HORI AKIRA JALINET

『マッドサイエンティストの手帳』69

●横田順彌「明治の夢工房」(潮出版社)

久々のヨコジュン・ワールド

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 横田順彌氏の「明治夢工房」は久しぶりに楽しいヨコジュン・ワールドだ。
 横田氏の明治研究は多の追従を許さぬ境地にあって、「明治はいから文明史」や「明治おもしろ博覧会」など、読み物としての面白さもさることながら、資料的価値がすごく高い。
 ただ、こう立派な研究書が続けて出ると、以前のように「ヨコジュン」と呼んでは失礼な気もしてくる。
 が、そんな心配は無用だった。
 こんど出た「明治の夢工房」(潮出版社)は、コミック誌に連載されたという事情もあるが、明治の冒険雑誌を中心に、ビジュアルな面白記事を紹介していて、その切り口が、ハチャハチャSF的センス横溢、SFファン・ヨコジュンの洒落っ気に満ちた、じつに楽しい本である。
 冒頭の「『半獣怪人』の仕事はなんだ?」など、タイトルだけでもおかしい。そして、紹介してある挿絵が傑作なら、添えられたヨコジュンの「解説」が無茶苦茶に面白い。そして、いわれてみれば、シドニー近郊の森の「怪塔」にこんなのが「仕事もしないで」住んでいるというのは、確かに不思議だ。
 こんな調子で、火星人や「美人」や快男児が続々と登場する。
 やったぜ、ヨコジュン! と声をかけたくなる怪著……いや、快著である。


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