『マッドサイエンティストの手帳』857
●マッドサイエンティスト日記(2025年7月後半)
主な事件
・KLL例会(18日)
・参院選(20日)
・江畑忠彦『荷風 静樹 愛と離別』(ミーツ出版)
7月16日(水) 穴蔵
晴/陰/時に小雨、不安定な一日。
終日穴蔵にて読書、午睡、空しく一日を送る。
創造的なことは何も浮かばない。老化である。
7月17日(木) 穴蔵
終日雨。穴蔵。朝朝食。正午昼食。夜晩酌。
断腸亭最後2ヶ月に似てきた。こちらは3食で2食多いが、一歩も出てないからなあ。
正午コンビニ(弁当)にすべきか。
7月18日(金) KLL例会
真夏日復活。
昼前に出て、阪急で三宮へ。月例の会合。
旧居留地を5分ほど歩く。
*
ここ数年、ほぼ毎月神戸に来ているのに、ここから東遊園地あたりまでしか歩いていない。
もっと西の方……南京町を抜けて、メリケンパーク、ハーバーランド、できれば新開地までウロウロしたいのだが。
コロナ以降、神戸もまったく歩いてない。和田岬や苅藻あたりは、昔から興味があるのに、一生歩かないままになりそうな。
午後、区民センターで神戸文芸ラボ(KLL)例会に出席。
例によって提出作品(エッセイ・短篇)についてあれこれ議論。
5千円札を拾った設定の謎解き掌篇。ネタの面白さがいいが、関連して、拾得物を届け出た時の警察の反応が話題になる。
メンバーの大部分に届け出経験があり、警察の対応がバラバラであることに驚く。その解釈もまちまち。
何しろ、最高は100万円入カバンの忘れ物から、からっぽの財布(中身を抜き取って犯人が捨てた)まで、色々あるからなあ。
幸い、災難に巻き込まれたことはないようだが。
7月19日(土) 穴蔵
真夏日(猛暑には至らず)。世間は3連休の初日。ガキどもは夏休み初日。
終日穴蔵。
部屋にいれば過ごしやすい日である。
先日から「二地域居住」について悩むこと多し。
二地域居住という言葉は、先日の鶴保の失言?ではじめて知ったのだが、国土交通省が推進する「都市と地方を往来しながら、ふたつの生活を楽しむライフスタイル」らしい。これは願ってもない構想。30年ほど前、流行作家の多くが都内に自宅、軽井沢に別荘(仕事場)を構えたが、この歳になってそれが私にも実現するかもしれないのである。
じつは大阪の「穴蔵」は機能の半分(タイムマシン業の大阪事務所)を終えている。書斎機能だけなら(経費面からも)自宅の一室に縮小すべき時期かもしれない。しかし蔵書をどうするか。
そこで播州龍野書斎が浮上する。蔵書を龍野実家に移し、庭に面した座敷を書斎にする。大阪(都市)と播州龍野(地方)を隔週くらいで往来する。まさに理想的な「二地域居住」ではないか。何か優遇措置(固定資産税の減免とかリフォーム費の援助とか)があるのではないか期待もできる。
問題はある。実家の老朽化とわが肉体の老朽化である。前者にはリフォームが必要、後者は「ひとりでいて階段で転倒でもしたらどうするの」という家人の余計な過剰な心配である。
色々迷っているところに「鶴保議員の失言」である。
「運のいいことに能登で地震がおきた」……選挙応援演説の論脈は「二地域居住についてなかなか理解が得られないところ、運のいいことに能登で地震がおきて、被災者が金沢に移住したが、補助金に必要な住民票を能登の役所から取るのに苦労している。総務省が動いて金沢でも住民票が取れるようにした。やればできるではないか。これは(二地域居住を推進する)チャンスだ」ということらしいが、能登の被災者は自宅を失って金沢に避難したのであって「ふたつの生活を楽しむ」どころの話ではない。
非難が集中して、鶴保はさっさと発言を「お詫びして撤回」してしまった。
今回の参院選の「公約」を探しても二地域居住なんてどこにも見当たらない。二地域居住はまた夢の構想に戻ってしまったような。
困ったやつだな、鶴保めは。
7月20日(日) 穴蔵/参院選投票日
真夏日。世間は3連休の中日。
終日穴蔵……のつもりだったが、本日は参院選の投票日。
午前、専任料理人と投票に行く。久しぶりに豊崎小学校の校庭。
*
出口調査があればデタラメを言おうと準備していたのに、今回もなし。
あと近くの食品スーパーに寄って液体系重量物の運搬。
午後は穴蔵にて本を読んで過ごす。
たちまち夕刻。
5皿ばかり並べてもらって晩酌。
20時から開票速報が始まるが、10分ほどで退屈する。予測報道と特に変わらない。
ホンマの開票結果が出てくるのは22時過ぎてからだろう。
起きてられそうにない。とりあえず早寝させていただく。
7月21日(月) 穴蔵
・早寝したら2時前に目が覚めた。参院選開票速報を見る。かなり当確がでているが、大阪はまだ決まらず。比例はこれからのような。また眠る。
6時頃にだいたい決まったようだが、予想通りというか、何の興味もわかない。
和歌山で鶴保が応援演説した二階伸康が見事落選。面白いのはこれだけであった。
・真夏日。世間は3連休の3日日。祝日で海の日だそうな。
終日穴蔵……のつもりだったが、運動不足なので、昼前に茶屋町、ジュンク堂、中崎あたりを周回。
炎天下、ラーメン屋・麺助に長い行列。好きなんだのう。
*
こちらは、昼は冷蕎麦てビール1杯。休日だからいいであろう。
・午後は穴蔵にて読書。
「荷風に実子がいた?という謎に迫る」本が出ていると教えられて、江畑忠彦『荷風 静樹 愛と離別』(ミーツ出版)を読む。昨秋に出ていた。
*
この話は同志社教授が論文あり、児玉義男氏が自費出版したことは知っていた(読んでないけど)。
要するに二度目の結婚(八重次)で子供があり、義弟の長男・内田芳夫氏が荷風の「隠し子」ではないかという話である。
これを元ジャーナリストが徹底調査したのかと期待したのだが、「身元調査」は戸籍謄本だけ(これもプライバシー上問題ではないかと思うが)で、大部分は八重次(藤蔭静樹)との「愛と離別」であった。
DNA鑑定などやるべきではないと後記にある(そりゃそうだ)通りで、わが野次馬的興味(あまり褒められたことではないが)からいえば、内田氏の公開されている「顔写真」があるならそれで十分である。どこかにないのか。
・SFマガジン8月号の特集が「ウィリアム・ギブスン」であることを知る。
(ついでにSFマガジンが季刊化? かと思ったら、ミステリ・マガジンが季刊化であった。)
先日(7月10日)にクロード・チアリ氏を思い出したところだった。1988年にチアリ邸を訪問した時、「ニューロマンサー」が話題になった。この時のチアリさんの意見は「この文体はパソコン通信マニアが仲間内だけの用語で喋りまくっているようだ」ということだった。つまり「オタクの会話体」ということだろう。これには驚いた。私は黒丸尚さんの訳文(例の漢語にルビがふられた強面文体)で読んでいるから、オタクの会話なんて想像もしなかったのである。
この原文と訳文の乖離?は、英会話のできない私には今も理解できぬままである。
今(2025年)SFマガジンを読んでも、黒丸文体はサイバーパンクの代表的文体として定着している。これは日本SF文化を語る上で重要な「業績」だと思う(映画だとこれがないわけだが、わしゃ英会話が理解できないからなあ)。
40年ほど経過した今でも、黒丸訳文は、あれ以外にない見事な翻訳だと思っている。
・たちまち夕刻。
色々並べてもらって晩酌。
*
暮れゆく北梅田を眺めつつビール、ワイン少しばかり。
本日飲み過ぎか。ま、連休最終日だから、いいではないか。
7月22日(火) 穴蔵
やっと連休明けである。
播州龍野のつもりでいたが、相棒の某くんに用件発生、こちらの用事も代行してくれることになった。
終日穴蔵。
久しぶりに猛暑日。出歩かないのが正解である。
スマホでの文字入力が面倒なので、4,5年使ってなかったBluetoothのキーボードを使おうとしたら、うまく動作しない。
アルカリ電池が劣化していたので交換するが、電源LEDが点灯せず。電池が悪いのか。
*
そこで、これまた10年以上使ってなかった日置のテスターを出してきて調べるが、どうもテスター不調?
テスターの電池も交換する。が、抵抗は(端子を接触させれば)針は振り切れるが、電圧は怪しく、電池の電圧も測れない。
何を信じていいのか、皆目わからん。テスターが不調だからなあ。
わが相棒の本日の龍野行きは、製品のキャリブレーション依頼があったためである。
わが社はタイムマシン製造業で、「繊維物性の計測もできる」時速1時間の未来行専用マシンを作ってきた。それだけにキャリブは徹底している。今は新規製造は終っているが、技術サービスは継続している。
その会社社長のテスターがこれではいかんではないか。
気になって血圧計と体温計も調べてみる。血圧計は(たぶん)正常だが(血圧は変動が大く、自宅/医院/病院/薬局で測定してもすべて異なる)、体温計の動作は怪しい。この体温計も(自宅の新型を使っているから)引出しに数年放り込んでいたからなあ。
部屋とベランダに吊るしている温湿度計も信用できない。2個は100均ので、キャリブレーションなんてハナから考えてなく、表示はもともと「目安」でしかない。
時間をかけて色々調べたが、穴蔵に信用できる計測器がひとつもないことが判明した。
次回の龍野行きには日置のテスターを持参して、せめて電池の電圧くらいは正確に測れるようにしようと思うのであった。
7月23日(水) 穴蔵
本日も猛暑日。終日穴蔵。読書、午睡、空しく一日を送る。
7月24日(木) 穴蔵/ウロウロ
このところ睡眠不規則……というよりだんだん早起きになってきた。
午前2時に目覚める。
・3時〜BS「落語研究会」で柳亭市場「らくだ」を見る。江戸バージョンははじめて。下手な噺家ではないのだろうが、ちとしんどい。デティルが上方とだいぶ違う。はしょっているのか、もともと江戸版がこうなのか、よくわからん。1時間近いのだから、そう省略したとは思えないが。特に紙屑屋が酔っぱらっていくくだりの細部描写はほとんど飛ばしている。ペケ。
・午前4時にゴミ出し。エサ場にトラ2匹がいた。
・朝、東から直射光。午前の3時間ほどエアコン稼働。
本日も猛暑日なり。穴蔵にて午睡。
・夕刻に出かける。久しぶりにいんたーぷれい8へ。1時間ほどマスターと話す。来月のライブ関連の打合せと確認。
このところ営業日が不規則で、マスターの体調によるらしい。こちらも体調優先で基本的に「夜遊び」はしないから、夕刻に限定されてしまう。昔は天神祭の頃は(ハチママが氏子であったから)ハチも大騒ぎであったが。ライブ開始前、午後7時で失礼する。
・帰館後、少し遅めの夕食。おっ、本日のメインはジャンバラヤである。
*
加藤平祐が河合さんの遺品クラを吹く限定版CDを聴きつつワイン少しばかり。
やっぱりニューオリンズがいいなあ。
7月25日(金) 穴蔵/天神祭
2時前に目覚める。
昨日の「らくだ」が気になって、youtubeで円生、志ん朝、談志などをチェック。屑屋の酔っぱらい方が東西で違うことはわかった。らくだは上方に限る(特に松鶴)が……こんなこと未明からやることではないな。
本日も猛暑日。各地「危険な暑さ」らしいが、大阪は(わが体感では)普通である。
終日穴蔵。読書、午睡、空しく一日を送る。
夜、数皿並べてもらってビールを飲んでたら、遠くで花火の音。
本日は天神祭であった。
ヘリが飛んで、奉納花火を中継しているらしいが、もはや興味なし。コロナで中止が、2年前に復活だったか。
前世紀末までは、天神祭の夜は北浜で歌やんの独演会があり……毎年のパターンだったが、今や遠い日の思い出である……と、これは2年前に書いているか。
らくだで始まり歌やんで終る1日。老化を実感するなあ。
(つづく)
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