『マッドサイエンティストの手帳』821

●マッドサイエンティスト日記(2024年1月後半)


主な事件
 ・KLL例会(19日)
 ・創サポ講義(20日)
 ・播州龍野いたりきたり


1月16日(火) 穴蔵
 曇。時に晴れ間あり。風強く雲の動き急。
 寒いので終日穴蔵。
 資料を読んで過ごす。
 大相撲(初場所)が始まって、BSは13〜15時、取的中継。映画(西部劇が多い)がないのが寂しい。2週間の辛抱か。
 たちまち夕刻。
 肉じゃがや野菜炒めなど並べてもらってビール。
  *
 あと、明太子などで、静岡方面から頂いた「誉富士」をチビチビ。まろやか系である。
 BSで「新・座頭市物語」を見ながら。
 シリーズ3作目で、わが印象はシリーズ中「ほぼ最低作品」であった。
 恩師(河津清三郎)を斬ることになるのはいいが、恩師の妹・坪内ミキ子が市に「オカミさんにして下さい」というのが荒唐無稽。最後のチャンバラがセット撮影なのもペケ(セットの出来がよくない)。下っ端ヤクザの中村豊だけが面白かった記憶がある。
 60年前の記憶はほぼ間違いなかったが、田中徳三のムードで押す演出はなかなかよく、後期の座頭市よりは遥かに面白い。

1月17日(水) 穴蔵
 定刻4時に起床。5時46分に一応黙祷。次の瞬間にも揺れがありそうで、数秒間しか目を瞑ってられない。
 来年で30年か。そのあたりでこちらも潮時のような気がする。
 終日穴蔵。
 机には向かうものの調子は出ず。ボケーーーッと過ごす。これが普通か。
 天気がいいので、午後、近所の公園まで散歩。
  *
 梅が咲き始めていた。
 播州龍野の実家の庭木が気になるが……来週にするか。
 たちまち夕刻。
 洋風数皿。メインはグラタン……かと思ったら、ラザニアというらしい。
  *
 よくわからんが、イタリアワインだから、そういうことらしい。
 このところ、焼酎〜日本酒〜ワインの健全なローテーションのような。

1月18日(木) 穴蔵
 夜中に目が覚め、ゴミ出しに出る。
 エサやりオバサン作業中で、足元で懐いているクロが食事中。
 市営廃墟の野良はと見れば、フェンス下で5匹が食事中であった。
  *
 深夜に6匹が集結。これで全部なのだろうか。ふだんは2,3匹しか見ない(全部トラ猫でよく似ている)から、何匹いるのかは不明。
 しかも耳がカットされているのか確認できない。
 野良猫戦線、混沌としたままである。
 未明から雨が降り始め、小雨が降ったりやんだり。
 終日穴蔵。
 ちとややこしい事態(非SF系・非健康系・非家族系……書いても面白くないだろうから書かない)が発生して、落ち着かぬことである。
 生産的なことが何もできぬまま、たちまち夕刻となる。
 5皿ばかり並べてもらって、本日はビール、伊佐美系を一献。
 とりあえず早寝させていただく。

1月19日(金) KLL例会
 昼前に出て阪急で越境、兵庫県神戸市三宮へ。
 午後、神戸文芸ラボ(KLL)の例会に出席する。
 Iさんの提出した短篇、AIによるビットコイン取引を描くビジネス小説だが、恋愛小説でもあり、SFでもあり、まことに微妙な領域にまたがる作品。ほとんど秀作だが、もっと面白くできそうな要素が色々指摘できる。要するに問題作。
 今回の芥川賞受賞作「東京都同情塔」が(まだ読んでないのだが)ChatGPT 利用した近未来小説らしいということもあって、論点が色々出てくる。
 わが論点のひとつは、AIに「ロボット3原則」に相当する強力なフレームがないことがAI-SFの弱点?ということだが、これは本末転倒であろうか。
 わたくしとしては、AIものがプロパーSFより先に純文学として評価されてしまうのが、ちょっとくやしいのである。
 16時前まで。
 近所の東遊園地でルミナリエの準備中であった。今夕から点灯されるらしい。
  *
 寒い。暗くなるまでは待てない。

1月20日(土) 創サポ講義
 小雨が断続的に降る陰気な日である。
 終日穴蔵にて資料のチェックと雑事。なんやかや忙しい。
 夕刻這い出て、地下鉄で谷町のCANVAS谷町へ。
 創作サポートセンター講義。出席者とオンライン、ほぼ同数。SF短篇2篇と長篇1篇。
・地球に近い恒星に発見された惑星を「異形の惑星」として設定した宇宙SF。長篇化すれば『竜の卵』穏健版になるか。
・通勤ラッシュなみに乗客を詰め込んだ宇宙船内で起きた殺人事件。無茶苦茶な設定だが、落語SF狙いで、殺人方法も無茶だが、その方法をカモフラージュするには、さらに無茶苦茶な設定や人物を増やす方が面白い……はず。
・龍と妖精の一族が争う世界を舞台にした長篇ファンタジー。超人的な戦いがエスカレートしていく描写の評価はわたくしには無理だが、全体のテーマは「トランスジェンダー」にあるように読め、ある一族では「親子が入れ替わる」ようにも読めたり。最後に現れる敵?側の親玉のイメージも秀逸。こみ入った人間関係?とその変化が会話の隅々にまで反映している。ファンタジーの定番設定を使いながら、狙いは異世界の種族の生態系を描くことにあるように読め、『奏で手のヌフレツン』に通じる雰囲気を感じた。
 面白いけど疲れる1日であった。

1月21日(日) 穴蔵
 未明からの雨がたぶん9時頃にはやみ午後は晴てきたような。
 終日穴蔵。
 色々雑事があり、10時間以上机に向かっていた。あまりアタマを使うことではないけど。
 たちまち夕刻。
 一杯飲んで早寝させていただく。

1月22日(月) 大阪←→播州龍野
 早朝の電車で播州龍野へ移動する。
 ややこしい雑事色々。町内ウロウロして、午前中でなんとか片づいた。
 ただ……実家書庫のどこかにあるはずの資料がどうしても発見できず。
 積み上げてあるダンボールのどれかか。
 探し出す体力なし……というより、作業中に転倒でもしたら、身動きがとれなくなりそうな。
 色々な面で「そろそろ限界」のようである。
 午後の姫新線キハ系で姫路に移動する。
  *
 姫路で「えきそば」をいただき、調べたいことあって旧商工会議所あたりまでウロウロ、たいした成果なし。
 夕刻に近い午後に帰阪。
 数皿並べて一献。
 ちと疲れた。

1月23日(火) 穴蔵
 終日穴蔵。
 断続的にだが10時間ほど机に向かう。
 わたくしはマジメになったのである。
 毎日こんな生活を続けようと思ってたら……ややこしい電話があって、明日、また播州龍野へ行かねばの娘。
 困ったことよ。
 夜は和か中華風か洋風かよくわからんメニューが並んだ。
  *
 ビール、安ワインを一杯。
 BSで『座頭市兇状旅』を見るが……60年の記憶ほどは面白くなかった。
 浪人・棚倉蛾十郎(北城寿太郎)が三十郎(よりも弱いけど)そっくりなところだけが面白いが、つまらん作品であった。
 座頭市シリーズは(第1作以外)もう終わりとする。

1月24日(水) 大阪←→播州龍野
 早朝の電車で播州龍野へ移動する。
 今季最強の寒波というが、快晴で山陽線の電車は遅れず。
 9時過ぎに実家に到着。室温は4℃であった。
 シルバー諸氏と庭木剪定の打ち合わせ。信頼してお任せするしかないようである。
 タイムマシン格納庫でも雑事。市内もウロウロ。
  *
 揖保川を吹き抜ける風は冷たいが、川を挟む東西には「山笑う」気配もあり。春は近いのであろう。
 実家の作業はシルバー氏にお任せして、午後の電車で帰阪。
 入浴してホッ。数皿並べてもらってビール、湯割り。
 BSで『昭和残侠伝 破れ傘』を……結局見てしまう。
 シリーズ最終作で、健さん、池部良、鶴田浩二、安藤昇と並ぶが……悪役(山本麟一)が弱い。この程度の男のせいで何人もの主演級が死ぬのだから。三国連太郎クラスを配置できなかったのか。

1月25日(木) 穴蔵
 わ、目覚めれば6時半である。えらい朝寝坊だ。寝坊して他人に迷惑かけるわけではないのだか。
 疲労が蓄積していたのであろう。
 終日穴蔵。
 外は「最強寒波」らしいが、よくわからん。
 半日きちんと机に向かい、先日来の作業を一応終了。
 あとはコタツで本を読んで過ごす。
 たちまち夕刻。
 洋風数皿並べてもらってビール、ワイン。
  *
 BSで岩合猫番組を眺めつつ。
 近所の市営廃墟に撮影に来てくれないものだろうか……と専任料理人と嘆く。野良たちは最強寒波を乗り切れるか。

1月26日(金) 穴蔵
 普通の日常に戻った。
 4時起床、一連の「朝の儀式」を済ませ、6時頃から机に向かう。
 10時から某同人誌関係のzoom会議。春には紹介できるだろう。
 午後は30分ほど近所を散歩。
 あとは本を読んだりネットを覗いたり。
 ニュース雑感。
・能登地震。輪島市で全焼した永井豪記念館、展示物のほとんどが無事だったという。
 なによりというか、不幸中の幸いというか。再建してほしい。むろん周辺街並みも。微力ながら支援。
・桐島聡(東アジア反日武装戦線)逮捕……というか、鎌倉の病院に別名?で入院中していて、本名を明かした。
 ガンで余命数ヶ月とか。迷惑かけずにあの世行きということか。
 大坂正明と並ぶ「わが逃亡の人生」。わが関心は梅内恒夫だが、時効成立しても出てこない。支援組織はいなかったのか。
 たちまち夕刻。
 刺身やポトフを並べてもらって一献。
  *
 トミフラ師匠、モンク師匠を聴きつつビール、ワイン。
 こんな日があとしばらくつづくといいが。

1月27日(土) 穴蔵
 普通の日常。
 午前中、マジメに机に向かい、zoom会議で決めた分担事項を片づける。
 午後、集合住宅の雑配水管洗浄。13時過ぎに順番がきて、10分ほどで終った。
 ついでに水回りの清掃。それほど使用しない(洗濯機もない)から、簡単なもの。
 その後、専任料理人のお伴で天八のスーパーまで行き、重量物(主に飲料)のポーターを務める。
 いい運動になった。頑張って重量物を消費して、また運動しなければ。
 ニュース雑感。
桐島聡について、「危篤状態」「海外に逃亡していた」「神奈川で土方やってた(この場合、組織的な支援はなかった?)」など情報錯綜。死期が近いのは確かなような。
 半世紀の逃亡生活である。時期的には……75年は、わたくしが(かんべさんらと知り合って、やっと)SFを書け始めた頃、同時にタイムマシン業も軌道に乗って海外進出を始めた頃である。それからの半世紀。SFと仕事以外でも、ジャズでも落語でも、思い出すだけで楽しくなる記憶がいっぱいある。
 その間、桐島聡は何を考えて生きていたのだろう。世間のニュースを見ていたとすれば、虚しくならないはずがないのだが。ニュースも見ることなく土方やってたのか。まさかと思うが、まだ「窮民革命」を夢見ているのだろうか。
 死ぬときは本音を吐露してくれよ。
 たちまち夕刻。
 夜は「もつ鍋」で湯割りグビグビ。
  *
 わが家では、家庭では作らないメニューがある。
 主に煙りモウモウのメニューで、ウナギ、ヤキトリ、モツなど。これらは基本的に外食であった。
 コロナ禍で外食しなくなってから、これが変わった。ウナギはたまにデパ地下で、ヤキトリは正起屋で買ってくる。
 本日は自宅で「もつ鍋」。スーパーのモツにニラ・キャベツぶち込んで食す。
 まあまあ……博多春吉の「なかむら」には到底及ぶものではないが、大阪のそこいらへんの店となら、どっこいどっこいではないか。
 いい気分で早寝。

1月28日(日) 穴蔵
 普通の日曜日。
 何もせず、終日穴蔵にあり。
 午後、BSで『隠し砦の三悪人』を見る。
 これも半世紀ぶりか。最後に見たのがスターウォーズ以前(大学時代)だから60年ほどになるのか。
 その夏に蓬莱峡まで行った。goobleで確認してみると、当時とあまり変わっていないような。
 もう行く元気はないけど。

1月29日(月) 穴蔵
 普通の月曜日。
 晴れの平日なので出かけるつもりだったが、面倒になった。
 月末の処理事項などあり、明日か明後日にする。
 終日穴蔵。
 ニュース色々。
桐島聡(を名乗る男)が死亡。胃がん。内田洋の名で藤沢市の土木会社の寮?に80年代から住み込みで働いていたという。
 要するに日雇い人足。西成か山谷ならともかく、藤沢(鎌倉近く)に寄せ場があったのか?
 その「逃亡の人生」……そのうちどこかが特集するだろう。楽しみな。
・逆立ち着地の月面探査機「SLIM」、太陽電池パネルが稼働して運用再開。これは嬉しいニュースである。
・「豊崎住宅その他工事のお知らせ」というチラシが入った。
 2〜3月、隣りの市営廃墟を「鋼板塀」で囲うらしい。
 さっそく、フェンスの撤去作業が始まった。
  *  *
 2月に鋼板塀の支柱を組み立てる工事(足場の生コンなど)を行い、3月に鋼板塀を取り付ける計画。
 ネコのエサ場のフェンスが撤去されて、夜間は出入り自由になった。
 今夜から、エサやりオバサンはどこにエサを置くのか。
 工事が始まると、野良たちはどうするのか。
 2月はエサは貰えるだろうが、3月に鋼板塀で囲われると、出入りは可能なのか。エサ場はどうなるのか。
 その後、野々村竜太郎の生家は解体されるのか。
 これから春にかけて、野良猫戦線、激変の様相である。
 一杯飲んで、本日は早寝。
 深夜にゴミ出しを兼て見物に行くことにする。

1月30日(火) 穴蔵
 2時に目覚め、プラゴミ出しに出る。
 ネコのエサ場を見るが、何もなし。エサやりオバサンが深夜に来たのかも不明。むろん野良も見当たらず。
 どうなるのか。
 終日穴蔵。
 時々ニュースを見る。
・桐島聡を名乗る男。
 住居は藤沢駅の南500メートルほど、江ノ電脇のボロアパートに起居していたらしい。
 死ぬ前はやったことを「後悔している」といったというが、本当か。
 窮民革命やるつもりが、自分が「窮民」になったのだから、反省するより、初心貫徹すべきではなかったのか……などと愚考する。
 そもそも大田竜(なんて誰も覚えてないか)という男がバカ(と自称していた)で、(東アジアの)窮民がかわいそう、が、(人間に搾取されている)バクテリアかわいそうに変わっていった、おかしな男だったからなあ。
 桐島はこんなの信奉したことを後悔して死ぬべきであった。

1月31日(水) 穴蔵
 終日穴蔵。
 曇時々小雨が降る陰鬱な日である。
 しかし、面白いニュースの多い日であった。
・昨夜19時頃、近所のクリーニング屋で強盗事件発生。晩酌時である。気づかなかった。
 調べると、豊崎1丁目で、豊崎長屋の隣りであった。少し距離あり。
ビッグモーターの本社「環境整備推進委員」蒲原敏之(51)を逮捕。川崎店前の街路樹伐採を指示したらしい。
 はて…ビッグモーターの三悪人といえば、ボンクラ息子の兼重宏一と伊津美哲士、大塚昇二のはずだが、ここから逮捕者はまだ出てない。蒲原逮捕は「第一歩」と思いたい。
・神戸地裁姫路支部で松尾留与(53)の被告人質問が行われた。
 わが生活圏の殺人者4人の最後のひとりである。甥っ子放火殺人、わたくしとは扇町公園ですれ違った。
 同居する妹夫妻に「あいつらの一番大切なものを奪って、なぜ俺がやったかをわかってもらうため」と発言。
 求刑はまだ? 判決は2月15日の予定。
イーロン・マスクがALS患者で「人体実験」、使用したチップを「テレパシー」と命名した。
 このネーミングはなあ……
 マスクの「SFを事業化する」能力は凄いと思う。SF好きであつたことも間違いない。
 スペースX、電気自動車、真空チューブ、人工知能……事業化能力は天才的と思う。
 しかし、そのSF理論というか背景の「思想」は極めて胡乱に思える。
 今回の発表についていえば、BMIは世界中が研究しているが、最初の?人体実験をやって「テレパシー」と命名した感覚がいかがわしい。
 話題にはなろうが、これはSFの1ジャンルを通俗化してしまうことにならないか。
 長くなるからこれ以上は書かないが、イーロン・マスクはSFにとって決してありがたい人物ではないと思うぞ。
 残るはタイムマシンだけか。
 はばかりながら、わたくしは、世界で最初にタイムマシンを事業化した。
「時速1時間未来行専用機」で繊維物性も計測できるマシンである。マスクに負けへんで。


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