HORI AKIRA JALINET

『マッドサイエンティストの手帳』147

●マッドサイエンティスト日記(2000年4月前半)


主な事件
 ・中島啓江コンサート『夢で逢いましょう』(8日)
 ・桂歌之助百噺、93話まで(13日)
 ・山下洋輔コンサート「Round about BACH Night」(14日)
 ・sci-fiの行方はいかに?(15日)

2000年

4月1日(土)
 早朝5時頃から、ビデオ録画していた、山下洋輔さんのコンサート『もう一つの夜明け』を見ながら朝ビール。ボンクラ息子のゲームのために占拠されているから、こんな時間にしかビデオ鑑賞ができないのである。
 花粉が多そうで、終日ごろ寝、雑読。

4月2日(日)
 終日ごろ寝。

4月3日(月)
 4時起床、朝刊一面、小渕入院のニュース。脳梗塞とも。もうダメであろうが、「代行」が誰になるのか。小沢の歯ぎしりが聞こえてきそうなニュースである。
 新入社員の入社式があるのであった。有能/ボンクラ比はいかほどであろうか。
 知り合いの商社社長に中国事情について聞く。もう○十年の大ベテランだが、「中国で儲けた例は2件しか知りまへんで。会社転売とブランド品の横流し」という。もっとも。
 夕刊では、小渕、昏睡状態という。死ぬだろう。同情がカケラも湧いてこないのが不思議でもなんでもない。

4月4日(火)
 ボンサラ、誠実に手抜き仕事。つまらん日である。

4月5日(水)
 経費削減というわけでもないが、司法書士の仕事を自社でやるため、某法務局往復、まあ勉強にはなる。……ただ、すがやみつるさんから聞いたところでは、マンガ家は会社登記してもいいが、小説家に転業したら税務署が煙たがりだしたという。作家は売春婦と同じく設備投資なしの個人営業だからなあ。……つまり、勉強になっても役に立たない、というところか。
 夕方のニュースでは森喜朗が総理大臣……久しぶりに「顔を見りゃわかる」型のおっさん。ぼくは観相術は知らないが、「顔を見りゃわかる」派である。森の顔は、小渕の無能に「色」と「悪」が加わった印象。じつはこの顔に似た人物を知っている。間違いなく、無能、スケベ、無気力、ぼやきである。短期で終わってほしい人物だ。

4月6日(木)
 終日、近郊の事業所と法務局ウロウロ。ややこしいことである。

4月7日(金)
 早朝のひかりで新横浜、車中、久しぶりにピエール・ブール「猿の惑星」を再読。某講座のための課題作品である。ブールはSF作家ではないし、SFはまるっきりわかっていない。映画化にあたってのロッド・サーリングのうまさに改めて舌を巻く。
 夜、帰阪、そのまま阪急石橋。久しぶりに帰阪の友人と一献。

4月8日(土)
 快晴にして桜が満開。春の行事が集中してしまった日である。
 ・石毛直道先生の花見の会
 ・谷口英治さんが音楽を担当している「中島啓江コンサート」(神戸オリエンタル劇場)
 ・森山威男コンサート(岐阜・スタジオF)
 ・藤家虹二プレイズ・ベーニー・グッドマン(東京)
 ・岸ミツアキ+古閑みゆき・ライブ(姫路)
 全部行きたいところだが、いちばん最初にチケットを買った「中島啓江コンサート」にする。森山研としては、録音ライブに行けないのが残念だが、なにしろ神戸のキャンセル不可チケットを買った翌日にコンサート情報が入ったのである。
 昼間、自転車で会社へ。昼過ぎまで雑用。
 午後帰宅。書斎の、半年に一度の「机御輿」行事で、パソコンデスクをこたつから椅子に切り換える。例年より2週間ほど早いかな。
 「専属料理人」といっしょに神戸へ。
 17時〜オリエンタル劇場で中島啓江「夢で逢いましょう」。
 バックは、谷口英治(cl)、佐久間順平(g)、佐瀬正(b)、江草啓太(p)
 今年は、渡辺はま子の「中国もの」、卒業式「仰げば尊し」、越路吹雪ナンバーという構成。相変わらず谷口英治がバンドリーダーを務めるバックがうまいし、編曲のセンスも抜群。越路吹雪コーナー前に、カルテットの演奏での「セ・シ・ボン」が素晴らしい。
 昨年の博品館でのCDも出ていたので購入。ハバネラでの「川の流れのように」とか、オペラ調の「悲しい酒」など、谷口英治の編曲のセンスが冴えているが、服部良一メドレーで、クラが素晴らしかった「胸の振り子」が収録されていないのが惜しい。
 off
 谷口英治ディスコグラフィーも作らなきゃなあ。
 終演後、谷口さんにちょっと挨拶。新しいCDの企画が進行中とか、楽しみな話を聞く。
 ぶらぶらと三宮まで歩く。……高井信さんの住まいが近くで、たしか桜並木がきれいなはずだが、高井さんは本日、すれちがいで、大阪で某講座の講師をつとめているはずである。
 神戸になじみの店がなく、梅田まで戻って、かっぱ横町の酔鯨亭で土佐料理。
off
 歩いて帰宅。公園の夜がきれいだが、宴会をやっているのがサラリーマンなのかホームレス諸君なのか、判然としない。

4月9日(日)
 ドメイン名の「-com,-org,-net」がオンラインで取得できる。
 solitonを調べたら、なんと3日前に登録されてしまっていることが判明。いずれウェブマガジンと考えていたののだが……。調べてみると、主なSF用語など、多くはここ数ヶ月間で取られているのが多い。
 某大先輩にあわてて相談、ともかく「ハードSF」に関して、変な人にとられては困るので、近い将来、ハードSF関係でなにかを立ち上げる前提で、「○○○○○○○.COM」を押さえる。
 企画はこれからである。

4月10日(月)
 新聞休刊日。朝のテレビではまだ死んでいないようである。
 ボンサラ、終日ボンクラ仕事。
 夜、若竹煮、菜の花おしたし、ふきと鯛の子の炊き合わせ、筍ごはんなど、春の味覚が食卓にならんでいる。「専属料理人」久々のヒットである。ビールと冷酒たくさん。
 ビデオで「猿の惑星」をメモを取りながら見る。原作との違いをチェック。「SF作法」の講座のための資料作りである。ロッド・サーリングの脚本の良さを再確認。エンターテインメントのお手本である。

4月11日(火)
 午後、3月ぶりに眼科へ。1時間かけて目薬で瞳孔を開いて、3分診察。「異状はない白内障が出かかっている」というが本当か。単に歳をとっただけのことであろう。

4月12日(水)
 またも終日、今度は経理事務所と社会保険事務所みたいな仕事。SF作家としては役に立てようのない勉強であるなあ。
 血圧が気になる。

4月13日(木)
 昼間、尾道往復。福山で山陽線と乗り換えるのだが、先日から走り出したレイルスター車両、ドナルドダックみたいな格好だが、人気があるらしく、自由席は立っている人がいる。往復ともにひとつずつ遅らせて旧車両で移動。コンクリートの直撃を受けなかっただけで幸いと思わなければ……。なにしろ、夜は「歌之助独演会」の日である。事故が起こらないのが不思議なのだ。
 帰社の途中、地下鉄が中津付近で「発煙事故」のため、全線ストップしてしまう。10分ほど。まあ、この程度で済んだのは不幸中の幸いであった。
 19時〜北浜のアイル・モレ・コタで「桂歌之助百噺」ももう93話まで来た。
 off  off
 歌々志「つる」、歌之助「口入れ屋」「魚の狂句」「茶の湯」。
 歌々志くん、着実に腕を上げているのが嬉しい。
 歌やん、禁酒生活になってから、酒飲みの噺が凄いのだが、本日は「夜這い」「女郎買い」「茶の湯」と、ぜんぜん酔っぱらいが出てこない。
 久しぶりに近所の居酒屋でのウチアゲの方にも参加。深夜帰宅。

4月14日(金)
 ボンサラ、夕方までボンクラ仕事。
 夕方、久しぶりにアトソンの大阪分室に寄る。アトソンのローランド・カーク・五十嵐さんは2月に東京へ転勤されていて、公認は関口さん。倉園さんは年末で出産のために退社されていて、後任は下川さん。のりこり専務は4月から東京「転勤」だし、この分室中心にワイン→夕霧ソバというメンバーはバラバラになってしまった。
 朝日ビルで「専属料理人」と合流、地下を歩いていたら、山下洋輔令夫人・洋子さまとばったり会う。グランドホテル泊ということである。
 19時〜山下洋輔コンサート「Round about BACH Night」
 出演は、茂木大輔木管トリオ、パーカッションの八尋和洋、締太鼓の植村昌弘、それに後半は、佐渡裕指揮の京都市交響楽団。
 off
 クラシックのコンサートなので拍手が難しい。特に木管トリオ+山下洋輔で、「クレイ」を合図にフリー・ソロを回すところでは、拍手しないのは失礼ではなかろうか。……まわり8割はクラシック・ファンの雰囲気だが、「もうひとつの夜明け」第一楽章と二楽章の切れ目で拍手が起きたのはどういうわけだ。大阪の聴衆諸君、ヒヤヒヤものである。
 東京でも聴いている「専属料理人」、佐渡指揮に大満足のようであった。
 場内、撮影禁止。終演後の拍手場面のみ、フラッシュなしでデジカメスナップ。
 終演、21:30頃。ロビーで楽屋へ挨拶に行くかどうか様子を見たが、ガードが堅い雰囲気で断念。あれっ、MINさんに似た人が目の前を通過していったが、まさか……と思ったら、やっぱり来阪であったことがあとでネットで判明。玉木正之らしき人も見かけた。……岡本会長夫妻と残りの桜を見ながら大川沿いにブラブラとハチまで歩く。
 昔のヌルスタジオの近く、水晶橋でなにかのCMの撮影中である。「好きやねん」かな? 橋の上に屋台が組んである。
 off off
 ハチママも先に戻っている。おなじみ大ちぉんも。23時頃までビール飲み、歩いて帰宅。

4月15日(土)
 雨の土曜であり、書斎でごろ寝、夕方の「講座」準備。
 午後、淀屋橋でかんべむさし氏とアルコール抜きで雑談。
 18〜20時、天満で某講座「SFの書き方」。本日は「猿の惑星」の作品分析。……クラークの短編あたりを想定していたのだが、志願した加藤くんが提出してきたのはブールの「猿の惑星」であったので、これを課題作品として「換骨奪胎法」をやる。……「猿の惑星」は「エンターテインメント作品」としては欠点が多く、これをロッド・サーリングの脚本と比較することで、ずいぶん作法が明確になる。この作品を取り上げたのは、結果としては大正解であった。「顴骨奪胎」は……まあまあ面白くやれた方かな。
 途中から北野勇作も来る。
 off
 終了後、懇親会、8人で22時過ぎまで。
 帰宅後、某掲示板を覗く。サイファイなあ……


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