HORI AKIRA JALINET

『マッドサイエンティストの手帳』33

●第36回日本SF大会「あきこん」

主な事件
 ・1997年8月23/24日
 ・広島プリンスホテル
 ・実行委員長・小林由起子


1997年8月23日(土)
 8時14分新大阪始発広島行きのひかり1号車4E席で広島に向かう。
 探せばSF関係がいっぱい乗っていそうな気がするが、車中読んだのはSFには関係ない、見沢知廉「獄の息子は発狂寸前」である。細く狭い蟻の穴を通してしか文章を送り出せない……しかし、小説を書くというのはこういうことなんだなと思い知る。気楽にインターネットで世界中に文章を送り出せる自由はむろん素晴らしいことだが。
 10時過ぎ広島着。ホームに例の名状しがたい色彩と柄のシャツがちらっと見える。やっぱり帆羽さんである。駅の構造がややこしいので、ホームまでお出迎え。
 広島プリンスまでの経路は、市電40分で宇品(広島港)、ここからタクシーが、安くてましなコースという。路面電車は「被爆経験」のある数少ない車両の1台であった。
 11時、広島プリンスホテル着。
 以下、局所的レポートである。毎度のことながら、ディーラーズルームを常駐場所としい、企画にちょっと参加、ちょこちょこと覗くという程度なので、とても全貌はわからないのである。
 心配したとおり、昼飯は高くてさほどの味ではないぞ。嫌なら30分歩いて外へ食いに行けといわんばかりの、この種のリゾートホテルはだからいやなんだよ。競争原理が働いてないじゃないの。カレーとビールで2千円。帆羽さんが利用した青春18とかのチケットで、東京〜広島間の旅費が2千円。うーん。
 デーラーズルームはオープニング会場と一部重なるため、オープニング終了後の設営となる。今回、狭い。1コーナー「椅子ひとつ」の幅である。これで帆羽ちゃんが座るだけで超過気味になりますわな。下のようになるのである。ずらっと並んでいるが、これ「ひとり1店舗」。……ついでに、高千穂遙ご夫妻、開店早々のご来場、ありがとうございます。……あ、そういえば、斜め向かに神林長平ご夫妻の店があった。

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 午後、「いろもの物理学者」前野昌弘氏の「ハードSFのネタ教えます」にゲスト参加。いっしにいたのは、堺三保、菊池誠、林穣治氏。……前野氏が来ている白衣は、ぼくが貰ったのとそろいの「MAD SCIENTIST'S UNION」のロゴとイラスト入りのもの。……ええっと、「一般相対論に矛盾しない超光速航法」「ニュートリノはタキオンにちがいない」「先進派」など数題。いずれも、そのうちバクスターが書くだろう、が結論かな?

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 同じ時間帯に小松左京氏と松井孝典氏のパネルがあった……らしい。結局、小松氏とは最後まで遭遇できなかった。「世にも暑苦しいSF作家」とは、わしが「店番」したとたんに会いましたがね。

 夕方、ファンジン大賞と星雲賞の発表。
 ファンジン大賞、創作は「ボレアス」の嬉野泉さん。来場されていなかったが、おめでとうございます。まあ、キャリアからいっても文句なしですね。来年はふたたびソリトンが挑戦いたします。
 1997年度星雲賞は次のとおり。  ・日本長編「星界の紋章」森岡浩之
 ・日本短編「ダイエットの方程式」草上仁
 ・海外長編「さよならダイノサウルス」ロバート・J・ソウヤー
 ・海外短編「凍月」グレッグ・ベア
 ・メディア「ガメラ2/レギオン襲来」
 ・コミック「うしおととら」藤田和二郎
 ・アート 開田裕治
 ・ノンフィクション「トンデモ本の逆襲」
 写真は、賞状を受け取る森岡浩之氏と、賞品の宮島名物大しゃもじを構える草上仁氏。おめでとうございます。

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 午後6時過ぎ、ディーラーズルーム初日閉店。帆羽さん、「トタン屋根の猫」脇野さん、ありがとうございました。
 ということで(高マズの広プリ料理を敢然と拒否することで意見が一致した)帆羽、とたん猫、西瓜頭・北野勇作ご夫妻と、計5人で市内(八丁堀の近くになるのかな?)の「お好み村」へ出撃。広島の名所らしく、ビルの2〜4階に20店以上のお好み焼き店が軒を連ねている、凄い「熱気」のビル。昼間がファンジンのディーラーズルーム、夜はお好み焼きのディーラーズルームである。プサンキムチ、カルピ、豚キムチでビールを飲んで、最後に「スペシャル」というやつ。ボリュームに圧倒されるのとビールのせいで、半分少しが限度である。両側2氏の助けを借りる。これも昼間といっしょだな。
 「お好み村」で記念撮影。
 ぼくは21時29分ののぞみで帰阪。日曜、夕方まで出歩くと、疲労が月曜まで残ってしまうのである。
 車中、コミケで発見しましたと「名も告げずに」去られたファンらしき方(おーい、どなただったのでしょう)から貰った「堀晃 マッハのお告げ」という小冊子を見て感嘆……。なんと「太陽風交点」から「遺跡の声」までの色々な作品から色々な場面が(主にキャラクター中心に)コラージュ風のマンガにしてあるのだが、まさかここまでオタク風に読まれているとは想像もしていなかった。いったいどんな方々(グループらしいのだか)なのだろう。できれば、このホームページでもう少し詳しく紹介したい。とくに梅田地下で「ヤクザも危険だが、板前さんも包丁一本さらしに巻いているからもっと危険」のフレーズには涙が出ました。これ、わしの20年以上前の古傷に触れる部分なんでっせ。……ともかく不思議な冊子であります。

 ついでながら、不肖・堀晃め、ファンジン大賞に関連して「柴野拓美賞」をいただきました。これは、ファンダムへの貢献に対する顕彰で、ソリトンに活動が認められたということです。まあ、ファンダム外に優秀な書き手がいることを「発見」し、ネットを介して同人誌活動を始めたことは自慢していいことですか……同人のファンダム参加が創作に吉と出るか凶と出るか……。まあ、しかし、ともかく、最初の受賞者が大先輩・石原藤夫さんである。ありがたくお受けしました。ソリトン同人諸氏の熱意に感謝。
 写真は、「お好み村」記念写真と、壇上から、デジカメを渡して会場前列の方に撮影をお願いした「いちばん立派に見える」受賞記念の1枚。

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 その他、たくさんの人たちに会った。「エヴァ成金」兜木くんとは久しぶりである。帰る間際にチェリオ(永瀬唯氏)から色々面白い話を聞く。その他数十人の方々、ゆっくり挨拶もできず、ちょっと残念です。
 SF大会は、来年が名古屋。1999年が長野(白馬山麓)に決定。
 1999年後も地球が無事なら、2000年は東京圏になるようです。
 いつまでつきあえるか……。


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