『マッドサイエンティストの手帳』157
●最近聴いたCD2枚
森山威男の新譜と山下洋輔ゲストのジャズヴォーカル
『take 0』久しぶりに森山威男カルテットの新しいCDが出た。
これは「テイク・ゼロ」と読むが「タケオ」でもいいそうだ。
田中信正(p)と音川英二(ts)参加後の初CDである。
板橋文夫のピアノが田中信正に、井上淑彦のテナーが音川英二にと、急激に若返った。森山さんのドラムは基本的には変わらないが、若い田中・音川さんの新曲が増えたことで、曲想が拡がった印象。……どういうわけか、8曲目のおなじみの曲が「……SECRET TRACK……」となっているので、曲名は伏せるが、田中信正のピアノがリリカルで、好みをいえば、ぼくはこのピアノの方がいいなあと思う。たぶん当分はこのユニットでのライブが続くことになるのだろう。楽しみなことである。
森山威男ディスコグラフィーに追加しました。
CD入手報もそこからリンク。
さて……
先日、朝日新聞の夕刊だったと思う、ちょっと変わった特技などを持つサラリーマンを紹介するコラム。……ぼくも同種のコラムに紹介されたことはあるのだが……この記事はちょっと変わっていた。若いときに男性ジャズ・ヴォーカルとしてデビューしたが「ルックスに商品価値がない」(顔がまずいということか?)といわれて歌手を断念、エンジニアリング会社の「日揮」に勤務、世界を股にかけての活躍の後、定年退職。ジャズへの情熱が再燃して、このたびジャズ・ヴォーカルのCDを自主製作。ゲストに旧知の山下洋輔氏も何曲かバックをつとめているという。
おれは、こういう話は好きである。年齢からいっても、ものすごく共感を覚えるのである。コラムにはCDの写真も紹介してある。
記事を切り取って、なんとか入手できないものかと考えていた。
それが、
『TAKASHI KAMIYAMA “ALLEGIANCE”』このCD、ちょっと信じがたい事情で入手に成功した!
うーん、したがってあとは自慢話みたいになるなあ。
感涙もの。これは隠れた名盤になるだろう。
学生時代にコンテストで優勝、しかし「ルックスに商品価値がない」(この発言は渡辺美佐であることが判明)で、水原弘らと共演しながらも、36年のサラリーマン人生(わしが31年ちょっとだから、このすごさがわかる。)海外生活14年、しかもその間、ジャズは忘れていない……。
こういう「年季」が歌に漂っている。ある年齢にならないとこのよさはわからんのではないかと想像するところである。日本の男性ジャズ・ヴォーカルは、最近になって小林桂、TOKUという若手が出てきたが、30年以上、笈田敏夫しかいなかった。
上山高史がずっと歌っていたら歴史が変わっていたかもしれないとも想像するが、いやあ、これはこれでいいのではないか。ジャケットの写真を見ても、男の顔は履歴書であって、とうてい「商品価値のないルックス」には見えない。顔の価値は中身が作っていくものである。いずれは人間国宝並の輝きを帯びるだろう。
柔らかく張りのある発声、柔らかいトーン、スキャットのうまさなど、飲みながら聴いているとつい飲み過ぎてしまう名唱。
「BLUE MOON」から始まるスタンダード12曲、SPECIAL GUESTの山下洋輔さんは、たぶん6,7曲目の2曲と思うが「P.S. I LOVE YOU」が絶品である。
ええっと、このCD入手法については説明のしようがない。
ライブハウスなどで「上山高史」をリクエストし続けるのがいいのではないか。ぼくはぜひライブで聴きたい。
遅れてきた(復活したというべきか)大型新人である。
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