『マッドサイエンティストの手帳』628
●マッドサイエンティスト日記(2016年4月後半)
主な事件
・熊本地震/NHK文化センター(16日)
・播州龍野いたりきたり
・SF大賞贈賞式(22日)
・創サポ講義(23日)
・JAZZ AT CHURCH 2016(24日)
・チャチャヤング・ショートショート・マガジン(25日)
4月16日(土) 熊本地震/NHK文化センター
午前3時に目が覚める。
気になってテレビ見たら、まだ熊本からの中継をやってる……と思ったら、また1時25分にM7.3の地震が阿蘇であったらしい。阪神大震災と同じ規模ではないか。
14日のはM6.5。 (7.3-6.5)*1.5=1.2までは暗算でできるが、逆対数は無理だ。エネルギーは10数倍か(あとでCASIO fx-120を出してきて確認。15.85倍である)。
1時間ほど見ている間に何度も余震のテロップ、緊急地震速報も流れる。やがて、今日のが「本震」という発表も流れる。14日のは「前座」だったのか。
明るくなり、色々な「惨状」が映されるが、見ているのがつらい。カジシンが周囲の報告を流してるのが(たいへんな様子だが)救いである。
昼過ぎに梅田へ。
阪急オフィスタワー17階のNHK文化センターへ。
「SFを創った大阪/SFが変える大阪」という講座の1回目。
九州で大地震というのに、気楽にSFの話をしてていいのかという気がしないではないが、東日本大震災直後の講座と同じスタンスで行う。阪神大震災にも触れる予定で準備してたのだし。
今後協力をお願いしている北野勇作さんと田中啓文さんも来てくれていて、実はふたりとも阪神大震災の被災者で、大阪に避難し、居を大阪寄りに移した体験を持つ。
大阪とSFの諸々の因縁を多面的に解いていこうという試みだが、ロボット開発「手塚治虫と學天則が同年生まれ〜米朝アンドロイド誕生までの84年」だけで30分ほど。「福田紀一のやたけた中之島」「小松左京の見た廃墟空間:砲兵工廠跡〜阪神大震災」「100%大阪SF作家は眉村卓氏だけ(後の世代で2名?)ということに今頃気づいた」あたりで時間が押してきて、少しはしょり気味となる。「酉島伝法と此花区」など未踏の秘境もあるし、次回に持ち越しテーマあり。
しかも、北野さんも田中さんも、似たテーマを議論したことがあり、しかし被るところがほとんどないという。
30分ほど打ち合わせして解散。
*
久しぶりにタワーのロビーから御堂筋を見る。また新工事が進行中。2年ほど続くか。
急に揺れ出さないか、ちと怖いね。
このビルには「珍しい展望コーナー」があるのだが、土日は入れない。まだ見てないので、近いうち、スーツ着て平日に潜入することにしよう。
4月17日(日) 穴蔵
終日穴蔵。
未明の雨が明け方にやみ、曇天の空、雲の動き急である。突然突風も。が、午前11時40分頃に急に晴れ上がり、午後は雲ひとつない快晴となる。
天気の移り変わりを眺めつつ、ボケーーーーーッとタドコロ状態で過ごす。
とはいえ、少しは本を読む。ほんとにタドコロ状態(なーんもせんと座ったまま朝9時から午後5時半まで過ごす)というのは人間技ではないからなあ。
机に洗濯ばさみ5、6個を置いて1日を過ごすという人間離れしたサ**というやつもいたけど。
あ、「ぱーーっと、ぱっと、ぱっと」とベンベルグ状態で1年を過ごすゴンザというのも某社にいたそうだが。
アホの真似はできん。
ということで、たちまち夕刻。
本日は和系色々(枝豆、翁豆腐、若竹煮、もずく、カレイ塩焼き、きんぴらなど)並べてもらってビール、湯割り。
早寝するのである。
4月18日(月) 大阪→播州龍野
早朝の電車で播州龍野へ移動する。
午前9時30分に本竜野着。
相棒の某くんが遠方への出張のため、タイムマシン格納庫にて見張り番を務める。
合間に某務局とか郵便局など雑事もあり、タドコロ状態では過ごせない。
昼は室津まで穴子丼を食べに行きたいが、時間がなく、「よこた」にて穴子寿司。亡母が好きであったなあ。
夕刻は早めに切り上げ。
実家にて独酌。
室温16℃で寒く、しばらくストーブをつける。
連休明けまで暖房器具は片づけられないな。
4月19日(火) 播州龍野→大阪
目覚めれば午前6時。播州龍野の方が熟睡できる。
朝、川沿いを歩いてタイムマシン格納庫へ。
*
新緑と常緑の混じった眺めがいい。
本日も格納庫にて見張り番。
大阪からややこしい連絡あり、集合住宅関係のことで帰らねばならなくなった。
午後の電車で帰阪。
集合住宅の理事会にオブザーバーとして出席する。
物事の決定が遅く……結局、22時近い時刻の夕食となる。
しかも、よんどころない事情により、本日はノンアル1缶。嗚呼。
4月20日(水) 穴蔵
素面で早寝したから眠り断続的、本を読んだり少し眠ったりの繰り返しで朝になった。
朝食抜き。
近所の某医院へ行って、毎春の健康診断を受ける。
血液検査の結果は後日だが、その他はまったく異状なし。たいしたものだ。何がたいしたものかはわからんけど。
快晴である。
さあ、遊びに行こう……という気にはならず、あとは終日穴蔵。
少しは仕事もするのであった。
熊本の状況を見るに、ボケーーーーッとタドコロ状態で過ごしていてはいかんのである。
4月21日(木) 穴蔵
曇天、昼前から雨になる。
終日「雨読」で過ごす。
歩数計0歩。
明日は動く予定なり。
4月22日(金) SF大賞贈賞式
昼前に出て、上京。
なんと3年ぶりである。
早めに来て、都内をうろうろしたい気がないではなかったが、特に行きたい場所もなく、有楽町から山野楽器まで歩き、お茶の水へ移動してdiskunionを覗く。
トニー・スコットと富樫雅彦(19歳)の競演CDが出てるが、見送りとする。買っても一度聴くだけで終わりだろうからなあ。
ジャズ書の棚に内田晃一「日本のジャズ史」があったので購入。
夕刻、飯田橋のホテルメトロポリタンへ。
第36回日本SF大賞贈賞式。
長年親しい3氏の受賞とあって、これだけは出席せねばならぬ。
大阪から懐かしき人外協の面々も。
*
大賞 谷甲州『コロンビア・ゼロ 新・航空宇宙軍史』(早川書房)
大賞 森岡浩之『突変』(徳間書店)
特別賞 牧野修『月世界小説』(早川書房)
功績賞 生ョ範義
谷さん、杖をついての登壇だが、またそのうち山登りはするつもりだという。
久しぶりに会う人多く、たちまち2時間経過。
最終に近いのぞみで深夜の帰館となる。
4月23日(土) 穴蔵/創サポ講義
わ、目覚めれば午前7時である。
よく寝たものよ。
穴蔵にて、資料再読、メモ作成。
夕刻這い出て、天満橋のエルおおさかへ。
創作サポートセンターの講義である。
本日は提出作品2篇を中心に行う。
・植物人間状態になった婚約者の脳手術を秘密裏にひとりで行おうとする青年医師。これは明らかに恐怖SFである(現代版マッド・サイエンティストものとも読める)。似たような設定でおれも書いてみたいのがあったが、諸般の事情であきらめたことがある。このタイプのSFの頂点は小松左京「凶暴な口」であり、これを超えるのは難しい。作者は相当がんばっていて、人工知能との関連など、着眼もいい。現代医学の最先端がどうなのか、現役の「医師作家」も多く、面白いがしんどいジャンルでもある。
・妙な特技(趣味、生き甲斐、それで起業しようとしている)を持つ少年の異世界での活躍と、人間ならぬ「美少女」との恋愛感情を軸とするラノベ作品。なかなかいいノリで書かれていて、リーダビリティは高いが、ラノベ業界の「傾向と対策」には疎いので、わがコメントが有効打となるかどうかは自信がない。
ともに力作で、こちらも刺激をうける。
谷甲州さんの姿勢といい、おれも、もう少しがんばらねばいかんなあ。
4月24日(日) JAZZ AT CHURCH 2016
昼過ぎに心斎橋へ。
14時から、島之内教会で「JAZZ at CHURCH 2016 SPRING CONCERT」である。
今年はゲストとしてロスからフェイズ・ジャズ・ビッパーズ8名が来日。
ラスカルズの米国ツアーの時、ジャム・セッションを繰り広げたミュージシャンたちである。
例によって2階の隅の方で聴かせていただく。
*
Fay's Jazz Vipers
Mike Fay(leader/b/bj/gt) Clint Baker(cl/tb/tp/bj/b/ds) Marc Caparone(tp/b) Carl Sonny Layland(p) Jeff Hamilton(ds/p) Bill Dixon(bj) Fred Hird(b) Ben Fay(gt)
クリント・ベイカーを初め、多彩な楽器を演奏するのが売り物のバンドで、やたらパートが変わる。
名手・Carl Sonny Laylandと河合さんのバーガンディが泣かせるね。
18時前まで。
帰路、専属料理人と明治軒に寄り、串カツとサラダでビール、オムライスでワインを少しばかり。
明治軒は中国人が来ないので助かるなあ。
4月25日(月) 穴蔵
晴れて暖。朝は東からの直射光で室温26℃となる。快適なり。
穴蔵にて、少しは仕事もするのであった。
昼前のニュース。
待ちに待った野々村竜太郎の公判……無事出廷、懲役3年の求刑で結審、奇矯な言動はなかったらしい。面白くねえな。
昼、富山の「梅かま」からクール便到着。
中本酒店へ行って1瓶購入してくる。急冷。
ということで、たちまち夕刻。
*
↑土佐鶴にピントがあってしまった。
梅かまの「昆布巻きかまぼこ」で冷やした土佐鶴を一献。
先日富山へ行った時の「梅かま」が抜群にうまかった(「立山」や鱒すしで部屋飲み)ので、取り寄せたのである。
他に和系いろいろ並べてもらってチビチビ。
早寝するのである。
チャチャヤング・ショートショート・マガジン 第3号
「西秋生追悼特集」
昨年9月に亡くなられた西秋生さんの追悼号である。
同人諸氏の追悼文、作品リスト、「風の翼」編集後記の再録など。
作品リストが貴重だが、[遺稿]という短編「幻視者の死」は西さんらしい阪神間レトロ感覚に満ちた傑作である。
阪神大震災から12年、上筒井線(王子公園から西への旧阪急の廃線)が復活され、あたりは繁華街になっている。そこに古くからある酒場で3人の老作家が、近くの踏切で若い作家が「事故死」した、昔の事件について語り合う。巧妙な設定で、「大震災から数年」ということで、現代の架空神戸と昭和初期の神戸が重さなり、メタフィクション的な世界に巧妙に誘い込まれる。その後の展開も見事な「阪神間SF」である。
若い作家「オンちゃん」はSFファンならわかるだろう。タイトル「幻視者の死」はおそらく代表作「兵隊の死」へのオマージュであろう。まさかそれが「幻視者=作者(西秋生)」につながろうとは。
西秋生さんを偲ぶ最良の一冊である。
掲載作品もきわめてレベルが高い。特に神戸の西ワールドを描いた岡本俊弥「摩天楼2.0」(そういえば、阪急三宮駅が30階の高層複合ビルになる)、塩屋の異人館(グッゲンハイム邸あたり)を舞台とする怪異譚・深田亨「エドモンド」は、ともに西作品の世界を意識した丁寧な文体で、秀逸である。
本書はこちらで入手可能です。
4月26日(火) 大阪→播州龍野
早朝の電車で播州龍野へ移動する。
相棒の某くんの事情により、今週はおれがタイムマシン格納庫の見張り番をつとめることになる。
敵の襲撃もなく、静かなもの。
昼、龍野公園まで行ってみる。
*
初夏の晴れた日の聚遠亭は新緑の中にたたずむ。
午後も格納庫に詰める。
夕刻になって連絡事項が数件重なってあたふた。
メールでなんとか片づく。
午後6時。さあ、食材スーパーに寄ってから実家に戻り、独酌といくか。
播州龍野の夜は更けゆく……予定。
4月27日(水) 播州龍野
本日もタイムマシン格納庫にて見張り番をつとめる。
昨日の初夏の陽光が一転して、朝から小雨、室温19℃で、おれにはつらい寒さだ。
昨日今日とFAXが数件入ってくるが、いずれもが「融資のご案内」。
全部3000万円で「特別低金利認証通知」とか「融資額設定完了通知書」とか「中小企業支援融資決定通知」などのタイトルで、すべて東京の高利貸しから。
うちみたいな零細ガレージメーカーへ、どんなリストをもとにFAXしてくるのか。
わが社は無借金経営で、融資なんて受けたことも申し込んだこともない。
タイムマシンメーカーだから、マイナス金利で融資を受けることも可能。「時は金なり」で「時を制御できる」のだから、金利なんて自由にコントロールできるのである。(←本気にしないように、エシュロンくん)
それにしても、金貸しの営業活動が活発なのは、今の景気がいいからか悪いからか、さっぱりわからん。
雨が降り続く。
白い花(オオテマリ?)の横をキハ122系が走り去る。
*
大阪の穴蔵に帰りたくなるなあ。
格納庫に1日いると体が冷えてしまう。
夕刻、ちょっと南にある「はつらつの湯」というスーパー銭湯に行く。サウナもあって300円というのはありがたい。
ということで、実家に戻って、湯上がりの一杯。
枝豆、ミニトンカツ・サラダでビール、ハム・玉子・カイワレ・キムチぶち込みの冷麺で湯割り。
デフランコ師匠を聴きつつ。近隣を気にせず大音量でジャズを聴けるのは播州龍野の数少ない楽しみなり。
こちらでの独居老人生活も悪くはなし。
早寝するのである。
4月28日(木) 播州龍野→大阪
寒いのであった。朝の室温16℃は大阪の穴蔵では冬の気温だ。
雨が断続的に降る。
本日もタイムマシン格納庫にて見張り番。
体が冷えてくる。
昼前に相棒の某くんからメールあり、自宅に戻ったという。
明日から世間(日本)は連休、海外関係はメールがメインだから、転送電話に切り替えて、こちらは午前中にて撤収とする。
昼過ぎの姫新線で姫路へ。
小溝筋の灘菊にて680円の日替わり定食。
*
ごはんを少量にしてもらって灘菊熱燗を一杯。うまーーーーーっ。
午後の新快速で帰阪。
さあ、明日から連休。
世間は浮かれるであろうから、がんばって少しは仕事もしよう。
4月29日(金) 穴蔵
先日来の反動で、終日穴蔵。
エルゴヒューマンの椅子に座り、机に向かって1日を過ごす。
さほど生産的な仕事ができたわけではないが。
たちまち夕刻となる。
専属料理人が並べてくれた、まぐろアボガドの小鉢、もずくとオクラの小鉢、一口カツにキャベツどっさりトマト付きなどでビール、湯割り。
早寝するのである。
4月30日(土) 穴蔵/ウロウロ
快晴である。
穴蔵にこもって過ごすが、運動不足なので、午後は歩くことにする。
西回りコース。許永中の生家あたりを通り、うめきたエリアの西側を南下。
*
都心の新緑の渓谷を抜ける。
日通前踏切から大阪駅〜ヨドバシ〜紀伊国屋〜ジュンクドー経由で帰館。
約2時間、6,997歩となった。
ということで、夜は専属料理人が並べてくれた、枝豆、ヤッコ、豚ピカタ、サラダなどでビール、ブルディガラのパンでワインを少しばかり。
本を読みながら早寝するつもり。
無為に過ごした4月が終わる。嗚呼。
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