『マッドサイエンティストの手帳』665

●マッドサイエンティスト日記(2017年10月後半)


主な事件
 ・長雨
 ・酉島伝法氏@創サポ講座(21日)
 ・衆院選(22日)
 ・播州龍野いたりきたり
 ・創サポ講義(28日)
 


10月16日(月) 穴蔵/中央図書館
 雨。秋冷である。
 朝、雨にも負けず西長堀の市立中央図書館へ。
 調べたいのがほとんど「書庫資料」で「館内閲覧用」なので、相談カウンターに近いテーブルで読む。
 空いていて静か、資料は早く出てきて、まことに快適なのだが……。
 とつぜん、貸出カウンターあたりから怒声が響き渡る。フロア全体に聞こえたはず。
「金払たらえんやろ、なんぼや!」「おーっ、今金払えゆうたやろが!」「おう、なんぼでも払ろたるがな!」
 職員が「そのようなことは申しておりません」といっても同じことのくりかえし。
 駅の改札とか銀行の窓口で時々見かける激昂・逆上風景だが、図書館では初めて。
 見れば五十嵐敬喜がハンチングかぶったようなおっさん……といってもわかりにくいか。要するに「欲どしい」顔つきのおっさんで、本を読む人間には見えない。質流れ品大会などでよく見かけるタイプである。
 どうやら本を破損して、職員から「補修します」と伝えられた、そんなことらしい。
 5分ほど続いて「また来るわ」と捨て台詞吐いて去っていったが、二度と来るなよ。迷惑な。
 大阪市立中央図書館1階カウンタ、午前11時30分頃の出来事である。
 五十嵐敬喜(似)にも困ったものだ。

10月17日(火) 穴蔵
 寒いのであった。午前6時、外は16℃、室温23℃で、これは終日ほとんど変わらず。
 午前雨、午後曇。
 終日穴蔵にて資料を読んで過ごす。
 真面目な1日であった。
 晩酌後寝る。

10月18日(水) 穴蔵/ウロウロ
 朝、久しぶりに晴。
 10時過ぎれば曇りだし、昼前には曇天となった。
 昼のニュース。朝、枚方市で、無職北牧貴昭(21)運転の乗用車が集団登校中の児童の列に突っ込み、6人が重軽傷。逮捕された北牧……「太陽が眩しかった」とは不条理な台詞を吐いてくれるぜ。
 運動不足なので午後散歩に出る。
 ジュンクドー往復、近所うろうろ。
 公園の南側に小さな鍼灸整骨院があり、ユニホームが2枚飾ってある。
 阪神の岩田と糸井という選手のもので、関西で試合があった翌日にはよく来るのだとか。
  *
 公園で体をほぐしたりすることもあるそうな。
 昨日でシーズン終了だから、今日は来るはずとエレベーター内で某居住者から聞いたが……おれはナベツネの暴言以来、職業野球に興味を失って久しく、公園でみかけてもわからないだろう。
 ヨレヨレのおっさんでないのは確かだが。

10月19日(木) 穴蔵にあり
 雨。午後に歇(や)む。
 ……同年齢の荷風のおっさんなら、この1行ですませたであろう。そんな1日。
 未明に目覚め色々本を読んだりDVD見たり朝昼の食事をしたりゴミを出したり午後に自転車でタカセへ行って黒糖焼酎買ってきたりとチョコマカ動いたが何も生産的なことはせず夜は専属料理人の並べた色々で晩酌そろそろ就眠である。
 荷風の簡潔さを見習うべきや。

10月20日(金) 穴蔵にあり
 雨。午後に歇む。
 あ、昨日と同じだ。
 終日穴蔵。
 明日、創サポのセミナーにゲストとして酉島伝法さんをお招きするので、作品の再読。
 たちまち夕刻となる。
 晩酌。
 専属料理人が小鉢やサラダなど並べてくれたが、メインディッシュが豚肉ときのこの煮込んだの。
  *
 むろん悪意はない(はず)。まあ旨いのだが「泥海の浮き城」や「環刑錮」を読んだ後ではなあ。「金星の蟲」のトイレ描写も読んだ直後なのよ。
 豊崎西公園南側中本酒店推奨の格安馬鹿旨ワインにて流し込む。
 ニュースは台風21号接近と衆院選ばっかり。
 あと3日は雨が続きそうな。
 播州龍野に気になることもあるのだが、しばらくは動けそうにない。

10月21日(土) 社長降臨@創サポ講座
 雨。終日穴蔵にあり。
 夕刻這い出て天満橋、エルおおさかへ。
 不定期に開催している創作サポートセンターの「関西のSF作家に創作法を聞く」シリーズ。
 本日は「異形の天才降臨」(←『皆勤の徒』の帯)酉島伝法氏登場である。
 創元SF賞の短篇「皆勤の徒」(2011)から最新作「千羽びらき」(2017)まで、作品に沿って聞くことは多く、酉島さんもパソコンやイラストの下書き、創作メモなど持参、特異な造語やキャラクターの製造過程など惜しげもなく公開していただいた。
  *
 酉島さん降臨となると、不気味な人では警戒する空気がまだあるそうだが、たいへん論理的でかつ冗談やバカ話も大好きな方である。
 創作講座なので、事例研究として、ある中篇について、着想から脱稿までの過程を、具体的な作業、時間配分、イラスト作成まで細かく訊ねたが、(そしてこちらの作品解釈は基本的に間違ってなかったものの)着想の原点はまるで想定外であり、執筆手順もきわめてユニークなものだった。
 その他、「雌伏10年」の過ごし方、「川で書く」(←どういうことかわからないと思う/参加者の独占情報)現在など、予想もしなかった話が続出。真似はできそうにないけど、まことに刺激的な話であった。
 進行中のものも含めて、来年はまた話題が多そうである。

10月22日(日) 衆院選
 雨ぞ降る。
 午前9時頃に近所の小学校へ衆院選の投票に行く。どうしても落ちてほしいのが約1名いるからなあ。
 あとは終日穴蔵。
 ボケーーーーッとタドコロ状態で過ごす。
 あるツィートで、
 『所ジョージの名言(だったと思う)「忘れようとしても思い出せない」を思い出す。』
 という書き込みを見かけた。
 おれの記憶では、これは1962年「てなもんや三度笠」での平参平の台詞である。「も」はなく、
 「忘れようとして思い出せない」 ※
 同番組はアドリブ禁止で、脚本は香川登志緒。
 他にも、「しばらく見んうちに長いこと会わなんだなあ」「待てばカイロの火も消える」など、色々あったなあ。
 たちまち夕刻。
 ややこしいことに、今夜22時〜明朝5時、断水である。水道工事(給水管の切替)のため。
 台風21号最接近の時間帯に水道工事とはたいへんだろうが、選挙の開票速報の時間帯でもあり、ややこしいことだ。
 ゲス議員の落選を確認したいが、面倒になる。
 ふだんより1時間早い晩酌。22時前に小便して、寝る。

※「忘れようとして思い出せない」といったのは鳳啓助のはずというご指摘をいただいた。あ、語感からいって、そのようだ。
 「しばらく見んうちに……」は平参平、「待てばカイロの……」は藤田まこと。これは確か。
 東海道の1年がいちばん面白かったが、映像は残ってないし、55年年前だから、記憶もあやしくなります。(10.24)

10月23日(月) 穴蔵
 早寝したら午前3時に目が覚め、テレビで開票速報と台風情報を見る。
 色々たいへんなようだが、大阪市北区は静かなもの。雨はやみ風もなし。
 未明曇天、朝7時には晴れ間、あと急速に晴れる。
 近畿一円、交通機関は無茶苦茶のようだが。
 出歩かないのが賢明である。
 終日穴蔵、ボケーーーーッとタドコロ状態で過ごす。
 いかん、本当にタドコロになりそうな。明日は少しは仕事もするつもり。

10月24日(火) 穴蔵/ウロウロ
 台風一過の晴天とはならず、曇天。
 朝6時半にゴミ出しに出たら、集合住宅前にパトカーが来ていて、大淀警察の7、8人が向かい側のビルの非常階段あたりを調べておる。
「泥棒でっか?」「いや、事件性あるか、まだわかりません」
 こちらは元理事長。ウチの防犯カメラ情報もありまっせとちらつかせつつ聞けば、未明にフラフラ歩いてきたおっさんが倒れて死んだらしく、死体はすでに運び去られており、病気か薬物か殴られたかは司法解剖待ちになるようである。
 近所のヨレヨレのおっさんではなく、見知らぬフラフラのおっさんらしい。
 明日はわが身である。
 残り少ない人生、本日は穴蔵にて雑事色々処理する。
 午後、金融機関、郵便局に行ったついでに、中崎町を抜けて、タカセ市場でボトル1本買って帰る。
 この旧タカセ市場近くに、おれの隠れ散歩路地がある。
 今どき珍しい砂利道(未舗装の土の道)である。たぶん私道なのだろう。
  *
 この一帯は「豊崎長屋」で、隠れ名所、普通にはわかりにくい場所である。
 が、わが敬愛する町歩きの達人ロザーナさんが、昨日、ちゃんと発見して歩いてはる。
 たいしたものだ。この方の町歩き感覚(特に旧色街)にはただ感服である。
 ということで、おれも隠れ散歩路地を公開する次第。
 奥の「屋敷」の佇まいがよく、むろん抜けられます。

10月25日(水) 大阪→播州龍野
 早朝の電車で播州龍野へ移動する。
 未明の大阪は曇天だったが、播州龍野は快晴である。
 タイムマシン格納庫の一角に台風21号による被害があり、倉庫代わりに使用している老朽家屋の瓦が一部崩落。修理するほどでもなし、雨漏りがひどいようなら解体することにする。
 事業縮小中だからなあ。いっそ全壊してた方が気が楽なのだが。
 午後は実家にて肉体労働。
 書斎と居間を完全冬モードに変更する。
 庭の柿。数は多いが全体に小粒である。
  *
 この十年ほど、枝を落としていないからであろうか。
 そう食べられるものではなし、十数個大阪に持ち帰り、あとは近所の某家に「ご自由にどうぞ」ということにしている(庭には勝手に入れるのである)。
 たちまち夕刻。ど田舎の夜は早い。
 17:30には薄暗くなり、18時には真っ暗。
 ウィントン・ケリー師匠を聴きつつ、大阪から持参の総菜類並べて独酌。
 20時過ぎに食器を片づけ、そろそろ早寝するのである。
 実家書斎はネット接続してないので、HP更新は明朝(タイムマシン格納庫のPCから)になるけど。
 ネットから切り離されるのも、たまにはいいものである。
 ……ということで、26日朝にタイムマシン格納庫からアップした記事がこれ。

10月26日(木) 播州龍野→大阪
 播州龍野にて午前4時に目覚める。7時間ほど熟睡。室温は15℃で快適なのであった。
 ただし肉体労働の後遺症で体の節々が痛む。
 本日もゴミの片づけその他、ほとんどアタマを使わない作業を続ける。
 昼はヨコタにて穴子寿司をいただく。
 午後、姫新線〜山陽本線乗り継ぎ、夕刻に近い時間に帰宅。
 晩酌。
 翁豆腐、きんぴら、もやしナムル、牛肉の炒めたんをキムチなんかとレタスで巻いたんなどで黒糖焼酎湯割り。
 ニュースはナベツネが仕切る日本職業野球の人身売買会議ばっかり。テレビは切り、トミフラ師匠を流しつつ。
 早寝。

10月27日(金) 穴蔵
 快晴。秋晴れである。
 出歩けばいいのだが、体の節々が痛む。急な肉体労働のツケである。
 終日穴蔵。明日の講義のために資料を読んで過ごす。
 秋晴れは今日までで、明日からまた雨らしい。
 穴蔵から見る空、夕刻近く、雲が増えはじめた。
  *
 夕べの雲。センチメンタルになるぜ。
 専属料理人が並べてくれた、温野菜、サラダ、カジキのソテー+自家製タルタル、阪急地下のなんとかのフランスパンなどでビール、白ワイン少しばかり。
 モンクの「ソロ・オン・ヴォーグ」を流しつつ。「煙が目にしみる」には涙が出てくるぜ。

10月28日(土) 創サポ講義
 一夜明ければ天候一転、終日雨が降り続く。
 穴蔵にて提出作品を読みメモをとって過ごす。
 夕刻這い出て、地下鉄で天満橋へ。おや、雨があがった。
  *
 17時30分の八軒家浜。冬至は近いのである。
 18時からエル大阪にて創作サポートセンターの講義。
 提出作品5篇を中心に行う。
・天才少年が人工知能(らしき)助手と精神治療を行う。文体にトリックが仕掛けてあるらしいのがミソ。
・「頑是ない」子が、修辞を言葉通りに実行して悲劇を招くショートショート。類似作はあるが、残酷なのは珍しい。
・小学4年の少年が、鉄棒が不得手でいじめられている子に特訓を施す児童小説。いい話だが、おれがコメントするのが適任か迷う。
・北国の庄屋に雑兵として雇われた3兄弟の伝奇的長篇の冒頭。生化学的時代小説とでもいうか。
・自殺志願者に「残りの時間を買ってあげる」と声をかける少年。悪魔との契約パターンの変種である。
 それぞれ面白いのだが、描写に過不足もあり。
 しかし、おれの場合、欠点のある作品の方が面白い。この講座では、作者の本当の狙いを確認できて、理想的な成功作がイメージできるからであり、それは傑作ぞろいなのである。

10月29日(日) 穴蔵
 定刻午前4時前に目覚める。
 本日は台風22号が本州の太平洋側を九州から関東まで通過の予報。
 8時頃から雨が降り出す。
 終日穴蔵。
 台風とは関係なく、気分が沈み込んでくる。寒さ(室温22℃)のせいかもしれぬ。
 本を拾い読みして1日が過ぎる。
 15時過ぎに雨はやみ、17時には西に晴れ間も出てきた。
 晩酌。早寝。
 明日は体を動かすことにしよう。

10月30日(月) 穴蔵/ウロウロ
 台風一過とはいかず、雲の流れ(北→南)が急である。
 風が強く冷たい。昼前に木枯らし1号の報道あり。
 播州龍野に引き続き、穴蔵を完全冬モードに変更する。
 昨年より1週間早い。
 運動不足なので、午後散歩に出る。
 西回りコース。貨物線に沿ってスカイビル〜近いうち閉鎖予定の地下道〜大阪駅。
 と、大阪駅(アトリウム広場)とヨドバシ西側をつなぐ陸橋が開通していた。
  *
 一応渡ってみる。
 ヨドバシ2階の入ったところが文具売り場で、便利は便利だが。
 大阪駅南側の地下街にたいして、うめきたは「2階回廊」がメインになるらしい。
 津波と淀川氾濫への対策としてはいいのだろうが、面白くないなあ。
 期待できるのは新駅と地下鉄西梅田をつなぐ地下道ができるかどうかだけである。

10月31日(火) ゴルゴ@天保山
 秋晴れである。
 月末の処理事項があって本町の某金融機関へ行く。
 ついでに中央線で大阪港へ。
 大阪文化館・天保山で「ゴルゴ13連載50周年記念特別展 用件を聞こうか……」を見る。
 期待していたほどのものではなし……というか、予想してた程度のもの。
 原画を見るのが面白い程度で、内容は『ゴルゴ学』からのピックアップ。
  *
 撮影禁止だが、ソファに座って記念撮影できるところが1ヶ所あった(これは、さいとう・プロの応接室をそのまま再現したものだそうである)。
 ゴルゴ13は半世紀前……上京して大宮信光さんちへ伊藤典夫さんと遊びに行き、その時に面白いキャラクターだと教えてもらって読み出した(懐かしいなあ)。
 全作品を読んでるわけではないが、やはり初期の、小池一夫やK・元美津の脚本のが面白く、記憶に残っている。


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