『マッドサイエンティストの手帳』131
●マッドサイエンティスト日記(1999年11月後半)
主な事件
・年に2回の書斎祭(秋祭り篇)でパソコンみこしを担ぐ。
・森山威男ジャズコンサート。
・ダイナマイツ・コンサート(ゲスト村上“ポンタ”秀一)。
1999年
11月16日(火)
昨夜から飛び交ったメール、どうやら収束していって、正午に宇宙作家クラブ有志の緊急アピールとして公表となる。議論の過程でなるほどなと教えられること多し。朝刊における事故報道、まあ冷静な感じである。……これが有人打ち上げにおける自爆装置起動だったらたいへんなものであったろうなあ。まだ例がないようだけど。有人機でも自爆装置を積んでいるところが覚悟のほどの凄さで、原発事故と違うところだ。
11月17日(水)
ボンサラ、誠実に仕事。
夕方、必要あって、個人の屋号で貿易業務をやっている某氏の事務所へレクチャーを受けに行く。教えられること多し。菅谷充さんはマンガ家から小説家に転業という珍しい例で、マンガは法人(会社)でいいが、小説家にはふさわしくないと税務署から「ご指導」を受けたという。うーん。あ、別にSF会社を設立しようという企みではありません。
11月18日(木)
ボンサラ、誠実に仕事。つまらん日である。
少し寒くなってきた。机兼パソコンテーブルをコタツにしたいが、半年間未整理で床に積み上げた本のために、とてもスペースがない。それでなくても「専属料理人」兼「女中」が、掃除ができないと苦情をいって困っているところ。整理をしかけるが、窓全開、室内の埃を薄めながらでないと無理。休日に送る。
11月19日(金)
フォッサマグナの某所、今後30年間地震発生の確率が全国一という「ランキング」が学会で発表されたということで、図書館で「日本の活断層」で関連工場のある付近を調べる。長野周辺、関東に工場を移したがる経営者の気持ちが実感として理解できるなあ。
長野南部はまだ1/20000地図は出来ていないが、松本付近のを見るとすごい。個別の建物の下に活断層の有無が確認できる精度である。地価に響きますわなあ。
11月20日(土)
早朝から本の整理と部屋の掃除にかかる。つまらん本を整理。買ったわたしが馬鹿だった。相当数を「処分」……だんだん慣れてくるなあ。再読可能な小説類をダンボールに詰める。
午前10時、実家方面に行く予定のある某君、ワゴンで本を取りに来てくれる。ダンボール搬出後、書斎の大掃除。
わが机の構造は、でかい1枚板(厚さ3センチ)をスチール・アングルの棚2個の上に載せたもの。この上にパソコンとオーディオ機器。配線をやり変えるのが手間だから、ボンクラ息子その1に手伝わせて、机の板を機材を乗せたままセーノで持ち上げ、その間に「専属料理人」がアングル棚を抜き、素早く床掃除して、コタツ台を押し込む。この間3分弱。半年に一度の御輿を担ぐような儀式であって、いわば書斎の「秋祭り」の部である。
秋祭りが終了して、軽くビール。
午後、仕事すりゃいいのに昼寝。
11月21日(日)
11時新大阪始発のこだまで名古屋。中央線に乗り換えて多治見。2時間ちょっとで到着。時間距離は宇治よりも近い感じがする。
森山威男ジャズコンサート。
午後9時過ぎに帰宅。
11月22日(月)
ボンサラ、誠実に仕事。つまらん日である。昨日が面白すぎたのである。
11月23日(水)
勤労感謝の日なので、勤労はせず、終日ごろ寝、雑読。
11月24日(水)
ボンサラ、誠実に手抜き仕事。一悶着……情けなくてとても書けない。
ビールも飲まずにふて寝。
11月25日(木)
ボンサラ、誠実に仕事して給料日を迎えるが、さりとて料理を含めて特別のことがあるわけでもなく、ビールを飲んでふて寝。
徳岡孝夫「五衰の人」を読む。腹具合がおかしくなる。
11月26日(金)
東京の幼児殺しは「お受験」の犠牲? この幼稚園の現場、石川喬司さんのお宅のすぐ近所ではないのか? 関係ないだろうけど。あんまり文教地区に住むものじゃないなあ。親がおかしくなっているに決まっている。
東奔西走。……西走で実家近傍まで行くが、明日出社の必要があり、「書斎」には立ち寄らず、そのまま帰阪。
11月27日(土)
世間休日なれど朝から出社。楽しい雑用色々。
午後、川西の取引先へ。土曜の夕方くらいでないとゆっくり話せない相手。ビールでも飲もうと、夜、能勢電「畦野」駅近くの居酒屋へ。……と、ここが若い女性でいっぱい。「畦野」なんて、名前の通りのど田舎。土曜の夜に若い女性が集まっているとは信じがたいのだが、現実であった。
11月28日(日)
朝7時過ぎに一応市長選挙に行く。結果ははっきりしているのだが……。
終日ごろ寝雑読。
11月29日(月)
ボンサラ、誠実に仕事。つまらん日々である。
11月30日(火)
早朝のひかりで上京、銀座〜日本橋〜虎ノ門界隈、ウロウロセカセカ。
夕方、新宿ワシントンにチェックインしてから、歩いて初台の東京オペラシティ・リサイタルホールへ。
谷口英治さんが参加しているダイナマイツのコンサートである。
クラシック系のホールだけに、雰囲気もクラシック・ファンらしい女性が多い。室内楽コンサートの雰囲気。
第一部がダイナマイツによる8曲。
第二部にチェロの山本裕康、そしてなんと村上“ポンタ”秀一が特別ゲストで登場。
PAいっさいなしのところにポンタだから、いったいどうなるのかと思っていたら、「ツアーの途中だが、その千分の一くらいに抑えて叩いている。ぼくがいかに繊細かわかるでしょ」とのお言葉どおり、これが初めての共演とは信じられないような絶妙のサポート。4曲中、ブラシ使用は1曲だけだったから、これまたたいしたもの。最後の「Tanga」に至っては、長年のレギュラー・メンバーみたいな雰囲気で、これはぜひCD化してほしいと思った。
21時過ぎまで。
歩いてホテルへ帰る途中の小料理屋(店名失念。甲州街道に面した、初台と新宿ワシントンの中間あたりにある家庭料理の店。大根の煮たのが抜群に旨い)でビール。こんな時、ひとりの食事はちょっと寂しい。
新宿ワシントンホテルのテレビには、見たくもないポルノ代1050円を巻き上げられた苦い記憶があるので、テレビはつけず、出たばかりの集英社新書、佐藤文隆「物理学の世紀」を読む。過去100年、理学の中心を担った物理学の通覧だが、第一章に「一気に読んでほしい」という「思い入れを排した100年の歴史」があって、第二章から著者独自の視点で書かれる構成。おやっと思ったのは、橋元淳一郎さんの「人類の長い午後」との構成の類似である。……こう書くと、橋元さんはたぶん恐縮されるであろうが、「物理学の世紀」が過去100年の総括であり、「人類の長い午後」がこれから千年の展望。「物理学の歴史」が露払い役……などといっては佐藤先生に失礼か。ぼくは読む順序が逆になってしまったけど。京大理学部の「知の構造」の一端に触れる思いである。
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