HORI AKIRA JALINET

『マッドサイエンティストの手帳』45

●マッドサイエンティスト日記(1997年11月後半)

主な事件
 ・さらば胴元
 ・宇宙飛行士は株券紙屑化の悪夢を見るか

1997年

11月16日(日)
 性懲りもなく本町の会社。たまたまわがボンクラ息子どもの母を兼任する「女中」が近所に来たので、近くの喫茶店でアフターヌーンティ。ビジネス街の日曜なのに結構客が入っている。女性誌にでも紹介されたのか。珍しく本格的な英国流の店、大量のケーキが出てくるが、わしゃビールの方がいいなあ。

11月17日(月)
 新聞休刊日を狙ったかのように北海道拓殖銀行の破綻のニュース。北洋銀行に営業権譲渡ということは、行員が移るということか……。いじめられるだろうなあ。
 三洋証券からやっと「株券」が戻ってきた。生まれてはじめて株券なるものを見る。今後、もう浮き世の義理が生じることはないだろうから、これ以外の「株券」なるものを手にすることは生涯ないだろう。さらば博打打ち諸君。

11月20日(木)
 早朝のひかりで清水市。次郎長一家の近所を通過して午後東京。
 19時過ぎまで業界の会合。
 20時過ぎ新宿へ。
 新宿ピットイン。「室内楽団・八向山」の出演。ぶるさん、minさんという「追っかけ組」とも遭遇。噂に聞く……色々なものも見聞、深夜ホテル帰館。

11月21日(金)
 都内数社。金曜の新幹線下りは混みあうため午後5時前のひかりで帰阪。

11月22日(土)
 早朝5時、民放の臨時ニュースで「山一証券破綻。自主廃業へ」と伝える。……なぜこの時間に臨時ニュースを見たかといえば、早朝の定点カメラが梅田方面から「わが部屋」を捕らえることがあって、ちょっとした実験を試みようとしていたのである。が、町並み映像のかわりにニュース。この時間、NHKは橋本がなんたらとかのニュースで、山一には触れない。どういうことなのか。まあ、わしゃ博打とは無縁だから、山一がどうなろうと関係ないのだが。
 日経新聞のトップが「山一破綻」である。ということはギリギリ午前1時には決まっていたのか。他紙は記事なし。日経のスクープか。NHKはなにをしているのか。
 ……と、博打の胴元破綻に関係なく、堺沖人工島で作業。
 夜、株屋のニュースよりも大事なNHK・FM「セッション97」で谷口英治セクステットを聞く。素晴らしい。

11月23日(日)
 性懲りもなく自転車で会社へ。途中、北浜の三洋証券、山一証券の前を通るが静かなものである。堺沖人工島で製作の機器の最終チェックを本町で行う。船積期限が迫っているためしかたがない。……原稿もこれくらいのペースで書くべきなんだろうなあ。
 昼までで終了。銀杏並木を眺めながらと御堂筋に出ると、銀杏が黄色くてきれいだが、やたら人が多い。女子駅伝とか。

11月24日(月)
 振替休日で世間の3連休3日目。
 新聞の山一の記事、もう「廃業」が既成事実化したような雰囲気である。今日、廃業申請というらしいのに。社員にとっては、連休中に会社が消滅したようなものだろう。半村良「夢の底から来た男」を思い出す。出社してみたら会社が消滅しているのが書き出しである。
 終日ごろ寝。

11月25日(火)
 某銀行株急落、金融不安、無縁ではない雰囲気が漂う。
 土井宇宙飛行士の「宇宙遊泳」……宇宙飛行士が株を大量に持っていたらどんな気分であろうか。

11月26日(水)
 大阪近郊の事業所から電話。昨夜、泥棒が入ったという。窓ガラスの一部を破って鍵を開けて事務所に侵入、被害数千円? ご苦労なことである。

11月27日(木)
 昼、そば屋で隣のふたり連れが、太平洋証券の課長代理が北浜で飛び降り自殺した現場を(その瞬間ではないが)目撃したという。
 とくに驚かず。

11月28日(金)
 代休とって播州龍野の実家へ。雑件色々。夜帰阪。

11月29日(土)
 性懲りもなく堺沖人工島で作業。

11月30日(日)
 性懲りもなく堺沖人工島で作業。夜まで。どうやら終了である。
 堺の工業地帯、晴れて星がきれいである。暗い空に吹き上げる蒸気の白さがいい。
 帰宅21時。


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