HORI AKIRA JALINET

『マッドサイエンティストの手帳』158

●マッドサイエンティスト日記(2000年6月後半)


主な事件
 ・生涯最悪の日……というほどではないが……(19日)
 ・おっそろしい誕生日(21日)
 ・成長したドラマー・永田くんを聴く。(24日)
 ・タイムマシン(本物)出品者の研究はまさに渾身のレポートだ。(30日)

2000年

6月16日(金)
 2時に目が覚めてしまう。ふだんより2時間早い。親父狩りを警戒してこのところ早朝散歩は控えていたが、運動不足と空腹感から、久しぶりに天五まで自転車で往復。午前2時台はまだ早朝とはいわないのかな。
 朝まで机に向かう……ものの、たいした仕事はできず。
 パソコンの遅さにちょっとストレスを感じ始める。120MHzだからなあ。
 7時過ぎに出社、終日ボンクラ仕事。
 夕方、会社から徒歩5分の安いので有名なS社大阪営業所へパソコンを見に行く。CD−RWとDVD付きの本体のみ発注。メモリーは128にする。4週間ほどかかるらしい。売れておるのだ。

6月17日(土)
 終日雨である。終日ごろ寝雑読。脳内にカビが生えたようで、頭がまるで働かない。
 どうもここ数日気分が重い。梅雨のせいだけではないような。
 しばらくライブを聴いていない。久しぶりにニューオリンズ・ジャズを聴きたくなって、夜、出かけるかどうか迷うが、雨が本格的になりやめる。老化であろう。

6月18日(日)
 休日だが、4時自然に起床。
 気分がのらないままごろ寝雑読していたら、昼、知り合いの「訃報」。先日から気分が重かったのは、この予兆か。そうは思いたくないが。
 終日、気分重い。

6月19日(月)
 あまり眠れず、2時頃から眠り断続的。いかんなあ。
 早朝出勤、ボンサラ仕事をしていたら、夜中に竹下が死亡したというニュース。ふーん。この竹下の家系というのも「呪われた」としかいえない雰囲気があったなあ。
 などと思っていたら、回ってきた「人事異動」の通知を見て仰天。わしの名前が載っていて、6月23日付で「●●」を命ずとなっているではないか。本人、まだ正式には聞いていないし、書類上、何の手続きもしていないぞ。「俺に関する噂」じゃあるまいし。……あまりにもええかげんなので抗議する気にもならない。かわりにここに書いておくことにする。
 ※会社の誰か。ここを読んだら総務部のY部長A課長M課員に「ご注進」しておくように。わしはちょっとばかり気を悪くしているぞ、と。お伝えください、ネズミ小僧くん……がいたらの話だが。※
 夕方、同窓のIくんから電話。昨日の「訃報」の主と共通の知り合いである。やっぱり気分が重いらしい。
 帰りに梅田で会う。やっぱり気分が重いらしい。ビール飲みながら昔の話などぐじゃぐじゃ。
 気分を変えて、ブギでも聴くかと、サントリー5へ。月曜は小川理子のピアノと思っていたら、なぜか混み合っている。本日、月1度ある「ぼんちおさむのヴォーカルの日」であるという。しまった……前に一度、へたくそなのを聴かされて懲りているのだ。が、カウンターに座ってしまったのでいたしかたない。カラオケの出来損ないみたいなのを1ステージ聴かされて、そそくさと逃げ帰る。相変わらずへたっくそ。耳が汚れた気分である。こんなのを聴きたがる愚民が大阪には棲息しているのだなあ。おさむ死ね。
 本日、最悪の日であるなあ。

6月20日(火)
 蒸し暑く、眠り断続的。いかんなあ。
 ボンサラ、誠実に手抜き仕事。つまらん日である。

6月21日(水)
 56歳の誕生日である。この歳になるとおめでたいともいえず、特別の意味が生じる日でもある。
 帰宅すると、ネットで申し込んでいた森山威男カルテットの新CD「take 0」が届いている。ワインを飲みながら一聴、やっぱり森山さんは凄いなあ。ぼくとほぼ同年(森山さんが半年ほど若い)でありながら、若いメンバーとともに、このところ本格的活動再開である。かくあらねばならんのだなあ。

6月22日(木)
 30年近く前からちょくちょく利用していた丼池の紳士服屋から「50何年やってきたが廃業する。どの製品もすべて、スーツ○○千円、上着○○千円、ズボン○○千円の均一料金で処分しますとの案内。昼行ってみると、別に店じまいの表示もせず、普通に営業している。……ほんまかいなと訊いたら「顧客の方に案内しました。一般には来月からです。どれでも選んでください」
 ご時世であるなあ。もうあまり背広は着ないつもりなのだが、情にほだされて2着。

6月23日(金)
 よその会社の話である。親しい知り合いが、こんな話を教えてくれた。
 「堀さん、まあ聞いて下さい、世の中にこんなアホな話がおますか。うちの会社の大きな会議室に大勢の管理職が集まったんですわ。こんなにおったんかいないう数でっせ。なにやるのかいうと『管理職研修』いうんですわ。今日と明日の2日間。慢性赤字でカツいれるんやそうですけど、なんでも『業者』に丸投げの研修でっせ。今ごろになって能力アップか意識改革か知りまへんけど、そんなもんが役に立たんこと、あの年になってまだわからんのですかなあ。あみだくじ大会をやるんかと思とったんですよ。クジで外れた半分が即刻辞めるとか。……まあ、今日一日はうるさいのがおらんし、仕事ははかどるし、何の支障もないし、ということは、あの部屋のは全部いらんのでっせ。不要の人間が何十人も集まって、講師にお金払ろうて、何してまんのかなあ……」
 いやはや、たいへんな会社もあるものだなあ。

6月24日(土)
 朝10時、梅田のデパート開店を待って予約していた某店の折詰を受け取り、10時15分大阪発の新快速で姫路経由、播州龍野の実家へ「専属料理人」と。ほぼ正午に到着。
 前夜、掛川まで来ていた兄など、兄弟姉妹が揃う。
 母が出した2番目の歌集の出版祝いである。近くに気の利いた店がなく(中華のみ旨い店はあるのだがちと重い)大阪から「料亭の折詰」を運んだわけである。……と、到着後、「専属料理人」がでかい荷物を持っていると思ったら、冷却剤を入れた「カツオのたたき」をはじめ、オードブルなど10品目ほどが出てきた。朝からこんなの作っておったのか。それなか「折詰」は小さいのでよかったのだ。
 が、ともかく、座敷で久しぶりに宴会。といっても、接待疲れという兄が飲まないので、ビールがぶ飲みはわしひとりである。
 夕方帰阪。
 姫路が「ゆかた祭」とかで混み合っている。こんな祭りあったかな?
 昨夜は暴走族が暴れたとかの報道あり、タクシーのガラの悪さといい、広島に並ぶ雰囲気になってきたのかなあ。喧嘩まつりは昔から有名だし。……筒井倶楽部の卍さんと結婚したソリトンの才媛・由梨さん、えらいところへ来てしまったと怯えているのではないか心配になる。

6月25日(日)
 一応、選挙に行く。ガラクタ市みたいなものか。買いたい品がならんでいない。どれも不要品だと思うが、なにか一品は買え。……紙幣を破り捨てる方がましか。投票はしたけれど、いい気分ではない。
 終日ごろ寝雑読。

6月26日(月)
 朝刊が遅れて5時過ぎに届く。
 選挙の結果。2紙比較。「自公保激減/安定多数確保」とちょうど反対の見出しのと。どっちが買ったのか。両方負けたということか。どっちもが「負け惜しみ」をいえる結果なんだろうな。栃木のバカップルが落選が唯一面白いニュースである。
 終日、ボンサラ仕事。

6月27日(火)
 夕方、仲間内の早めの暑気払い。某タクマ相談役・若村さん、坪井嬢、かんべむさしとうちの「専属料理人」。
 新地の穴蔵のごとき「狸穴」という店でタヌキに囲まれて食事。アワビ使用の狸穴コロッケがうまい。
 off
 あと、おなじみサントリー5へ。月末火曜日で、サウスサイド・ジャズバンド出演の日である。と、ドラムがレギュラーメンバーとちがう。長いソロもまじえてなかなか……とよく見ると、ラスカルズの名手・木村陽一さんの弟子「永田充康」くんではないか!
 何年ぶりか…わが抜群の記憶力から、1995年1月3日の夜、ふつうは営業しない日なのにファイブが開いている。この時、木村さんが「弟子」だと紹介してくれたのが、まだ二十歳ちょっとという印象の永田くんだった。何曲か叩いたが、まだ緊張気味であった。すっかり腕を上げているではないか。…5年前の印象を話したら、よく覚えていてくれた。若い演奏家がトラディショナル・ジャズを継承していくのは嬉しい限りだ。
 off off off
 2ステージまで聴いて、記念写真のあと、22時頃帰宅。

6月28日(水)
 夕方、20年以上係わっている「業界」で小さいながら商社を経営している某田さんと相棒の3人で会食。この業界の「世界情勢」について意見交換。……ぼくの夢は、リタイアの後、何年かポルトガルで生活しながら、多少この「業界」に係わることであったが、これは難しそうだ。インドネシアも無理。シンガポールは本気で仕事をするつもりでないとだめ。……うーん、「仕事」は忘れてオーストリアでのロングステイがいいのかなという気分になってくる。
 それにしても、世界各国に共通の知り合いが多いのにあらためて驚く。
 これにSF人脈を加えると、まあアフリカ、ロシア、北朝鮮を除くと、身元保証に困ることはないか。アルゼンチンにもいSTSで知遇を得たことだし。ははは。

6月29日(木)
 「定刻」の午前7時半に出社したら、なんだか騒々しい。あ、株主総会の日であったか。総務の連中は早くから来て準備しているわけである。
 例によって絵に描いたようなシャンシャン総会。
 一般にいわれるのは「リハーサルにおける意地悪質問」がいちばん面白いそうである。高杉良が書いている「リハーサル」は大企業においては本当らしい。が、つまらん会社になると、「役目として意地の悪い質問者役」を演じた社員をうらむボンクラ社長もいたらしい。こうなると、昔、「すれ違いドラマ」の地方ロケで、憎まれ役の役者の食事がひとり分なかったといいうエピソードを思い出すなあ。宿屋の女中の嫌がらせなのである。ボンクラ社長のアタマの程度、煮たようなものである。

6月30日(金)
 先日、ヤフー・オークションでタイムマシン騒動があった。この騒動に関して、「タイムマシン(本物)を出品した人物について考える」というウェブが開設されている。断片的な情報で全体像がわからなかったのが、見事な調査力と「Q&A」の整理で、ははあ、こういうことだったのか。この情報収集力と分析力はたいしたものだ。……以前、ヨコジュンが書いた「1時間未来へ行くのに1時間かかるタイムマシン」というのを思い出したが、いやはや、これはその上を行く出品者の逸脱ぶり。それらの記述が素晴らしいレポートである。まさに「渾身の報告書」で、この騒動のレポートというだけでも十分面白いのだが、さらに面白いのがこの発明者というか、出品者の人物像考察部分。現在3パターン提示されているが、新時代のマッドサイエンティスト像を考える上でも、これは貴重な論考である。ぼくの「好み」は第1パターンだが、「ガンダム通」というのがなあ……。さらに精進して研究成果を報告してください。(←これ、タイムマシンの発明者にいっとるのではありませんよ。『タイムマシン(本物)を出品した人物について考え』ている研究者への激励です。)
 それにしても、へんな騒動であるなあ。


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