『マッドサイエンティストの手帳』163
●第39回日本SF大会「Zero-CON」
2000年8月5日〜6日 パシフィコ横浜
今世紀最後のSF大会、大赤字で有名になった1992年のハマコン(第31回)以来の横浜、同じ会場でござりまするがな。
8月5日(土)
新大阪始発8:17のひかりで、新横浜下車、横浜線で桜木町。ここから徒歩15分でゼロコン会場入り。ハマコンの時は、駅とパシフィコの間にはなにもなかったと思う。8年間で高層ビル林立、ビルをつなぐ歩道を伝っていけばパシフィコまで行けるわけだが、わしゃ、この種の人工的環境が好きになれない。きれいなショッピング街を作ったから汚さないような遊びなさいといわれてもなあ。安くて旨い店もなさそうだし。
アキノコンのリゾートホテルよりはましか。
徒歩圏にラーメン屋がない場所は性に合わない。
と愚痴をこぼしつつ12時ちょっと前に到着、定位置のディーラーズルームへ。なんと草上仁ファンクラブ「まぶだちの会」の隣である。天ちゃん・天羽孔明がショートショート入りウチワを売っていて、優秀なセールスマンであることは認めるが、かなり騒々しい。ソリトン側へはフォイル氏が加勢にくる。……わしとフォイル氏がいると必ず「世にも暑苦しいナントカ」が現れるジンクスがあるのだが、ゴジラは横浜には出現しなかった。まあ、あの声(**者の**声というやつで、約百メートル離れて日常会話を交わせるのである)に比べれば天ちゃんの口上など清冽なボーイソプラノみたいなものである。
都築由浩さんがくる。手分けして田辺英二氏の「ロケットシステム」委託販売を手伝う予定だったのが、都築コーナーで最初の一時間で完売してしまったという。……まあ、この本は「名著」といっていい解説書で、SFファンの目の高さは誇ってよいという気分になる。(入手方法については後日案内の予定。)
3時間ほどボケーっと「店番」している間、今年は横浜だけに、ずいぶん久しぶりの方々に会う。
珍しくも伊藤典夫さんと挨拶。
なんとわが兄の部下になる重光さんが出現、歌之助の会以来か?
その他、思い出すままに、草上仁さん。神林長平ご夫妻(「獲りましたか?」「頂きました」…何のことかわかりますね)。なんと浅倉久志さん。横山信義さん。
斎藤英一朗さん。牧眞司さんと星敬さん。田中啓文さんと小林泰三さん。カジシンが突如出現(日帰りという)それに「永遠の森」が出たばかりの菅浩江さん。
その他、通りかかる人と片っ端からミーハー的記念撮影を頼むものだから、ご近所から、このコーナーはどうも緊張していけないとの声もあり。
午後3時から、前野「いろもの物理学者」博士の恒例の企画「ハードSFのネタ教えます」にゲスト参加。……これは「トンデモ論文の世界」といった趣向で、正式には「第4回」ということだが、ダイナコンなどでもあったのではないか、ぼくはもっと参加しているような気がする。……話題は当然ながら「光速の300倍」に集中したが、どうやらこれは、報道によってセンセーショナルな話題になったものの、原論文はそれほどのものではないという。(結局ぼくもよくわからんまま…)
1ミリで重なる五次元宇宙の方が相当すごい。「裸天国ではないか」(谷甲州)……とはまた懐かしいCMネタである。
恒例の玉突きタイムトラベルまで……。
参加したのは、他に菊池誠博士(中座)の他、小林泰三、田中哲弥、堺三保、谷甲州の各氏。
ディーラーズルームで逢った珍しいおふたり。
とつぜん椎名誠さんが出現、前のロビーでサイン会だったらしい。SF大会ははじめてという。「アド・バード」の受賞以来。
そして夕方出現したのが「クリスタル・サイレンス」の藤崎慎吾さん。初対面である。意外にも精悍なスポーツマン・タイプ。ボクサーみたいな印象である。SFやジャズの話、いずれ新宿のライブハウスで逢おうということになる。
夕方、星雲賞授賞式を「取材」しようと思っていたが、場所がわかりにくく時間を勘違い、表の通路で、柴野ご夫妻から「先ほど終わりましたよ」と教えられる。
難波弘之さんのライブまで時間があるので、柴野ご夫妻と軽い夕食、わしだけビール2杯。
難波弘之ライブは録音・写真撮影禁止なので、下のはロビーで会った時の記念写真。
「NIGHT OF WONDER」、難波さん、約3月かけて構成したという。1時間ちょっとのライブだが、この凝った構成は「長編」一編に相当する手間がかけられている。
なんといっても「鉄腕アトム」が抜群。ライブでは「野獣王国」神戸のチキンジョージのライブで聴いて以来である。ちなみに難波さんのステージ衣装は「細かい花柄のプリント」であり、ぼくが難波さんにファッションにつていインタビューしたのは12年前。その時の発言のままであるのに感心する。(なぜぼくがファッションに関するインタビューを? と不思議であろうが、まあ、趣味で作ったコラムページがあったのである。小松左京にはじまり、桂枝雀、杉浦茂、山下洋輔、わかぎえふ……と奇妙な連載であった)
午後8時終了、関内のホテルにチェックインのあと、地下鉄で蒔田の旅館「松島」へ。静かな住宅街にある旅館で、ここが宇宙作家クラブの合宿所。ここの座敷で宴会。約20名。……野尻抱介さんが「太陽の簒奪者」で星雲賞短編部門を受賞、急遽「祝賀会」なにったもの。
宮武一貴氏製作によるV2モデルが贈られた。
午後10時半頃で中座……もはや徹夜は無理な年齢なのである。
8月6日(日)
午前9時半に会場到着、エスカレーター横で色紙を頼まれたのだが、ぼくのサインはひとりでは迫力がなんので「同乗者」を頼もうとしたら、ちょうど大宮デンスケさんが来る。つづいて山田正紀さん。写真を撮影していたらヨコジュンに長山靖生さんと、ずいぶん賑やかになった。……サインを集めるノウハウはエスカレーターを上がったところで網を張ることある。
ディーラーズルーム、ちょうど午前10時前で「完売」、早々と撤収である。
昼まで、「ファーストコンタクト・シミュレーション」の部屋へ。大迫公成氏が急用で欠席のため「神様」役のピンチヒッターである。
今回の設定は、初心ともいうべきラインスター「最初の接触」パターンである。2部屋に分かれたそれぞれの宇宙船。相互には限られた情報しか送れず受け取れず……。乗員の意見が分かれた時の最終決定役が「神様」なのである。
結果は……「温厚な神様」は種族にとっては悲劇である。相手側の「神様」野尻抱介によって、見事に「寄生」されてしまう結末となった。さすが「簒奪者」、こちらには「最悪の接触」、相手には「最善の接触」……
翌日の勤務、書斎の片づけなど、重労働が待っているので、昼までで帰ることにする。……新横浜14:55のひかり。子供が多く騒がしく混み合っているが、これが京都を過ぎたあたりで停電、静かに停車してしまった。地震の影響らしい。停車1時間20分ほど。……1時間40分遅れで新大阪に着いたら、トラブル後、最初に到着したひかりであったらしく、降りたとたんにフラッシュ。毎日新聞らしい。載せないでくれよな。……ホーム雑然、おなじみ「駅員にくってかかる乗客」も散見する。あっちの方を撮影しろよ。
と、まあ、やっぱり疲労するSF大会であった。
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