HORI AKIRA JALINET

『私家版SF年代記』1981

1981年4月

主な事件
 早川書房、堀晃と徳間書店を東京地裁に提訴。

SF
・SF作家クラブ総会
・筒井康隆「虚人たち」(中央公論)

日録
810401水 こだまで豊橋。ユニチカ豊橋工場。試験機調整。
810402木 池田の職場。
810403金 池田の職場。夜、激励ともつかぬ電話。早川書房の営業課長・佐藤昭夫が「堀が告訴だけはご勘弁をと堀が泣きついている」という話を営業先で吹聴しているという。複数のルートから入るから気が重い。こちらは「どうぞ」といっているのである。が、人間、時としてかかる話を伝える者を憎むこともある。そのような話の場に同席したあなたはどう相槌をうったのかと質問したくなるのである。
810404土 朝、小説新潮「あの時の私」(エッセイ)。昼前のこだまで上京、夕方、石原藤夫氏と対談。「週刊プレイボーイ」の企画。編集の桜井氏はSFファンにして科学少年であったという。石原さんと深夜までしゃべる。 810405日 午後、神楽坂の出版クラブで小林裕幸氏の企画で座談会。寺沢武一氏、ひおあきら氏、飛鳥欄氏。あとから高橋良平氏が合流。最終ひかりで帰阪。
810406月 泉南、大機紡で工事。ナンバでペンタックスLX購入。唯一の受賞記念品(あとは訴訟費用に充当)。
810407火 池田の職場。
810408水 月刊GORO「二十歳の履歴書」航空便で発送。池田の職場。
810409木 池田の職場。
810410金 市内、商社、客先5社。
810411土 龍野市の実家に家族で帰省。花見である。老父「早川はお前が嫁を大阪へ連れて帰ったから怒っているのではないか」……これには大笑いしたが、3年後の準備書面で、父の発言がまんざら見当違いでなかったことが判明する。明治男恐るべし。
810412日 午後帰阪。
810413月 池田の職場。
810414火 泉南の工場2社、工事とメンテナンス。夕方、梅田で受賞記念宴会。SFにはあらず、昨年に続き、開発ヒット商品に対する会社の表彰。報奨金による部の祝賀会。ヒットはいいが工事はほとんどぼくの担当となる。当分は体力勝負である。23時帰宅。
810415水 未明、スペースシャトル「コロンビア」の着陸中継を見る。池田の職場。眠い。夜、読売新聞・宮部記者から電話。「今日、早川があなたと徳間書店を東京地裁に提訴しました」……徳間と会社関係に電話。明日あさつて、上京のため休むことにする。家族は静岡に帰す手配。
810416木 読売新聞に記事。出版権の説明に疑問あり。こだまで上京。静岡で家族降ろす。徳間書店に昼前に着。高斎氏とすれ違う。「早川の仕事を返した」ぼくとしては心苦しい。斎藤弘弁護士と挨拶。17時〜ニューオータニでSF作家クラブ総会。20時〜紀尾井クラブで佐々木黎二弁護士と会う。あと数氏と夜中までSF談義。銀座日航泊。
810417金 10時、梶尾氏を新橋で見送る。かんべ氏と徳間へ。共著の打ち合わせ。読売新聞に小さい記事。ちょっと笑う。朝日、報知に記事。午後のこだまで、かんべといっしょに帰る。ぼくのみ静岡で降りる。夕方、家内の実家へ。
810418土 昼過ぎ、単身帰宅。龍野の実家から電話。
810419日 昼、「情報春秋」記者から電話取材。30分。新聞記事、訴訟用の資料整理。
810420月 池田の職場。会社で事情説明。珍しい業界裏話に面白がっている気配。休暇が必要な場合の理解を取り付ける。日頃の勤務態度の重要性を痛感する。
810421火 雷鳥1号で金沢へ。東和織物で機械取付工事。21時帰宅。ヨコジュンから電話。「日本SFこてん古典、最終の第3巻が出た。これだけは中断したくなかったので、今まで行動が起こせず申し訳なかった」……早川は急に出版契約書を要求しはじめたという。主張と矛盾するのではないか?
810422水 私鉄ストなら自宅待機のはずが8時から阪急動き出す。池田へ出勤、帰宅すると書留の配達連絡あり、自転車で大阪中央郵便局へ。20時、やっと訴状を手にする。家族帰宅。
810423木 経過の整理、文書化。午前3時から朝まで。国鉄ストなら自宅待機のはずがスト回避。作業中断して、フジボウ八尾工場へ。機械取付工事。助っ人、交通事情理由に来ず、ひとりで作業19時まで。
810424金 フジボウ八尾工場。工事続行。夕方終了。途中、佐々木法律事務所に電話。書類一式は月曜発送と伝える。鏡明氏から手紙。SFマガジンの連載を中止するという。心苦しい。
810425土 午前3時から資料整理。7時、中断して出社、午後帰宅、続行。コピーし、2セット作製。月曜出張になったため、本日発送。中央郵便局から佐々木法律事務所と徳間書店へ。送料だけで3000円になる。
810426日 昼まで眠る。午後、家族と公園散歩。
810427月 新大阪6:38こだまで三原、三原港から高速艇に乗り換え今治、今治から国鉄で八幡浜へ。移動中「虚人たち」をほぼ小説内時間に合わせて読む。久々に電話から解放された至福の時間。織布会社・酒六、13:30着。機械工事。八幡浜泊。
810428火 午前中工事。午後、逆経路で帰宅。夜中、「奇想天外」の小口君から電話。明日行きますという。
810429水 天皇誕生日。かんべ氏来宅。本の打ち合わせ。かんべ、早川に文庫の絶版を申し入れたという。21時過ぎ、小口氏来宅。「あのう、女性がいっしょなんですけど」書斎提供。
810430木 出勤。夕方、小口「夫妻」戻ってくる。近くの居酒屋「正ちゃん」で食事。書斎提供。

作品その他
 ●「太陽風交点」徳間文庫  「20代の履歴書」(GORO8105)
 「あの時の私」(小説新潮8105)


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