『マッドサイエンティストの手帳』420
●マッドサイエンティスト日記(2008年1月後半)
主な事件
・風呂本佳苗リサイタル(18日)
・創サポ講義(19日)
・マホガーホール(20日)
・大阪府知事選(27日)
1月16日(水) 播州龍野の日常
下男仕事の合間、終日本を読んで過ごす。
●たむらまさき・青山真治『酔眼のまち――ゴールデン街』(朝日新書)
映画カメラマンの語りを青山真治氏が構成したもの。
ゴールデン街は70年代末の「まえだ」しか知らないけど、この周辺、映画関係者のハローワーク状態であったのか。タイトルから想像したほど無茶苦茶な生活ではなく、むしろ真摯な仕事ぶりである。
●小川隆夫・平野啓一郎『マイルス・デイヴィスとは誰か』(平凡社新書)
マイルスを、マイルスに影響した人・影響された人・21人の人物論からマイルス像を浮かび上がらせるという、ありそうで意外にも前例のない企画である。ぼくはマイルスの熱心な聴き手ではなく、むしろ周辺人物(本書の21人の中でなら、ロリンズ、コルトレーン、エヴァンスなど)の方を聴く方が多いから、マイルス中心の解説書よりも面白い。
●『和田誠切抜帖』(新書館)
『雪国』以来、この人の本は、絵も文章も、いつ手にしても飽きないなあ。
1月17日(木) 播州龍野の日常
定刻4時に目が覚める。
5時46分、阪神淡路大震災から13年である。
この日のこの時刻は、毎年、やはり神妙な気分になる。追悼・慰霊ということもあるが、また何か起こるのではないかという不安の方が大きい。
テレビのニュースでは寒波到来で全国的に「寒い一日」らしいのだが、播州龍野の昼間は穏やかなものである。
運動不足なので、午後1時間ほど川沿いを散歩。
と、わが家から1キロほど上流、祇園橋北で何やら大きな工事中。ここでも工事か。
「災害復旧工事」と表示してあるが、このあたり、何か災害でダメージ受けてたっけ。
時々歩くコースだけど、何も気づかなかったがなあ。
老母の歌集のために撮った写真にもこの付近のが1枚ある。
少し上流へ行けば、昔のままの雰囲気は残っているのだが。
揖保川もだんだんとコンクリート川になっていくのだなあ……。嗚呼。
1月18日(金) 播州龍野→大阪/風呂本佳苗リサイタル
朝8時半からのNHKテレビに米朝師匠が登場。
「朝早うからお囃子を聞くと妙な気分になりますな」と、生放送で50分。
途中から小米朝さんも。
幼少期のこと、ふたりの師匠(正岡容、米團治)のことから小米朝さんの襲名のことまで、話の内容は、まあほとんど知っていることだが、ともかくお元気で何よりである。
午後の電車で大阪方面に向かう。
西宮北口で途中下車。
兵庫県立芸術文化センターへ。
イギリスと東京で活躍する美人ピアニスト・風呂本佳苗さんの『ピアノリサイタル2008〜幼き日々への誘い〜』……おれだって、ジャズばかりでなく、たまにはこういうのも聴くのである。
シューマンの「子供の情景 作品15」からショパンの子守歌、チャイコフスキー、ヴィラ=ロボス「ブラジルの子供の謝肉祭」、そしてドビュッシーの「子供の領分」まで、「子供のための曲」というより「子供の頃を思い出させる」選曲である。
繊細にして時に激しく……特に「ブラジルの子供の謝肉祭」は初めて聴くが、(なんでも風呂本さんは左利きで、そこに特長があるとか聞いたが)躍動的なリズムと曲想で、これがいちばん面白かった。
全部で40曲くらいになるのかな。すべて暗譜、緩急自在に弾き切る。譜面すべてが血肉になっていて指先まで行き渡っている印象。プロとは恐ろしいものである。
休憩時間にロビーでワインを1グラス。と、なぜか芦辺拓さんや有栖川有栖さんなど、ミステリー関係が数人いて、ガリレオから大阪の政局や鞍馬天狗のことなどしばし雑談。不思議なリサイタルでもあった。
1月19日(土) 穴蔵/創サポ講義
終日穴蔵。
色々と雑用を片づける。
夕刻、地下鉄で天満橋・エルおおさかへ。
創作サポートセンターの講義の日である。
今回から講義の方式を少し変える。
要するに「SFの定義」「SFの歴史」などについてはバッサリ削除したのである。「定義」なんて40年以上やっててもわからないことだし、わからないことを話すわけにもいかない。定義がわかったから書けるものではない。ただし「SFとは何か」を考えることは必要であり、書き始めれば考えざるを得ない、考えない方がおかしいのであって、その段階で議論すべきなのである。
削った分、「具体的な執筆方法」に徹して話すことにした。
一例として、3年ほど前に切り抜いておいた新聞写真を見せる。
これはヘリコプターで海水をくみ上げる作業中の写真で見事な波紋が出来ている。
気に入って残していたもの。
このイメージを短編に使ったのは2年以上経ってから。
……写真に限らず、こういうのを何百と溜めておくと役に立つことがある。
熱心な雰囲気が伝わってきて、こちらも面白かった。
1月20日(日) マホガーホール
昼過ぎに心斎橋へ。
マホガニーホールで、先週から来日しているミッシェル・ボス・ケロウ夫妻をゲストに、ラスカルズとレッドビーンズのピックアップメンバーによるコンサートである。
ボスはトランペットとクラリネットを吹き分けるという珍しいプレイヤーで、キーボードもこなす上、本職?はイラストレーターでもあるらしい。
孫の顔を見に東京へ来たのがラスカルズと35年ぶりに再会するきっかけになったとか。
さすがに「ラ・マルセイエーズ」の演奏となると溌剌としている。
日本で「君が代」をジャズにしたら抗議がきそうだが、ニューオリンズの場合はその歴史からいって、昔からジャズのスタンダード・ナンバーなのである。
夕刻終了。
有志30人ほど、ゾロゾロ歩いて心斎橋「美々卯」へ移動、新年会となる。
本日もちと飲み過ぎか。
1月21日(月) 穴蔵/ハチ
大寒である。そして確かに寒い。
終日穴蔵……といきたいところなれど、平日の昼間にしか処理できない雑事が色々あり、昼過ぎから自転車で出かける。
梅田界隈ウロウロ。
ハチに寄ってヒーコ(←古いねえ)。
ハチママ、どうも昼間に飲んだくれの大ちゃんが来なくなって、何やかやいいつつもストレス発散の相手がいなくて鬱屈しているようである。ま、落ち着けばまたモンスター・大ちゃんも出現するであろう。
旭屋、紀伊国屋、ヨドバシを回って帰館。
昨秋から使い出した携帯のデジカメが一応300万画素なので、どの程度の画質かと、microSDをヨドバシで買って帰る。
コンデジと比較してみるが、こりゃ持ち歩きデジカメとしてもペケであるなあ。
ちなみに下のが携帯で撮ったのの縮小。HP用に使えないでもない程度か。
で、夜は専属料理人が作ってくれたオニオンの何とかスープ、鰯のキシュ、サラダ。
これにパンを焼いてスープとともに食しつつ、ビール、ワイン。
20時からのNHKハイビジョンでジュリー・アンドリュースのステージ(1993年の録画)を見ていたら、20:30頃からアンドレ・プレヴィン指揮・ピアノとN響での「ラプソディ・イン・ブルー」となる。これは素晴らしい。ちゃんと番組表に出しといてよの気分である。
ということで、ワイン2グラスほどのつもりが、ずいぶん飲んでしまった。
そろそろ22時の定刻就眠時刻。
寝る。
1月22日(火) 大阪→播州龍野
早朝の電車で播州龍野へ移動。
午前9時の龍野書斎、室温は5℃。キンタマが急速に収縮するのであった。
下男仕事色々。
ボンクラ息子その2から貰った古い携帯CDプレイヤーがついに不調になった。
ジョーシン龍野店へ行き、9千なんぼのを買ってきて、タイムドメインに接続する。
やはりパソコンのスピーカーとは雲泥の差である。
机下のハロゲンヒーターでキンタマを暖めつつ、ケン・ペプロフスキー・カルテット「LOST IN THE STARS」(nagel heyer)などを聴く。
1月23日(水) 播州龍野の日常
終日小雨が降りつづく。
老母を近くの医院へ検診に連れて行く。天気が悪いだけに空いていて、待ち時間なしであった。この2年間で初めてのことである。
午後はCD聴きつつ本を読んで過ごす。
野尻ボードで話題になった、小方厚「音律と音階の科学」(ブルーバックス)……コード進行をこんなにわかりやすく解説した本は初めてではないか。ジャイアント・ステップスの図解なんて目からウロコというか耳からコルクというか……。
小方厚先生はジャズ(ヴァイブ/大井モデルのマレット使用なんて嬉しいねえ)も演るし、かなりのSFファンのようでもある。
1月24日(木) 播州龍野の日常
わ、珍しくも午前6時まで寝ていた。
不思議なことに「春の気配」を覚える。意外に暖かいのである。
テレビでは全国的に猛吹雪みたいな印象だが、播州龍野は普通の天気である。
下男仕事の合間に本を読んで過ごす。
梅原淳「鉄道用語の不思議」(朝日新書)……おれは「鉄」ではないので、へぇ〜〜の連続である。
運動不足なので、夕刻に近い午後、揖保川沿いに1時間ほど散歩。
風は冷たいが雰囲気は明らかに「早春」である。
おれほどの寒がりがいうのだから間違いない。
夜、湯割り飲みつつ、NHK「鞍馬天狗」2回目を見る。先週1回目を見たので、惰性である。
チャンバラ場面が物足りないなあ。斬殺場面を隠すのは皆様のNHKだからしかたないか。
野村萬斎、やはり橋爪紳也さんに似ているなあ。
この番組が半年早く放映されて人気が出ておれば、橋爪さんも市長選を「大阪の鞍馬天狗」で戦えたのになあ。「大阪のガリレオ」よりも受けたはず。
1月25日(金) 播州龍野の日常
わ、午前5時まで寝てしまった。
昨夜の天気予報では、朝の姫路地方は-2℃というので相当な寒さを覚悟していたが、窓外の寒暖計は2℃である。
積雪している。
が、そんなに寒くはない。
下男仕事の合間に本を読んで過ごす。
「奇想遺産 世界のふしぎ建築物語」(新潮社)……これは朝日新聞に連載されていた記事の集成。「奇想」といえるのは少なく、名建築の方が多いが、出不精にはありがたい本である。
奇想というかトンデモ建築なら、北朝鮮に色々ありそうで、崩壊後が楽しみである。
1月26日(土) 播州龍野→大阪
出所日である。
午後の電車で移動、夕刻大阪に戻る。
気分も軽く帰阪したのだが……
穴蔵で雑事色々。
室温15℃。この温度なら暖房した龍野の書斎と変わらない……と思っていたら、なぜか体が急速に冷えてきた。
2日ぶりにシャワーを浴びたら、一時的には暖まったが、ちと悪寒。
さらに……専属料理人の作った夕食メニュー、色々並んでいるが、時間をかけたから?冷めてきたのばかり。
なべ焼きうどんを自分で作った方がましである。
ビールもまずく、部屋も寒く、食事した気分にならない。何しに帰ってきたことやら……。
穴蔵に戻り、エアコン全開、コタツに潜り込んで本を読むことにする。
播州龍野より大阪が寒いとは珍しい。人災か。
1月27日(日) 穴蔵/府知事選
穴蔵にこもる。
終日穴蔵……といきたいのだが、そうもいかず。
昼前に大阪府知事選の投票に行く。
おれは政治的発言は控えるようにしているので、府知事選についても投票締切まで書かなかったが、投票したい候補が皆無の選挙ほど虚しいものはない。が、投票だけはした。
羽柴秀吉が立候補してたら、かれに投票したかも。
本日、専属料理人がその選挙の立ち会いで終日拘束されているため、食事は自分でやらねばならぬ。
作るのは面倒。キムチ味に飢えていたので、投票後、自転車で天五の「玉一・イサク店」へ行って豆腐チゲ定食。
ビール一杯。最後はごはんを鍋にぶち込んで、韓国風リゾット……クッパといえばいいのか。これでジンロの湯割り1杯。たまらんなあ。
帰館してテレビを見れば、大阪女子マラソン、独走していた福士が失速・脱落していくところであった。面白いじゃないか。
ボブ・ウィルバーとケニー・ダバーンのデュオなど聴いていたら、大相撲、白鵬〜朝青龍の優勝決定の一番となった。
白が勝ったが、朝やん、期待にこたえてくれる負け方ではない。もっと無様に負けろよ。
ということで、21時前に専属料理人が帰館。
結局、夕食は用意してくれた。
ほぼ同時に府知事選の「当確」が出る。
ということで本日は、面白いことと失望、意外性と下馬評通り、落差が極端に大きい、けったいな1日であった。
NHK-FMで伊藤君子の津軽弁ジャズを聴きつつ、そろそろ就眠である。
1月28日(月) 穴蔵/ウロウロ
終日穴蔵……と行きたいところだが、平日の昼間に限定される雑事もあり、昼前に出かけて、徒歩で梅田ウロウロ。
ハチでランチ。
旭屋、紀伊国屋に寄って帰館。
小松左京マガジン第29巻が届いている。
親っさんの「喜寿祝賀特別号」(本日1月28日が77歳の誕生日である)だが、表紙がなんと生頼範義氏による「肖像画」(といっていいんじゃないか)である。なんとも凄い迫力である。
この表紙画だけでも入会の値打ちありとお薦めする次第。
千葉から鹿児島まで歩き、その後、宗谷岬から千葉まで歩いて、夫婦で日本縦断を達成したぶんきちくんが、明日から仕上げ?で、沖縄本島を歩きはじめる。
また毎日、目が離せないことになるなあ。
1月29日(火) 穴蔵
定刻朝4時に起きる。
終日小雨が降り続く。
こんな日は終日穴蔵……といきたいところなれど……というフレーズが2日つづいたが、本日は本当に終日穴蔵にこもって過ごした。
昼食と夕食に「自宅」へパジャマの上にブルゾン羽織って往復しただけである。
仕事は……少しだけしたのであった。いと少なしを。
山本弘さんの『“環境問題のウソ”のウソ』……これはトンデモ本とちがって極めてマジメに(と学会の姿勢とはちがう)書かれている。じつは、これを読むまで、おれは武田邦彦と池田清彦を混同していた。というより、池田清彦『環境問題のウソ』しか読んでおらず、武田邦彦については、たかじんの番組も含めて知らなかったのである。
順序が逆になるが、これから武田本を(買うことないからジュンク堂ででも)座り読みすることにする。
が、来月になりそう。
明日から田舎・播州龍野行きである。
1月30日(水) 大阪→播州龍野
早朝の電車で播州龍野へ移動。
相変わらずの下男仕事。
タイムマシン格納庫にて雑用も。タイムマシン関係、立ち消えと思っていた話の復活を含めて、続けて2件。ゼンジー北京師匠のお祓いを受けたからであろうか。
夕刻のニュースは、中国製冷凍餃子から殺虫剤(農薬)検出でもちきり。一応冷蔵庫をチェックする。冷凍食品はめったに使用しない(冷凍うどんくらいか)し、出来合いの総菜もあまり買わないから、まず心配はない。料理人としての矜持である……などと豆腐工房の湯豆腐で一杯やりながらニュースを見ていたら、おでん用の牛スジが天洋食品のリストに出てきたのでギョ。食べた可能性のあるのはこれくらいか。
1月31日(木) 播州龍野の日常
下男仕事の合間に少しは仕事もするのであった。
メールにてタイムマシンの引き合い1件。
ゼンジー北京師匠の御利益、本物のようである。
運動不足なので、午後1時間ほど川沿いを散歩。
龍野橋東詰のガレリアでコーヒー。
揖保川と鶏籠山の冬景色をボケーーーッと眺めているのもいいものである。
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