。まあ、だいたい知ってる内容だが、切れた部分に特別な情報があったのか気になる。……これは「某賞」受賞のウワサがあったので準備されていた番組なのだろうか。クークのスリランカ移住はダイビング・ショップ経営が目的で、生活安定のためであるというのだが、これ本当か。クラークの経済状態は知らないが、デフランコの不遇時代の比ではあるまい。……がクラークですら「副業」を持っていたというのはいい。ぼくがウズベキスタンでタイムマシン・ショップをやるようなものかな、スケールがちがうけど。
いや、5年ほど前には、ポルトガルのタイムマシン工場を住居だけ世話してもらって手伝いたかったのだが、閉店してしまった。インドネシアのバンドンでタイムマシン・ショップを開こうかと考えたこともあるが、国情が急変した。難しいものだ。クラークが30年以上スリランカにいるのは驚異的だ。納税額が桁外れなのだろう。
ジャズクラ・ファンの池田稔さんが、翻訳中のJohn W.Kuehnによるバディ・デフランコの評伝の草稿を送ってくださった。
ロング・インタビューがものすごく面白い。他のクラリネット吹き(ジミー・ヌーンやベッシェからエイジ・キタムラ、ピート・ファウンテンやアッカー・ビルクまで出てくる)20名以上についてコメントしていたり、不遇時代のギャラのことまで。
滝川雅弘さんについて、同じパターンで訊いてみたくなる。
夜、谷九の「SUB」へ。
滝川雅弘カルテットのライブの日である。
池田稔さんも来ていて、お礼を述べる。他にもおなじみの滝川ファン、本日は多い方である。前々月が台風直撃だったりで、久しぶりであるが、本日も台風接近中。嵐を呼ぶ男か。
「ジャスト・フレンズ」から始まって2ステージ、23時前まで。本日は「わかっている」人たちばかりみたいで、リクエストに「鈴懸の経」なんてのはなかった。初めて聴いた「アイ・リメンバー・クリフォード」が絶品。この曲、ぼくはトランペット以外で聴くのが好きなのだが、クラがこんなに合うとは……。
10月17日(水)
夜中に帰ってきたので、珍しく5時頃まで寝てしまった。5時まで眠れたというべきか。
タイムマシン関係で市内ウロウロ。
六角弘『怪文書』(光文社新書)を読むが、怪文書の解説書?というよりも、「バブル経済事件簿」であって、怪文書比率は少ない。ただ、怪文書の定義は明快で、
1 差出人が不明であること。
2 ターゲットがあること。
3 不特定多数にバラまかれていること。
の3条件を満たしたもの。
……という。
なるほどと納得。情報の真贋は二の次なのである。
以前、住んでいるわが集合住宅で怪文書騒動があった。
この時、ぼくは動機面からの分類を考えたのだが、これもあまり意味がないこともよくわかった。
10月18日(木)
朝、路上を見ると、おおっ、定位置にルン吉くんが帰ってきている。調べてみると、9月30日以来だ。涼しくなったからなあ。忘れずにいてくれたのだ。
衣替えというか、ズボンがニッカポッカになったのかと思ったら、なんとすり切れて半ズボンになったところへ、紺のレッグウォーマーを着用している! こんなのどこで手に入れたのだろう。長靴が、派手な黄色いマーク入りに変わっている。長靴は3代目か4代目。防寒服だけが変わらない。案外おしゃれなのかなあ。
夕方、久しぶりに来阪の兄と梅田で会う。
例によって、おでん屋でビール、SFや中東・南ア情勢、IT不況のことなどダラダラとしゃべりつつ、あとはニューサントリー・ファイブへ。
この日の出演は臨時編成?のスイング・バント。
井上佳也(cl)、植木英男(g)、吉井豊(p)、石田信雄(b)、木村陽一(ds)……これに数曲トランペットが参加。
あ、これじゃアーティ・ショウのグラマシー・ファイブ編成じゃないかと思ったら、ちゃんと「スペシャリー・デリバリー・ストンプ」を演ってくれた。
井上佳也さんという若いクラ、ふだんはビッグバンドでのリード・クラという。テナーも吹くが、なかなか生きのいい演奏ぶり。大阪のジャズ・クラリネット、まだまだ逸材がいるのだなあ。
10月19日(金)
天気がいいので、朝、「穴蔵」の掃除。寝具も日に干して、冬用と入れ替えたのであった。
午後、ちょっと気になることがあって、スイング・ジャーナル10月号精読、CD数枚を聴き直し、あとはHP用原稿をダラダラと書く。終日こんな作業。……ついでに調べてみたいことが派生するが、これをやりだすと悪い癖で、際限なくなるなら、途中で見切りをつける。
10月20日(土)
夕方から天満のエル大阪へ。 今までも時々「某講座」などと書いているが、むしろ少し宣伝しておいたほうがいいと思うので書いておくと、大阪シナリオ学校の「エンターテインメントノベル講座」で、ぼくの担当はSFである。
高井信、草上仁、本間祐、田中哲弥、北野勇作の各氏らも担当。眉村卓氏やかんべむさし氏が講義に来ることもある。
「作品指導」という場合はもう少し絞られるが。
本日は4篇。宇宙SFが2篇と、伝奇SF風1篇、ちょっと不思議な「キタSF」が1篇。
ゼミ形式と仮称しているが、講義の形式よりも、具体的に提出作品を材料に出席者(作者も)と議論する方が、細部の技術的なところが明確になるので、ぼくには面白い。むろん、こんな場合、プロレス・アナロジーは通用しないのだが、これは話がそれるな。
意外なことに、設定を分析してみると古い拙作と共通するところの多い作品が3篇。
・宇宙ものその1……超空間との「通路」が奇妙な性質を持つという設定。
・宇宙ものその2……廃墟となったスペースコロニー。
・キタSF……淀川と大和川に高い塀が作られて隔離された内側の土俗的世界。
長所、短所を議論していったら、自作の欠点に気づいたりして、ははは。
・伝奇SFについては、どうしても半村作品との比較になってしまうが、テーマが別のところにあるから、ちょっと迷うところもある。とくに「専科」で文章もきちんとしてくると、逆にこちらの誤読が心配で、作者に念押ししつつの議論になる。
あと、例によって近所の中華料理店で2時間ほどガヤガヤ。
10月21日(日)
特別プロ野球が好きではないものの、朝は「マリナーズvsヤンキース」をちらちら見ながら朝食。
夜はどういうわけかボンクラ息子ふたりともいない。
肌寒くなったので、専属料理人に懇願してナベを作らせる。テレビの音を消し、近日発売の上山高史さんのCD『That Old Pieces』のサンプル盤を聴きながら、「近鉄〜ヤクルト第2戦」の画面をちらちら眺めつつビール。……が、CDが終わったあたりから戦況が変わってくる。むむむ。日本野球もあなどれないではないか。いてまえ打線恐るべし。
10月22日(月)
終日ボケーっとしているのであった。
アタマが働かないのであった。
北野勇作『ザリガニマン』(徳間デュアル文庫)を読むのであった。
夕方、かんべむさし氏が現れたのであった。
パソコン買い換えの相談であった。
XPがどんな風になるのか、わしにもわからないのであった。
10月23日(火)
ますますアタマが鈍化していくのであった。
10月24日(水)
不思議なことに、アタマが働かないまま眠れず、朝になったのであった。
朝刊を読んでから、10時頃まで眠ったのであった。
これで夜型にシフトできるのであろうか。
が、午後、タイムマシン関係でウロウロと動く。
夜、ビールを飲むとたちまち眠くなるのであった。
体を動かすのがよくないのであろうか。
10月25日(水)
相変わらずアタマが働かないまま、午後、専属料理人といっしょに姫路へ移動。
夕刻、岡山方面(高梁市)へ短歌関係のグループでバスツアーであった母を姫路駅で出迎え、数年前の骨折以来、脚がちょっと弱くなっているので龍野までエスコートして帰る。
19時でもう真っ暗である。夕食後、もう何もすることなし。ヤクルト優勝するかしないからしいが、20時過ぎれば眠くなる。やっぱり仕事場を田舎に移すというのは、おれの場合無理だなあ。
10月26日(金)
わ、案の定、午前2時に目が覚めてしまった。
ちょっと寒いが外に出て、しばらく星空鑑賞。……真っ暗といいながら、近くに賃貸住宅ができて、常夜灯が目障りになってきたなあ。
朝まで、レム『完全な真空』を再読。
今年は柿の熟成が早く、これは専属料理人と母にまかせて、某ガレージ別荘へ。タイムマシンの最終調整、いよいよ来月、ウズベキスタンへ向けて船積みである。これでアフガンの戦況が変わるであろうか。(←あまり本気にしないように、エシュロンくん)
夕刻、柿を約5キロ下げて帰阪。
10月27日(土)
カジシンからメール。28日に大阪へ行くという。会議が20時に終わるから、その後会いたいという。わ、日曜の夜だ、たいした店は開いてないが、晩飯抜きで待ってるぞと返信。
昼、上山高史氏のCD『That Old Peaces』が届く。
ちょっと元気が出てきて、夕方までずっと「穴蔵」に籠もる。
ビールも飲まず、そのまま夜中まで。
カジシンからメール。28日は水曜でっせ、という。なぬっ! よく読むと、来阪というのは11月28日なのである。ややこしい時にメールしてくるなよ。明日の夜のつもりで胃袋が準備態勢に入っているというのに……。
そのままふて寝。
10月28日(日)
終日「穴蔵」であった。
10月29日(月)
終日「穴蔵」であった。
10月30日(火)
久しぶりにスーツを着て、朝からJRの瀬田へ。
スーツにネクタイで技術的な話をするのは気分がいいものである。
昼過ぎ帰宅。
だらしないブルゾンに着替えて、自転車で西長堀の市立中央図書館へ。ネット検索したら、ちょっと無理かなと思っていた資料があることが判明、借りに行く。
帰路、かんべむさし氏の仕事場に寄る。
1時間ほど雑談。主に、かんべから教えられて読んだ、小林一博『出版大崩壊』(イーストプレス)について。うーん、この本、いわば「物書き出版流通」関係への「がん告知」である。断片的かつ薄々は皆知っていることなのだが、怖くて話題にしたがらないということではないか。流通関係に重点が置かれているが、物書き関係も凄い。
たとえば……
「印税で生活できず、作家やライターは消えるのか」の章。
「芥川賞作家でも初版1000部ぐらいしか刷らないケースもあるといいますから」
で、それだと2000円の本でも印税は20万。400枚の長編だと、1枚当たり500円。「駆け出しライターの原稿料の何分の一かの金額になってしまう」から、3000部刷ったと偽って印税を多く支払う。その方が2000部余分に刷るより赤字損失が少ないからという。
かんべ「まあ、そんなもんでっせ」と妙に明るい。「考え方」を変えたのだそうである。
どんな悟り方をしたのか……。
かんべむさしくん、live & well である。
かんべは、無精になったらしく、あまり東京での会合に出てこない。「かんべさん、どうしてる」とよく効かれる。(かんべだけが出席の場合は逆ぼくの消息を訊かれるという)……これが、最近「かんべさんと疎遠なのではないか」と訊かれて慌てる。このページにあまりかんべが出てこないかららしい。
いや、相変わらず、お互いの仕事場を「いたりきたり」でっせ。昔みたいに漫才やる体力はないけど、できれば「いとこいさん」みたいに老けたいものである。
この日の話題も、近日いよいよかんべが導入予定のWindows XP についてであった。近日ネットにも登場すると思う。
まあ、今さら「記念写真」なんて間柄ではないのだが、SF関係諸氏には、御近影をお見せして、かんべむさし健在であると報告しておきたい。
帰路、土佐堀川夕景……ちょっとセンチメンタルな気分なり。
10月31日(水)
終日「穴蔵」である。
上山高史さんのCDを聴き、あとデフランコの「プレイズ・ガーシュイン」などを聴きつつ、ひねもす机に向かうのであった。
気分はもう晩秋である。
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