『マッドサイエンティストの手帳』419
●マッドサイエンティスト日記(2008年1月前半)
主な事件
・ラスカルズ聴き初め(5日)
・堀川戎(9日)
・京都ウロウロ(10日)
・NEW YEAR JAZZ PARTY 2008(13日)
1月1日(火) 播州龍野の元旦
わ、早寝したにもかかわらず、7時前まで寝てしまった。むさしくん、元旦も『朝ミラ』をやっとるのだが、新年の挨拶は聞き逃してしまった。
曇天の予報だったのが、雲ひとつない快晴である。
老母が起床する気配あり、あわてて雑煮の用意。
餅をレンジで加熱したらドロドロになる。これだから粘弾性体は嫌なんだ……と思ったら、去年の元旦にも同じことやってたのを思い出した。
餅2個を無駄にして雑煮完成。
大阪から持ってきた小ぶりの重箱を開封する。
お、エビまで入っているではないか。
朝酒はやめて、普通に食事。
終日本を読んで過ごす。
静かなものである。
1月2日(水) 播州龍野の日常
本日も晴天なり。
漫然と箱根駅伝を見るが、退屈になり、昼前に1時間ほど散歩。
龍野城址から龍野公園、龍野神社まで行ってみる。人影なし。
新年から「仕事」のつもりだったが、今ひとつ気分が乗らない。
午後は本を読んで過ごす。
明日は少し動くことにする。
1月3日(木) 播州龍野←→大阪
未明、姫新線の始発で大阪へ移動する。
5日まで「出所」できない事情が生じて、本日のみ「仮出所」である。
色々雑事があるので、日帰りで大阪往復することに。
ということで、午前9時に大阪の自宅に着く。専属料理人は起床したばかり。気楽なものである。ここでやっと朝食にありつく。
穴蔵にて雑事色々。
昼は専属料理人がパスタを茹でてくれたので、これで白ワイン。ちょっと正月ムードである。
が、酔っぱらってもいられぬ。
専属料理人に老母の夕食用食材を用意してもらって、14時半に出て、また播州龍野へ向かう。
Uターン・ラッシュと逆方向だから電車は空いていると予想していたのに、街に浮かれ出てた連中で結構混んでいる。
帰着すればもう暗い。
しんどいことである。
1月4日(金) 播州龍野の日常
一応仕事始めである。
タイムマシン格納庫に籠もる。
静かなものである。
海外からの連絡がポツンとあっただけ。日本は開店休業状態か、あるいは電話など邪魔が入らないうちにと開発業務に没頭しているのかも。
ということで、おれもAUTOCADをちょっと使う。
キンタマが収縮してきたので、夜はシチュー代わりに、具だくさんの粕汁を作り、これで「龍力」大吟醸。
オセチも本日が限界なので、これを肴に飲み続け。やっと正月気分である。回るなあ。
早寝。
1月5日(土) 播州龍野→大阪/ラスカルズ聴き初め
酔っぱらって早寝したら、定刻午前2時に目が覚めてしまった。
朝刊が届くまで、読んだり寝たり30分周期の繰り返し。
日の出前に起きて、心も軽く下男仕事に勤しむのであった。
午後の電車で大阪へ移動。
夕刻、梅田で、遙か東の方角から来た兄と合流。
まずは天ぷらで一杯。
播州龍野では、揚げ物ができない事情から、天ぷらとか串カツに飢えるのである。
あとはニューサントリー5へ。
ニューオリンズ・ラスカルズの聴き初めである。
志賀さんも(リハビリ中につき最初の3曲のみ/あとはレッドビーンズの池本さんが助っ人)出演していて、新年早々、最高のアンサンブルが堪能できた。
新年、上々のスタートというべきであろう。
大阪泊の兄と別れて、歩いて帰館。
明日からしばらくは穴蔵生活である。
1月6日(日) 穴蔵
わ、昨夜は夜中までライブを楽しんだものだから、目覚めれば7時を過ぎている。
朝食の食材は昨夜運び込んでおいたから、湯を沸かすだけで優雅な朝食。
着替えもせず、昼食・夕食以外は終日穴蔵にて過ごす。
至福の時間なり。
書斎を新年用に整備する。
カレンダーの表紙を取って、1月を表示。
わが愛用するのは、タイムマシン部品関係の某社が届けてくれる「三ツ星ベルト」のカレンダーである。
機械系の方ならお馴染みであろう。
鉄工所や自動車の整備工場に掛けてあることが多い。切削油で汚れてるのなんて最高の雰囲気である。
デザインは垢抜けないが、ともかく「現場」に似合う。
「書斎」にはどうか……いや、これが最高のカレンダー。
陰暦が併記されているし、干支や諸々の行事が細かく表記されている。
本日は陰暦では11月28日・友引・きのとみ・六白・小寒である。
明日は七草・三隣亡。
こんなに実用的な暦はないと思う。
SF映画で、日本の宇宙船のキャビンに「三ツ星ベルトのカレンダー」が掛けてある場面があったら、おれは感動するだろうなあ。
伝動技術の基礎を支える三ツ星ベルトに栄光あれ!
1月7日(月) 穴蔵/ハチ年始
朝から小雨が降っているのであった。
こんな日は穴蔵にこもるに限る。
正月は終わった。
本格的に始動である……と思いつつ、今ひとつ気合いが入らない。
午後、雨がやんだので、ハチに年始に行く。
閑散。実質初日が雨ではなあ。
ま、十日戎にまた来ることにして、まっすぐ帰館。
徒歩約5000歩である。
夜は、専属料理人が中華風2品に中華粥を作る。
悪い企画ではないが、ビールのあと、湯割りで中華粥(でかい鶏肉入り)を食べると、おれの場合ちょっともたれる。
そろそろ就眠だが、悪夢を見そうである。
1月8日(火) 穴蔵/ウロウロ
夕食に食べ慣れない穀類を摂取したら、案の定寝苦しく、悪夢を見た。
いやにリアルで、そのまま作品になりそうな。
朝5時頃にメモをとるが、書いているうちに曖昧になってくる。
論理的にはおかしいが、使えそうなイメージが幾つか残れば、寝苦しさの対価があったというべきであろう。
午前中、穴蔵。
秋山直紀くんの参考人質疑中継を見る。なかなかしたたかな男であるなあ。
福岡の幼児3人殺し・今林大(ふとし)は危険運転致死傷罪が適用されず懲役7年半の判決。フトシが出てきた時には、特例として、国家が召し上げた「報復権」を一時的に被害者家族に戻してあげて、仇討ち復活させてあげたいものである。仇討ち権を行使するかどうかはご家族におまかせすることにして。
どうも血圧が上昇するニュースばかり。
昼、雑事あって、自転車で梅田ウロウロ。
ジャズの専門店「ミムラ」に寄る。
今年のミムラさんの年賀状をいただく。
「ガナちゃんの枯葉」で知られるエロール・ガーナーである。ジャケット合成かと思ったら、オリジナル。よくこんなに雰囲気の似た海岸があったものである。
午後も穴蔵。
夜、NHKの「クローズアップ現代/月探査機“かぐや”最新報告」は最新の月面の映像を紹介して、稀に見るいい番組であった。
専属料理人の並べてくれた数皿でワインを飲みながらクレーターの画像を楽しめるなんて、至福の時間である。
本日はちと飲み過ぎなり。
1月9日(水) ハチ/堀川戎
晴。暖かく穏やかな日である。
えべっさん……十日戎……の宵宮である。
タイムマシンの商売繁盛をお願いに行かねばの娘。
昼、昨年の福笹を持って、専属料理人と歩いて梅田へ。
ハチに「往路」に寄る。帰路に寄ったのでは「福」をばらまいてしまからなあ。
ネットでお馴染みの錯乱坊さんがいて、新年の挨拶。
ハチ・ランチでビール一杯。
あと、堀川戎へ。
桂米八さんに祓ってもらう年は好調なのだが……今年は遭遇できなかった。
が、今年は同じ場所にゼンジー北京師匠が鎮座してはった。
「ゼンジー師匠! 福をよろしくお授けください!」
「タネもシカケもちょとある」福笹を求めて、ゼンジー師匠の御祓いを受ける。
曲独楽と手品、どちらの福が大きいか……年末が楽しみなような怖いような。
福をまき散らさないよう、福笹持ってまっすぐ帰館するのであった。
1月10日(木) 京都ウロウロ/陶磁/ピッツァ/ラッシュ・ライフ/モラスキーさん
晴れて暖かい日である。
発作的に京都へ行くことになった。
専属料理人とJRで京都に向かい、京都駅から京都国立博物館まで歩く。
「憧れのヨーロッパ陶磁」展……これは専属料理人の趣味。
皿やカップはおれにはよくわからん。ま、ウィロー・パターンなど、オリエント趣味がヨーロッパに影響しているのなどは面白い。
博物館を出たらちょうど正午。
ここから少し上、京女の少し下に「ピッツァの抜群においしい店」があるというので、そちらへ行ってみる。
パッパラパー……じゃなかった「IL PAPPALARD」という店。
専属料理人のいうに「前は予約なしだからずいぶん並んだ」そうだが、本日は空いていた。
ランチのパスタとピッツァをシェアしてグラスワイン。
ま、こんなものか。
ここから歩いて、大谷本廟……ちょっとお参り。
10年以上前に、ややこしい事情から「ベランダに置いてある」という友人の骨壺をおれが預かって「納骨」に来て以来である。
五条から出町柳へ、京阪で移動する。
叡山鉄道・出町柳のすぐ前にあるジャズ喫茶「ラッシュ・ライフ」に寄る。
ここは『ジョージ・ルイス』の発売に協力いただいている店で、はじめて挨拶に寄せていただく。
入ったら、なんと、ジョージ・ルイス参加のプレザベーション・ホール・バンドのがかかっていた。めったにニューオリンズ・ジャズはかけないのだとか。まるでこちらの来訪を予期されてたようなタイミングだ。
ジャズ喫茶といっても、明るい雰囲気のカウンター店である。
コーヒーをいただく。
ここから、京都に住んでいるマイク・モラスキーさんに連絡してみる。
原稿の締切で忙しいかなと思ったが、「今、鴨川べりで尺八の練習中だから、息抜きかねて、自転車で行くよ」という。
せっかくだから、吉田神社の裏手に「林の中にすごくいい雰囲気の喫茶店がある」ので、そちらで会おうということになる。
百万遍を通って吉田神社へ向かったのだが……。
「茂庵」という店、確かに「林の中」ではあるが「吉田山の山頂」であって、ちょっとしたハイキング気分である。息切れ寸前でたどり着く。
京都の町並みを見下ろす眺望は素晴らしい。それにしても、モラさん、早くも色々な場所を開拓しているなあ。
ここで1時間ほど雑談。モラスキーさんが執筆中の論文は1959年の「ファンキー」に関わる内容で、おれもすごく関心のあるところ(トニー・スコットの来日事情など調べたり、本人に確認したりしたものである)で、発表されるのが待ち遠しい。
吉田神社でモラさんと別れ、鴨川べりまで出たら、ちょうど日没の瞬間であった。
四条河原町から阪急で帰阪。
16711歩。
よく歩いた日である。
1月11日(金) 穴蔵
昨日の反動というわけでもないが、終日穴蔵。
「喪に服すべき」事情のある日でもあり、閉じこもることにする。
少しは仕事もするのであった。
某SF創作講座の資料作り。うーん、肝心のところに迷いが生じる。
「SFとは何か」と「SFをどう書くか」はアプローチがまったく違う。おれの場合、前者に迷いはないが、後者については、やはり時代によって変わらざるをえないと思うのである。ただ、売れ線を狙って変わるべきではなく、さりとて(やや古めかしい)自分の方法がベストではないわけだし。
結局は、参考作品として挙げる作品を、書店で入手できる範囲に限定すべきか。
『スポンサーから一言』とか『宇宙震』とか『火星人ゴーホーム』も、いまは絶版ではないか?
作法は色々あるわけで、おれなんぞ、理解はしてるけど体質にあわない方法はいっぱいあるわけだしなあ。
おれの持論は、読んでみないと資質は判定できない、である。
午後、宅配便発送のためにちょっと外出。曇天の空から小雨、急に本格的な降雨となる。
向かいのビルで窓の清掃中。ゴンドラではなく、ロープ1本で左右にスイングしつつ器用に降下している。
↑上の2点と右側中ほどの1点、計3氏。
急な雨で、ひとりくらい落下しないかとしばらく見物するが、さすがにプロであるなあ。
あ、別に墜落を期待していたわけじゃないよ。
「宇宙清掃隊」というアイデアを思いついて、何かヒントになる行動をとってくれないかなと眺めていただけなんだから。
1月12日(土) 穴蔵/ワイルドバンチ
昨夜来の雨が降り続いている。
こういう日は穴蔵に閉じこもるに限る。
少しは仕事もするのであった。
書き忘れていたが、『ジャズ批評』1月号に『ジョージ・ルイス』の書評が載っている。
……スイングがビバップに取って代わられたわけではないように、ニューオリンズ・ジャズも脈々と生きている……ジャズはジャズである……と好意的な書評。実際、ジョージ・ルイスはインタビューで、好きなミュージシャンにガレスピーを挙げていたり、オーネット・コールマンとはお互いに敬意を表していたり、ジャズは広いのである。
この書評、どうやら「ワイルドバンチ」で11月7日に会った○藤さんルートで紹介していただいたものらしい。
ありがたいことである。
ということで、夕方に近い午後、雨があがったので、自転車でワイルドバンチへ行く。
と、庄内さん「ついさっきまで堀さんのファンという人が来てはりましたよ」
へえっ?!
どうやら、以前、青空書房でも接近遭遇の人らしい。
連休を利用して関東から「古書巡りの旅」をしているという青年がいて、『ジョージ・ルイス』1冊お買いあげいただく。ありがとうございました。
店内を暗くして、大スクリーンで秘蔵のDVDを10分ほど見せてもらう。
なるほど音楽DVDは大画面でないと面白くないのがよくわかる。
が……穴蔵に大画面の機器を導入するのは迷うところだ。
おそらく仕事しなくなってしまうだろうからなあ。
※ついでながら、「ワイルドバンチ」では、2月15日(金)に白石かずこ(詩朗読)+沖至(tp)のコラボレーションが企画されております。
1月13日(日) NEW YEAR JAZZ PARTY
11時頃に専属料理人と出かける。
おれは自転車で、専属料理人はカート引いて徒歩で、梅田新道の「スーパードライ」へ。
新春恒例、NEW YEAR JAZZ PARTY で、会場で『ジョージ・ルイス』を販売するために昼前に搬入する。
末廣光夫さんの司会で、関西のディキシー系6バンドが出演。
特別ゲストに、ラスカルズがニューオリンズで知り合ったフランスの青年(当時)ミシェル・ボス・ケロウ……なんと35年ぶりの来日再会という。クラリネットとトランペットを吹くというのが珍しい。
もうひとりのゲストは東京からのピアノ、深澤芳美さん。
13時、演奏が始まってしまえば、販売は専属料理人に任せて、おれは一観客となり、フリードリンク、もっぱらビール飲み放題、途中からワインに切り替える。
ラスカルズも本日はフルメンバーが揃い、訳者・小中セツ子さんによる『ジョージ・ルイス』朗読+演奏も1曲、「オールド・ラグド・クロス」が披露された。
ということで、気がつけば17時である。
ニューサントリー5でアフターアワー・セッションがあるというので、徒歩5分のファイブへ移動。
こちらでは吉川弘之さん、ミシェル氏、河合さんの3clが聴けた。
気がつけば21時である。
帰路、専属料理人と近所の寿司屋に寄って軽く仕上げ。
わ、22時に近い。
9時間ほど飲みつづけ……これでは「事始め」の米朝師匠状態ではないか。
酩酊自転車で無事に帰れたのは奇跡としかいいようがない。
1月14日(月) 穴蔵
さすがに飲み過ぎである。
不思議に二日酔い気分はないが、反省して、本日は休肝日とする。
終日穴蔵。
少しは仕事をする……つもりが、ボケーーーーッと過ごしたのであった。
夕刻、朝青龍の惨敗で、やっと元気が出てくる。全国で快哉が叫ばれたのではなかろうか。
1月15日(火) 大阪→播州龍野
早朝の電車で播州龍野へ移動。
姫路から姫新線、「欅坂トンネル」を抜けると播州龍野の眺望が開ける……のだが、山陽自動車道ができてからは、その高架が視界をふさぎ、そして、先月あたりから、なにやら大がかりな工事が始まっている。
どうみても「廃棄物」関係にしか思えないが、何なのか。あとで調べてみることに。
播州の小京都といわれる田舎町も「トンネルを抜けるとゴミの山だった」になるのであろうか。
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