『マッドサイエンティストの手帳』729

●マッドサイエンティスト日記(2020年5月前半)


主な事件
 ・(新型コロナ禍により)穴蔵の日々
 ・緊急事態宣言延長(7〜31日)
 ・大阪モデル7日連続達成(14日)


5月1日(金) 穴蔵
 目覚めれば5月であった。
 お上のいいつけを守って終日穴蔵。
 3度の食事以外、寝て過ごす(じっさい机に向かっているのがしんどくなってきた)。
 緊急事態宣言が延長の気配である。
 実家書庫に行けず、図書館は休館、困ったことだ。
 ちょっとしたことが気になって、さっぱり進まず。分断書斎は不便である。
 午後のベランダ、26℃で、快適な季節になった。
 理事長職が終わったら、生活の拠点を播州龍野に移そうか、迷うところだ。
 季節はよくなったが、播州龍野はWHOのマークが這い出してくる可能性があるからなあ……
 などと迷ってるうちに、たちまち夕刻。
 専属料理人の並べた数皿(メインはスペアリブ)で、ビール、中本酒店推奨格安馬鹿旨ワインを少しばかり。
  *
 やや、ボンクラ息子その1がメールしてきた。明日帰省する?
 オンライン帰省だという。

5月2日(土) 穴蔵/ボンクラ息子の帰省
 5連休の初日である。
 初夏、9時には27℃になった。
 昼。ボンクラ息子その1と配偶者が「帰省」するという。
 12時にZoomで横浜から帰ってきた。
  *
 専属料理人が寿司を用意していたが、向こうはケンタッキーらしい。
 軽くビール飲みつつ、小一時間雑談。
 便利になったものである。
 夜のニュース。
 金三胖が登場。人騒がせなやつだ。連休の楽しみがなくなってしまった。
 一杯飲んで早寝する。

5月3日(日) 穴蔵
 早朝晴れていたが、だんだん雲が厚くなっていく。
 お代官様のいいつけを守って終日穴蔵にこもる。
 夕刻のニュースでは、緊急事態宣言は5月末まで全国的に延長されるらしい。
 図書館も5月中休館だろう。
 さすがに3ヶ月原稿が書けないのはつらい。
 播州龍野の実家書斎行きをどうするか。1時間半も電車に乗るのは嫌だしなあ。
 いずれにせよ、理事長職にある間は、この集合住宅から感染者を出したくないのである。
 通常集会ある5月18日(月)が区切りとなろう。あと2週間のしんぼう。
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 週刊新潮5/7・14号の片山杜秀氏の巻頭エッセイの要約。
 日清戦争で前線兵士に「恩腸の煙草」が贈られた。
 持たざる明治国家は気前よく振る舞えないので、天皇の箔を付けた品で安く誤魔化す習慣を持った。
『雪の進軍』に歌われている。
「儘よ大膽一服やれば 頼み少なや煙草が二本」
 アベノマスクはこの変種ではないか。
「皆人の心の限りつくしても 頼み少なや布切れ二枚」
 ……鋭い。

5月4日(月) 穴蔵
 早朝の小雨が7時には曇天、だんだん晴れてきた。
 本日も穴蔵にてボケーーーーーッと過ごす。
 運動不足である。ひと月ほど、ほとんど歩いていない。
 昼過ぎ、重量物の買い物(主にビール)を引き受け、お代官様のいいつけ(外出自粛)を破ることにする。
 せっかくなので、人のいない道を選んで梅田貨物線の工事状況を見物しつつ、1時間ほど散歩。
  *
 新緑の里山を歩く。
 6,000歩ほど歩き、ビール買って帰館。
 と、オキシタケヒコさんから電話、徳島産の小夏(日向夏)を届けたいという。
 ありがたや。
 1時間後にオキシさん着、(このご時世なので)マスク着用、愛車FIATを挟んで10分ほど立ち話。
 SF関係もネット上のやりとりが主流のようで、ネット宴会など、コロナ禍が収束しても、こちらが主流になりそうな。
 いただいた小夏は、半分は専属料理人が半日かけてマーマレードに、残り半分は、朝の柑橘と夜の酎ハイに消費される予定である。
 ということで、夜はさっそく粗食5皿ほど並べて、酎ハイをいただく。
 安倍の会見。
 緊急事態宣言が5月末まで延長、ただし5月14日に見直し?
 いずれにせよ、おれの場合は5月18日(月)の集合住宅の総会(通常集会)までは、穴蔵逼塞生活を継続するしかないようである。

5月5日(火) 穴蔵
 子供の日であった。
 天気がよく、ベランダは28℃になった。穴蔵を夏モードに変更する。
 専属料理人洗濯婦が毛布やシーツ、布団カバーなど大量に持ち去る。
 いつの間にか床に積み上げた本が増えたなあ。3年前には、本は書架に入るだけと決めたはずなのだが。
 播州龍野の書庫へ送っても、今のコロナ状況ではどうしようもない。
「新しい生活様式」
 テレビで緊急事態宣言解除後の生活様式を提案してくださっているが、おれの場合、この10年ほどの生活スタイルとほとんど変わらないなあ。
 感染対策の項の「発症したときのため誰とどこで会ったかをメモにする」なんて40年つづけとるよ。
 ただし「食事」の項の「対面ではなく横並びで座ろう」は(家庭内では)守っていない。『家族ゲーム』やれってことか?
 どうでもいいことだが、やたらテレビに出てくる尾身茂というおっさんに、誰かマスクの仕方を教えてやらないのか?
 絶えずずり落ち、鼻の穴が露出する、右手でつまんで引き上げる、この繰り返し。顔面構造の問題ではないと思う。気になって、何をいってはるのかわからなくなる。マスク着用の基本も知らない「専門家会議の副座長」が何か提言しても、説得力皆無ではないか。座長出せ! と言いたくなるぜ。
 ……などと愚考しつつ、テレビはつまらないのでやめ、午後はネットで無料配信中の情報をゲットしたので、GYAO!で『ガメラ 大怪獣空中決戦』『ガメラ2 レギオン襲来』を見る。後者に官房長官役で徳間康快社長が出てはるのは知らなかった。
 たちまち夕刻。
 専属料理人の並べた粗食数皿でビール。
 あと、小夏のマーマレード乗せたパンでワイン少しばかり。
  *
 昨日の記述「半日かけてマーマレードに」は間違いで、1日半であった。
 皮を剥いて実を取り出すのに手間がかかり、下ごしらえして、ひと晩置いてから煮込むのだそうで、その手間はイチゴジャムの比ではないらしい。
 ありがたくいただく。うまっ。

5月6日(水) 穴蔵
 GWの最終日である。
 ボケーーーーッと穴蔵で過ごす。
 アタマを使わずにいることに慣れてしまった。Q状態である。これはやばい。
 運動不足が影響しているのであろう。
 午後、タカセ市場へ買い物の当番で出るついでに、1時間ほど人のいない道を選んで散歩する。
 淀川堤を歩きたいが、工事で6月末まで、十三大橋〜長柄橋の間は立入禁止である。
 豊崎神社に参拝。
  *
 「少しは原稿が書けますように」
 あと本庄公園からタカセ市場に回り、酒瓶2本をぶら下げて帰館。
 6,000歩ほどになった。

5月7日(木) 穴蔵
 初夏である。
 GWが終わり、緊急事態下なれど、世間は動き出しているはず。
 人出が増えるだろうから、こちらは自粛継続、終日穴蔵にてボケーーーーッ……のつもりが、そうもいかず。
 集合住宅関係の雑事が断続的に入る。
 自転車のラベルごまかしがある(月50円のこと)、隣接地の木の樹液がクルマの屋根に落ちる、そんなレベルの「難題」が数件。勘弁してくれよ。
 理事会(集会)をやらないから、全部こちらに来る。
 あと10日のしんぼうである。
 晩酌だけが楽しみ。
  *
 ひと月遅れのスーパームーンを眺めつつ、野菜バークなど数皿で中本酒店推奨ワインを少しばかり。
 モンク師匠がよろしいなあ。
 早寝するのである。

5月8日(金) 穴蔵
 初夏である。
 終日穴蔵。
 不調である。運動不足というよりも、精神的なものが大きい気がする。
 もともと部屋に閉じこもって過ごすのは体質に合っているはずだが、お上から要請されての逼塞と、いつでも出歩けるが面倒で出ないのでは、気分がまったくちがう。
 むろん、いいつけは守る。
 しかし、机には向かっているものの、気力がわいてこない。
 たちまち1日が過ぎる。
 困ったものだ。

5月9日(土) 穴蔵
 曇天である。
 お上のいいつけを遵守して、終日穴蔵を出ることなし。
 少しは仕事もするのであった、いと少なしを。
 たちまち夕刻。
 晩酌だけが楽しみである。
  *
 専属料理人の並べた手羽焼き、翁豆腐、小夏のカルパッチョ(これは絶品!)などでビール、白ワイン。
 早寝するのである。

5月10日(日) 穴蔵
 曇天である。
 お上のいいつけを遵守して、終日穴蔵を出ることなし……のつもりだったが、禁を破って、午後、中本酒店に格安ワインを買いに出る。
 公園を横断するだけで、10分ほどだが、お代官様、ご容赦くださりませ。
  *
 若葉が繁って公園の「ニャロメの木」がだんだん形を整えてきた。
 秋までは楽しめるな(しかし、電線、なんとかならんか)。
 ドタマ働かず、何もできないまま、たちまち夕刻。
 一杯飲んで早寝するのである。

5月11日(月) 穴蔵/ウロウロ
 夏である。
 6時前から直射光が射し込み、室温たちまち28℃になった。ありがたい季節である。
 うへ、昼前に納税通知書が届いた。こういうのは早いなあ。猶予も減免措置も情容赦もなし。
 ネット振込はできず、コンビニで振り込むには現金なし、金融機関の窓口まで出向かねばならぬ。
 午後、お上のいいつけに背いて、お上から命じられた納税のために、外出する。
 矛盾を感じるなあ。納税なんて不要不急だろうし。
 などとぼやきつつ、重装備で、久しぶりに梅田まで歩く。
 45日ぶりかな。
 デパート、商業施設、紀伊国屋、三番街、すべて休業で、人通りはほとんどない。
  *
 14時のヨドバシ北側。競馬も休みなのであろう。
 これなら散歩コースに入れてもいい気がするが、いやいや、あと1週間は自粛しなければ。
 理事長の任期中、集合住宅に感染者を出してはいかんのである。
 40分で帰館。

5月12日(火) 穴蔵
 晴。夏日である。
 終日穴蔵で過ごす。
 このところ書架で目についた本を再読している(本棚を整理していないのは正解であった!)。
 本日は大山史朗『山谷崖っぷち日記』を読む。
 本書が開高健賞を受賞した時、著者は53歳、山谷歴はバブル期と大不況をふくむ12年、その前に釜ヶ崎歴が4年ほどある。
 やはり胸に迫る。「私は人生に向いていないのだ」と自覚した著者の現代版「方丈記」である。
 今回読み返すと「ひきこもり生活」に関して教えられるところが多い(ただし、ドヤは相部屋でカーテンで仕切っているだけだから、おれは音と臭いに耐えられそうにないけど)。
 大山史朗氏はどう暮らしてはるのだろう。
 今72、3歳のはず。生活保護生活に入っておられればいいが(本人の予言では「食べ物を漁る」方を選びそうな)。
 旧釜ヶ崎はインバウンドがなくなって、今どんな様子なのか気になる。
 まして山谷となると、コロナ禍前の様子も知らないから、見当もつかない。

5月13日(水) 穴蔵
 穴蔵生活がつづき、睡眠が不規則になった。
 午前3時に目が覚めて、そのまま起きる。室温27℃で、着替えせずに過ごせるから助かる。
 晴。夏日である。直射光が射し込み、5時30分には30℃。いい季節になった。
 寝たり起きたり。
 山本夏彦『完本 文語文』と里見トン(←出てこない)『文章の話』を読む。
 たちまち夕刻。
 専属料理人が小鉢を色々並べた。
  *
 翁豆腐、そら豆、ほうれん草、アボガトのクリーム煮?、牛肉オニオン、肝など炒めたん、などでビール、れんとの酎ハイ。
 早寝。

5月14日(木) 穴蔵/中央図書館
 晴。夏日である。
 市立中央図書館からメールが来た。申し込んでいた資料の用意ができましたという。
 休館になる直前に申し込んでいたもので、忘れ去られたのかと思っていた。
 地下1階のカウンターだけ開けて、借り出しだけできるらしい。
 ちょっと迷うが……2、3日中に休業要請が解除される可能性もあり、そうなると混みそうだから、今日行くことにする。
 地下鉄はやめ、久しぶりに自転車。
 中津から大淀中に出て、あみだ池筋を延々と南下、白髭橋を右折して新なにわ筋へ。
  *
 道はガラガラである(↑左のクルマ1台は路肩に駐車しているもの)。
 西長堀の中央図書館まで約30分。
 地下カウンターに客2人。しんとしている。5分もかからず、2冊借りだして帰路につく。
 ほぼ同じコースを走って、往復1時間ちょっと。
 久しぶりにいい運動になった。

5月15日(金) 穴蔵
 午前3時に目覚め、少しは仕事。
 未明晴、明け方薄曇、午後はだんだん雲が厚くなる。
 雲の変化を眺めつつ、終日穴蔵。
 新コロナ感染……「お国のお上」は大阪府・兵庫県ともに緊急事態宣言継続、「大阪府のお上」は大阪モデル7日連続達成で、明日16日から休業自粛要請の段階的な解除を行うという。
 お上にひたすら従順なおれとしては、どちらに従えばいいのか。
 ここは指示の具体的な「大阪府のお上」の方に従うか。
 「外出自粛」から「(出てもいいが)人と接するな」にかわったと解釈する。
 散歩できるかできないかの違い。これは大きい。
 もともと人のいない道を歩くのが好きだから、人と接しないことは、長年のわが生活スタイルなのである。
 夕刻のテレビでは、「段階的解除」は明日からというのに、天神橋筋商店街に早くも買い物客が浮かれ出ている。
 大阪もアホが多いからなあ。
 月末(2週間後)の感染者数が楽しみである。


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