『マッドサイエンティストの手帳』295
●マッドサイエンティスト日記(2004年1月後半)
主な事件
・「配達」の日々(16日〜)
・雪のみちのくひとり旅(23日)
・「歌コ本」編集会議・ウチアゲ(29日)
2004年
1月16日(金)
早朝の電車で播州龍野へ移動。
実家のチェック。老母が新型の暖房機器を使いこなしているのかどうか心配であったのだが、まあ杞憂であった。80代半ばでパソコンは無理だが、FAXはきちんと使っていたのだから、頭脳明晰な方だろう。
頭脳は問題ないのだが、隣町(太子町)で先日来、「一夜に十軒以上」を荒らす泥棒が出没しており、防犯面が心配である。
……仕事場をこちらに移すかどうか迷うところだが、やはりこの寒さには耐えられない。
午後、姫路から旧同僚来訪、『桂歌之助』を1冊購入のためにわざわざ。
近所で仕事している同じく旧同僚加えて、臨時のOB会となる。
夕刻帰阪。
留守電に青空書房からの伝言。「「限定品」だけ追加しとくんなはれ」……1日にして10枚近くが出てしまったらしい。本は買ったがCDもという人がわざわざ来てくれたらしい。
3回忌過ぎて歌やん人気急上昇か。
1月17日(土)
わ、予報通り雪が降っている。
10時頃に雪は止んだので、自転車で青空書房へ「限定品」を届ける。
あと、地下鉄で西長堀の中央図書館。
夕方まで小説誌のコーナー。
年末からこの時期、SFと周辺分野、1年分の短篇の読み残しのチェックである。
帰宅すると、『桂歌之助』郵便振替で申込み○冊と、青空書房から今度は本の追加の留守電。ありがたいことである。
暗くなっているが、またも自転車で配達。
青空書房から、今度は大阪駅前通って、中央郵便局へ。郵送分を発送。
ついでにジュンク堂(堂島)と旭屋本店にも寄り、「古典芸能」コーナーをチェック。
どちらも米朝全集や『私の履歴書』、『桂枝雀』と並んでいるのが嬉しい。
ジュンク堂(2階)と旭屋(4階)
歌やんもついに米朝、枝雀と並んだのである。
夜、自転車で走ると体が冷える。
カモ鍋でワイン。
1月18日(日)
朝から中之島の府立図書館へ。
向かいの市役所、休日は例によってホームレス諸君の塒と化す。
黒猫一匹。これは野良か飼い猫か。……近所の公園には野良がネズミ算式に増えているのだが、中之島公園も似たような事情なのだろうか。
雑誌のコーナーで小説誌のチェック。
まだ読み落としが数冊。
『鉄腕アトム』が終る時間を見計らって喜多哲士さんに電話。図書館にもない分、さすが喜多さん、ちゃんと保有していることが判明。
昼、梅田で喜多さんから資料を借りる。
終日読み続け。
2003年の短篇、作者の50音順で、芦辺拓『太陽系七つの秘宝』、飯野文彦『お願い』、小川一水『老ヴォールの惑星』、梶尾真治『接続された女』、北野勇作『蛆の夜』、草上仁『セキュリティ・プロフェッショナル』、小林泰三『作られしもの』、菅浩江『フード病』『笑い袋』、田中啓文『トリフィドの日』、筒井康隆『空中喫煙者』、野尻抱介『宇宙検閲』、林譲治『重力の使命』、深堀骨『歌丸大将軍の砲兵隊』、藤田雅矢『飛行螺子』、牧野修『死小説』、森岡浩之『光の王』、山本弘『宇宙をぼくの手の上に』が、それぞれ作者の個性が出ていて面白かった。小川一水さんの「題材と筆致」、菅浩江さんと森岡浩之さんの時代感覚の鋭さには特に感心する。
「SF Japan」の「翻訳SF作品のタイトルを借りての競作」はそれぞれ趣向が凝らされていて面白く、SF作家はこういうことになると張り切るんだなあと、妙に感心する。が、「エロチックSF」の短篇は、はっきりいっていただけない。「森奈津子」特集と見ればいいのかもしれないが、特集を意識した部分が作品の質を落としている。「翻訳SF」特集に見られた遊び感覚が、ここでは楽屋落ちにしかなっていない。おれのSFファンとしての感覚が古いのかなあ。
『新選組』? SFの方が面白いよ。新選組は桂吉弥が登場する6月から見る。せっかく吉弥を起用したのなら、桂小五郎役は桂こごろうにすればよかったのになあ。
1月19日(月)
雑用多い日である。
午前中市内ウロウロ。
午後、穴蔵に戻ると、ジュンク堂の担当Uさんから電話、『桂歌之助』の追加である。
すぐ自転車で「お届け」……ジュンク堂は「社内便」もあって、東京店にも置いてもらえるという。ありがたいことである。
1月20日(火)
変態ヤマタクを破ったイケメン古賀の学歴詐称というニュースで朝から喧しい。
卒業はしていないと、アメリカのなんとか大学がコメント。海外の学歴(特にアメリカの大学)ってのは、ハーバードかMITクラスでないと信用できんぜ。日本でも土井たか子の怪しげな学歴があるけど。これで山拓復活か。しぶとい男だなあ。
本日も雑用多く、歩いて梅田へ。
午後は穴蔵。
夕刻、写真家・永野一晃氏が来穴蔵。歌やんとは古いつき合いの人だけに、今頃になって面白い話が色々と出てくる。「続編」を作るかと迷うほどである。
夜は、高野豆腐、茄子とイワシの揚げもの、鰆塩焼き、水菜煮びたしなど並べてビールと焼酎湯割り。
1月21日(水)
終日穴蔵……にしたいが、本日も雑用が重なり、10時頃から市内ウロウロ。
久しぶりに日本橋のジャンク屋にも寄る。
午後、かんべむさし氏の事務所に寄って「ダミダこりゃ〜」検討会1時間。
靱公園ネキの「タケウチ」に寄ってパンを買って帰宅。
夜は専属料理人が「スペインのなんとか地方の家庭料理風のなんとか」など作ってワイン。タケウチのパンを買って帰るとだいたいこんなパターンになる。むろん、わが舌にはチンプンカンプンである。イカと小芋の煮たのなんかで熱燗の方がいいぜよ。
1月22日(木)
大阪、朝から氷点下という予報であったが、そのとおりであった。
こんな日は終日穴蔵……といきたいところだが、午後、出かけねばの用事があって心斎橋まで。キンタマ波動関数の収縮的寒さ。
夜は肉豆腐とかタコと小芋の煮たのとかで熱燗。やっぱりこんなのがいいなあ。
1月23日(金)
始発、6時ののぞみで上京。
昨日からの寒波、雪で新幹線が遅れないかと心配だが、案の定、米原付近の雪で徐行、10分の遅れである。
9:40東京着、10:44のやまびこにギリギリセーフである。
福島県・郡山に向かう。
東京は晴れていたが、新白河を過ぎたら急に雪。郡山は20センチほどの積雪で、また降り続いている。
タクシーはチェーンを巻いているが、ともかく市内あちこちで渋滞。
それでも11時には某目的地にたどり着けた。
マル秘プロジェクト2時間。
午後のやまびこで東京に戻る。
ちょっと時間があったので、お茶の水のディスクユニオンに寄ると、店内にいいクラリネットが流れている。どう聴いてもデフランコ。
「ただいま演奏中」というのを見たらデフランコの『COOKIN' THE BOOK』、本日入荷とある。なんというタイミングのよさ。2003年6月録音の新譜である。もう1枚、デフランコを購入。
あと、文源庫の石井さんと会う。こちらは、なんと「宇宙関係」の話題で色々。
夕刻、東京會舘へ。
こちらでは某編集会議。
会議そのものは比較的スムースに終わり、歓談時間がとれた。
村松友視(←新字)氏と初対面、「ボブ・サップ対曙」戦についての見解をお伺いできたのが収穫であった。
長谷部史親さんと歩いて東京駅まで。
六本木あたりで山下洋輔さんが「4Gユニット」ライブ中なのだが、もう午後9時。
丸の内線で南阿佐ヶ谷へ。
午後10時過ぎに、西新宿から来たボンクラ息子その1と「鳥正」で合流。
例によってモツ煮込みと白菜の漬物で湯割り。
オバアチャンは相変わらず元気で安心する。
閉店の12時近くまで。
ああ、早朝から久しぶりによく動いた日だ。
お馴染みの「首懸の経」を歩いてホテルに戻る。
ラウンド・ミッドナイト、眠る寸前にボンクラ息子その1から電話、「無事に帰ったか?」……一応心配してくれているのである。
1月24日(土)
朝7時まで寝た。おれとしては珍しい熟睡である。
9時過ぎに出て新宿へ。
土曜の午前中、たいして面白いところはないなあ。ヨドバシを覗くが、大阪店の方がずっといい。
「東京麺通団」を試すが、「あつかけ」でもぬるい。これが讃岐うどんの評判店か???
ボンクラ息子その1が、東京の味が合わないとぼやくのもむべなるかな。
昼過ぎののぞみで帰阪。
おれと入れ違いに上京する予定の専属料理人とは静岡へんですれ違いか。
帰宅したら『桂歌之助』の注文あり、急いで発送。
専属料理人はクラス会その他で上京、ボンクラ息子その2はバイトで不在。
ひとりで「クッキング」……湯豆腐で「池月」なんぞ飲みながら『COOKIN' THE BOOK』を聴く。
2003年の録音で、デフランコ80歳。が、音色は素晴らしく、瑞々しいとすらいえる雰囲気。「朝日のようにさわやかに」なんてスインギーな曲を吹くかと思えば、最後の「Scrapple From the Apple」なんて、ヴァーブ時代のスピードと変わらない。曲想が広がっていて、音色は柔らかい。これを円熟といわずして何というか。……滝川さん、これを目標に、まだ40年吹き続けられるぞ。
1月25日(日)
わ、やっぱり朝4時に目が覚めてしまった。
朝5時、「日本の話芸」は柳家小せん「きゃいのう」……お笑いタッグマッチの「カアちゃん今帰ったよ」から40年以上、こちらもまあ円熟か。
終日穴蔵。……これ、久しぶりであるなあ。
1月26日(月)
専属料理人がいないので、朝から洗濯、植木の水やり、ゴミ出し。嗚呼。
あとは市内ウロウロの雑用。
りそな(大和)のATMコーナーに「見張り役」が待機していて不気味である。
中津、梅田ともに。
なんだか犯罪者扱いされている気分である。
どうやら大規模なATMの不調らしい。
穴蔵に戻ると、ジュンク堂の担当・UさんからFAX。「歌コ本、完売したので」と追加の要請。直ちに自転車配達。ありがたいことである。
穴蔵に戻ると、留守電で青空書房からCD追加の要請。直ちに2時間近くかけて作成。ああしんど。
青空書房に配達。
穴蔵に戻ると、桂歌々志くんから電話。夕方、本を取りに来るという。預けていた分が完売、今夜は京都で「かねよ寄席」があるから、その分を受け取りに寄るという。ありがたいことである。
郵便振替の注文5冊、この発送で郵便局往復。
夕刻、歌々志くん来穴蔵。神戸の煉瓦亭での販売や、その他で、まだ40冊くらい必要という。ありがたいことである。
ということで、デリバリー業務で夕方になってしまった。
1月27日(火)
朝8時からイケメン古賀潤一郎くんの「涙の独演会」の中継を見物。
「結論」を述べるまで埒もない所感表明を延々と10分以上、ええかげんイライラしてきたところで、やっと「離党はするが、議員は辞めない」といった主旨のことをいう。
福岡もんは往生際が悪いなあ。
専属料理人不在なので、本日もひとり酒盛り。
NHK夕方のニュースでイケメンの「涙の独演会」を再度見て、その後が「ロシア原潜の処理」の特集。これもまあ面白かった。
で、食卓を片づけて洗い物を始めたところで『歌謡コンサート』が始まった。
食器洗いの最中、CDに変えるのも面倒なのでそのまま流していたら、なんとかいう女性歌手が「買い物ブキ」を歌いだした。
省略なしの「完全版」で結構うまい。
が……最後がいけない。
「わしゃ聞こえまへん」!!
これ、酷いのではないか。正確な歌詞は「わしゃツンボで聞こえまへん」である。でなければ、その前の「オッサンオッサン……」のリフの意味がなくなるし、第一リズムがガタッと崩れるではないか。
20年ほど前、民放で「わしゃナンチョで聞こえまへん」というのがあったけど、それよりも悪質である。こんなおかしな改竄やるのなら、放送しない方がましでっせ、NHKさんよ。
気分が悪くなって、デフランコを聴きながら白ワイン。「耳の洗浄」をする気分である。
1月28日(水)
早朝の電車で播州龍野へ移動。
タイムマシン格納庫で「雪のみちのく」プロジェクトの続き。
実家により雑用。
夕刻帰阪。
「歌コ本」の発送、ヤマト運輸にギリギリセーフ。
本日もひとり寂しく晩酌。博多の「水炊きスープ」に鶏肉ネギ白菜豆腐えのきをぶち込んで湯割り。
CDはバド・パウエル。
1月29日(木)
終日穴蔵。
少しは仕事もするのであった。
午後、「桂歌之助」を計32冊発送。
これで在庫は一挙に100冊を切った。
もう少しすれば「残部僅少」のアナウンスを流すことにするか。
3月末の完売を想定していたが、少し早まりそうである。
専属料理人、夕刻帰宅。静岡の食材色々あるらしいが、本日は前からの飲み会予定があったので、夕刻出かける。
『桂歌之助』残り100冊を切った記念というわけでもないが、前から編集委員のウチアゲを兼ねて一杯飲もうと決めていたのである。
17時過ぎに出て、歩いて中崎町の居酒屋「大甚」へ。
桂米輔さん、小牟田さん、永野一晃さんと。
深尾さんは風邪で欠席、歌々志くんは高座である。
この「大甚」という店、初めてだが、安くて抜群に旨い。湯豆腐は「上川屋」型の出汁に入ったスタイル、揚げ出し納豆とかとん平焼きとか、湯割りに合うメニューがいい。
ビール、熱燗、湯割りと盛大に飲む。
ついでだから店の位置を青空書房の地図に追加しておくか。
米輔さん、来年が「噺家生活35年」で、今年は「プレ35周年」、定期的な会を増やすと意欲的である。梅田あたりで中堅どころの会が増えるのは楽しみなことである。
あと、ぞろぞろ歩いてサントリー5へ移動。
ニューオリンズ・レッドビーンズの出演日。
クラが(正規メンバーの風間さんは現在新潟という事情もあって)河合良一さんである。これはいい日であった。
長年のファン堀田さん(なんと永野さんの知り合いなのであった)グループと隣り合わせになり、合同で大騒ぎになった。
最終23時まで。歩いて帰宅。バーボン飲み過ぎ、相当酔っぱらっているのが自分でもわかるなあ。
1月30日(金)
さすがに二日酔い気味である。
午後、所用あって梅田へ。が、銀行、どことも月末の金曜で長い列。銀行関係は来月に送る。
本日は、京都コンサートホールに山下洋輔さん出演、京都芸術文化会館で米朝落語会であるが。ともにちょっと顔を出したい事情があるのだが、寒いのと昨夜の影響が残っているので断念。専属料理人のみ京都コンサートホールへ出かけてしまう。
夕方のニュース、中村修二(青色発光ダイオード特許訴訟)に東京地裁、日亜化学に200億の支払いの判決。むむむ。評価が600億というところが凄い。
それもこれも「婿養子」の「現社長」がいかんのだよなあ。
最高裁まで行くのだろうが、最終的に「経営責任」は問われないのかねえ。
特許を利益につなげるのは発明者だけではできない。これは、わしゃ体験的に知っているが、発明者のプライドを損ねてはまずいよ。
まあ、ちょっと痛快な判決である。
1月31日(土)
終日穴蔵。
夕刻、かんべむさし氏来穴蔵。
「ダミダこりゃ〜」検討会を1時間。
夜は静岡産の鰺のひらき、しらすおろし、黒ハンペン、タタミイワシ、わさび漬けなど並べて「池月」大吟醸。
森下一仁氏のページで野口幸夫氏の訃報を知る。53歳とは若いなあ。
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