『マッドサイエンティストの手帳』493

●マッドサイエンティスト日記(2010年12月後半)


主な事件
 ・相生ミッション終了(21日)


12月16日(木) 播州龍野/相生
 慌ただしくないのであった。
 朝から相生へ移動。
 午前中、相生ミッションに従事。
 昼、播州龍野へ帰る。
 こちらでも雑事少しばかり。
 日が暮れた。
 一杯飲んで寝る。
 こういうつまらない日もたまにはある。

12月17日(金) 播州龍野/相生
 朝から相生の隠れ家へ移動する。
 ちと事情があって、しばらくの間、某自動車からワゴンを代車として借りている。
 
 ダイハツのMOVEだが、これは「初代」だろ?
 山下洋輔さんがCMでピアノを弾いたやつではなかったっけ。
 TWINCAM 12V となかなかだが、走行距離138,000q。ちょっとスピードを上げると、車体がガタガタギシギシ音を立てて、分解するのではないかと怖くなる。
 なんとか無事到着。
 昼前に専属料理人が新快速で相生にやってきた。
 午後、いっしょに播州龍野へ帰るが、やはり怖がる。
 ま、2、3日の辛抱である。
 ということで、夜は専属料理人に料理を作ってもらう。
 播州龍野の家は寒いから、おれの場合、もっぱら鍋系になるのだが、専属料理人は、やっぱり寒いから鍋系。
 ただし洋風で、少ない材料でブイヤベース風の鍋。リゾット風の雑炊で安ワイン。
 早寝……でもないか、23時近くになってしまった。
 ともかく就眠。

12月18日(土) 播州龍野/相生
 昨日が「1月下旬の寒さ」とかの報道だったが、たいしたことなかった。
 これならキンタマの収縮を心配することなく、この冬を乗りきれそうである。
 ということで、朝からガタガタのMOVEで専属料理人と相生へ移動する。
 無事到着。
 相生ミッション続行。
 専属料理人は午後の電車で帰阪する。
 おれは播州龍野に帰館。
 ロナルド・マレット『タイム・トラベラー』(祥伝社)を途中まで読む。
 感想は明日にでも。
 夕刻、堀家住宅から川沿いを北へ40分ほど散歩する。
 
 なまこ壁の模様は夕日に映える。
 夜は昨夜の材料の残りでひとり鍋。
 早寝するのである。

12月19日(日) 播州龍野/相生/タイム・トラベラー
 朝から相生へ移動する。
 日曜の朝、道路も町も静かなものよ。
 休日ゆえ、昼前にミッションは切り上げて播州龍野に戻る。
 鍋焼きうどんを作って「龍力」熱燗一杯。
 午後は座敷のコタツに寝そべってロナルド・L・マレット『タイム・トラベラー』(祥伝社)を読む。
 
 マレットの談話をヘンダーソンがまとめた聞き書き。できれば自分で書いてほしかったところだ。
 黒人物理学者として、人種差別に耐えつつ、理論物理で成果を上げた人生は感動的である。
 おれとほぼ同年。ウェルズの『タイム・マシン』に感動して、実際にタイムマシンを作ろうと物理学の道に進んだところがいい。SF好で、「ミステリー・ゾーン」「アウター・リミッツ」、ブラッドベリなど、おれと同時代のSFぞろぞろ。
 で、肝心のタイムマシンだが、「レーザーリング」で重力場が形成されて時間ループが生まれるという。
 キップ・ソーンやティプラーのワームホールや巨大回転体に対して、レーザーなら地球でも実験可能だから、これはそそられるのだが……。
 よくわからん。
 「連続的に循環する光が重力場を生み出す」というのが「実感」を伴わないのである。
 マレットは重力場方程式を解いて、それには学会からの異論はないらしい。
 しかし……重力場は光を曲げるけど、ボゾンが重力場を生むのかなあ。
 理屈ではそうかもしれないけど、イマジネーションがわかない。
 SFにするなら、太陽系規模のレーザーリングの中心部に未来からの情報を受信する基地を置く……それはダークマターの解明につながるのだが……なんだか、過去のわが作品の焼き直しみたいになるなあ。
 マレット型タイムマシンは(原論文に当たっても理解できそうにないけど)もう少し調べてみることにする。
 夕刻、揖保川沿い、南の方に30分ほど散歩。
 冬至に近い落日を見る。
 
 憂鬱な気分になり、夜はメランコリーの妙薬をたくさん飲む。
 寝る。
 今日の夢は大阪の夢。

12月20日(月) 播州龍野→相生→大阪
 朝から相生へ移動する。
 ミッション続行。
 昼の新快速で相生から大阪に帰る。
 雑事が色々たまっている。
 年賀状を買うか、ちょっと迷うが、さし当たり住所録の整理のみ。まあ28日頃の判断でいいであろう。
 ということで、夜は久しぶりに鍋以外の料理。
 専属料理人の並べた、蕪の蒸したなんとかとか、フリットかんたらとかでビール、毎年この季節にいただく京都のスグキで熱燗。たまらんなあ。
 早寝。

12月21日(火) 大阪→相生→播州龍野/相生ミッション終了
 朝5時に相生の隠れ家から電話、すぐに来てほしいという。
 播州龍野にいる身内に電話して相生へ向かってもらうとともに、慌ただしく出かける用意。
 新大阪発6時15分のこだまで相生に7時前に着く。
 5分で隠れ家に着いたが「ミッション終了」というか「打ち切り」を告げられる。
 ……と、これまで、「相生ミッション」とか「隠れ家」とか、思わせぶりな書き方をしてきたが、もう伏せることもあるまい。
 ちょうど3月前から相生のIHI播磨病院に入院していた老母が息を引き取ったのである。
 
 霧が深い朝である。
 相生から播州龍野へ移送。
 意識のある間は「家に帰りたい」の繰り返しであった。
 生まれてから90年以上、一度も離れたことがない家であるからなあ。
 老母は3月ぶりに、やっと生家に戻る。

12月22日(水) 播州龍野→姫路/通夜
 午後姫路へ移動する。
 父と兄妹全員が中学高校と通った学校のすぐ近くである。
 夕刻から身内だけで通夜を行う。
 これは老母の遺志によるもの。
 うちのボンクラ息子その1を含めて、孫連中は東京、横浜、富山から集結。1組はパリから関空経由でちゃんと夕刻に到着した。
 一族は姫路泊となる。

12月23日(木) 告別式/姫路→播州龍野
 あまり眠れず、朝、姫路城まで散歩。
 
 おれが中学高校と通学した期間、姫路城は「昭和の大改修」でずっとトタン屋根であった。
 半世紀経って、今回の改修は「箱」をスポッとかぶせた方式で、改修が終わってこれが撤去されたら、中の天守閣は案外小さい印象……ということになるのではないか。
 昼前から身内だけで静かに告別式。
 付帯の儀式などのあと解散、兄とおれは夕刻、播州龍野に帰る。
 夜は、鴨居に置いたスピーカーから流れる……つまり「天上から降りそそぐような」ジョージ・ルイスのhymnを聴きつつ「神の河」湯割りを飲む。
 兄弟であれこれ議論するのは20年ぶりではないか。主にマレット型タイムマシンについて検討していたら深夜になってしまった。

12月24日(金) 播州龍野→大阪
 慌ただしいのであった。
・ご近所への挨拶回り。
・相生まで行って事後の処理。
・役所へ行って5つほどの窓口を回って諸々の処理。
・金融機関は休日の間の給料日とあって、ATMに長い列、駐車場の前の道が渋滞しているほどの混み方である。
・午後に某自動車へ行ってガタガタのMOVEを返却し、正規のクルマで帰ってくる。
・タイムマシン関係の棚卸しを30分で済ます。
・老母の親しかった方々に挨拶状を作成・投函。
 兄と手分けしてやったら、夕刻に片づいた。
 兄もおれも、事務処理能力は優れているのである。
 月曜までかかるかと覚悟していたが、年内に処理すべき事項はほぼ終了……のはずである。
 夕刻の電車で帰阪する。
 クリスマスイブである。
 
 専属料理人が、鶏腿ローストなど並べて、一応それらしい雰囲気の食卓となった。
 「服喪」などで日常の楽しみを犠牲にしないでほしい……老母はくどいほどそういっていた。
 老母のいいつけを守って、遠慮なくワインをいただく。
 しばらくは大阪での生活となる。

12月25日(土) 穴蔵
 久しぶりに「終日穴蔵」パターンのつもりだったが、CHASKAに開店した「日本最大の売り場面積の書店」というのが気になって、午後、見物に行く。
 「MARUZEN & JUNKUDO」
 
 地下1階〜7階まで200万冊という。
 えげつない人出である。
 宇宙関係、ジャズ書、落語、SFなどの棚をチェックしてみる。確かに充実している。
 レジが1階だけで、1階には長い長い行列ができている。
 おれは行列に並んでまで買い物や食事はしない。
 CDショップ(特にTower)で、レジの処理が遅いのでCDを棚に戻して店を出たことが何度もある。
 並んでいる間に理性が働いて「衝動買い」が防止できるから、行列は悪いことではない。
 が、(たとえばの話だが)7階で辞書を選んで1階に降りたら長い行列というのは困るなあ。
 しかし、わが家からいちばん近い書店(徒歩6、7分)が日本最大というのはありがたいことである。
 近所に「現役本」の図書館が出来たようなものだからなあ。
 寒い。
 午後、外は6℃で風が強い。
 まっすぐ帰館。
 夜は専属料理人が昨日の鶏肉残りを応用して、鶏スープの湯豆腐、鶏肉どっさりのグラタンなどを並べる。
 ビール、安ワイン少し。
 しばらくライブを聴いていない。
 本日はニューサンでラスカルズの本年度ラストライブ、クリスマスだし、超満員であろう。
 ちょっと迷うが、疲労もあり、本を読みつつ早寝するのである。

12月26日(日) 穴蔵
 終日穴蔵。
 寒い。
 昼間、外は7℃である。
 食事に「自宅」へ行く以外、穴蔵をいずることなし。
 午後の4時間ほどは、NHK-FMで「ラブリー40周年記念コンサート」中心のジャズ番組があり、これを聴きながら雑事の処理。
 今秋の「ラブリー40周年記念コンサート」には行けなかったけど、熱気が伝わってくるなあ。
 夜は専属料理人に色々並べてもらってビール、酒。
 ちょっと飲み過ぎ。
 寝る。

12月27日(月) 穴蔵/ウロウロ/ハチ
 終日穴蔵にて雑事の処理。
 昼前に1時間ほど梅田へ行き、金融機関関係など一回り。
 午後にはタイムマシン関係の「決算」も終了する。
 これで(SF関係以外)今年の仕事は全部片づいた。いや、28〜31日に新規の受注があれば別だけど。
 年内は気楽に過ごすことにしよう。
 ということで、夜は中華系。専属料理人が並べた餃子、麻婆豆腐、野菜炒めでビールを飲む。
 21時頃に、久しぶりにハチへ。
 ガラガラかと思ったら、ギターのカルテットがライブやってた。ただしオーディエンスはおれひとり。
 カウンターでバーボン水割りを飲む。
 
 ↑こんな雰囲気。
 「柳も泣いている」……これは追悼曲としてもなかなかいいのではないか。
 センチメンタルになるぜ。
 寒い中、歩いて帰館23時。寝る。

12月28日(火) 穴蔵/鈴木孝紀ライブ@ハチ
 穴蔵にて、本を読んだり、CDやDVDの整理をしたり。
 時間ができたらやろうと思っていたことがずいぶん多いことに気づく。
 ま、5、6年はヒマを持てあますことはなさそうな。
 ということで、夜、専属料理人が並べた地味めのメニュー(カレイの煮付けとかほうれん草とか)で熱燗飲んでいたら、ハチのマスターから電話。
 本日、鈴木孝紀(cl)と馬田諭(gt)のライブだという。
 20時過ぎにハチへ行く。
 ターキーのロック飲みつつ、鈴木くんのクラを楽しむ。
 おれの今年最後のライブ鑑賞にふさわしいではないか。
 
 最初が「I'm Getting Sentimental over You」……まったくおれがよく書くフレーズ「センチメンタルになるぜ」そのままである。
 追悼曲としても心にしみる。いい供養になった。
 「Hush-a-bye」も泣かせるなあ。モンティ・サンシャイン→ジョニー・グリフィン→森山威男につながる好演。リズムを自由にしてシャンソンの雰囲気を残しているところがいい。
 最後まで聴きたいが、明朝が早いので1ステのみで失礼する。
 鈴木孝紀さんは急成長している。
 来年の活躍が楽しみである。

12月29日(水) 大阪←→播州龍野
 早朝の電車で播州龍野へ移動する。
 まだ処理すべき案件が幾つか判明。
 播州龍野に滞在中の兄といっしょに、さささっと片づける。
 年末年始の予定などを打ち合わせてから、午後の電車で帰阪する。
 やはり、なんとなく慌ただしいのであった。
 ということで、夜は専属料理人が並べてくれた、肝煮、カツ・牡蠣フライ、掘りたてのレンコンの揚げたの、トマトと蕪のサラダなどでビール、安ワイン少し。
  
 今やリビングで放し飼いのインコ、おれの膝から上ってきてキンタマつついたあと、専属料理人の肩に移動しておとなしくしている。
 専属料理人が先に逝くなら、インコも棺に入れてあげることにするからね。

12月30日(木) 穴蔵/謎の納会
 寒いのであった。
 熱はないが、腹具合がおかしく、食欲もない。
 終日穴蔵……のつもりであったが、年末の恒例行事があり、夕刻、阪急石橋の海鮮居酒屋へ行く。
 年末の定例会議というか納会というか……忘年会に見えないでもないがれっきとした「総会」である。
 議事は10分間のシャンシャンで終了する。
 あとは、ふぐのコースで生中1杯、ヒレ酒、つぎ足しは1合のみ、雑炊少しで終わる。
 例年に較べると酒量は半分以下である。
 まっすぐ帰館。
 早寝するのである。

12月31日(金) 穴蔵
 体調いまひとつである。
 特に腹具合がよろしくないので、あまり食べる気にもならず。
 終日穴蔵。
 NHK-FMで昼から延々と「東京JAZZ2010」の録音を放送しているので、それを聞きながら、仕事納めというか仕事始めというか、要するに「帳簿」およびパソコン内のそれに相当するファイルを2011年用に更新する。
 夜、テレビで「屁のつっぱり」石井慧を見てみたい気もするが、いつ登場するのかわからない。
 寺久保エレナが物怖じせずにロン・カーターをバックに吹きまくり、ハン・ベニングのドラムに感心し、ジュシュア・レッドマン・トリオを聴いているあたりで眠くなってきた。
 寝る。

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