HORI AKIRA JALINET

【森山研】は全部聴く

 「over the rainbow」

=== <955> jazz/salon, XL4O-ENDU(遠藤 治), 98/10/28 02:41, 42行, 1(9)関連
標題: 【森山研】『虹の彼方に』
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 次のアルバムは、と書き始めてちょっと困った事態に陥ります。 94年4月23、24日に行われたスタジオ・ライヴ録音は、『マナ』、 『虹の彼方に』という題の2枚のCDとして発表されました。CD 番号順では『マナ』、『虹の彼方に』という順なのですが、前者が 24日の演奏だけからなるのに対し、後者は23日の演奏を含んでい ます。従って編年体で『虹の彼方に』から述べることにします。
 何枚か前のアルバムから私はしきりに動と静ということについて 触れてきました。作曲としての動と静。二人のサックス奏者の動と 静。そしてここに至って、なんと森山さんはアルバム全体を動と静 の1対として発表したのです。動の『マナ』、静の『虹の彼方に』。 もちろんこのようなアルバムの発表のしかたには前例がない訳では ありません。マイルス・デイヴィスはかつて64年2月12日のライ ヴを動の『フォア・アンド・モア』、静の『マイ・ファニー・ヴァ レンタイン』として発表しました。しかし、森山さんのこの二枚に 関していえば、マイルスの影響というよりは森山さんの一貫した美 意識によるものと思います。
 さて『虹の彼方に』ですが、メンバーは前作から少し変化してい ます。フロントに井上さんに加え、アルトサックスの林栄一さんが 参加し、ベースは急病の望月さんに代わり吉野弘志さんとなってい ます。
 以下、簡単に曲ごとのコメントです。
 1曲目は「虹の彼方に」。言わずと知れた「オズの魔法使い」か らのナンバーですが、林さんの敏感な部分がむき出しになったアル トが衝撃的です。
 2曲目は「わたらせ」。前作よりもさらにテンポを落とした演奏 となっています。
 3曲目は、いずみたく作曲の「見上げてごらん夜の星を」。はて、 誰が歌っていたのだったか。井上さんのテナーをフィーチャーして います。ソロは倍テンポとなります。しっとりと濡れた味わいがあ ります。
 4曲目は「グッドバイ」。板橋さんのイントロを聴いていて思う のですが、本アルバム全体を通じて前作であるラヴリーのライヴに 比べ、演奏者自身がどうなるかよく分かっていない不可思議な領域 を驚き楽しみながら演奏しているような気がします。林さんの音程 の怪しげなアルトも実に存在感があります。
 5曲目は再び「虹の彼方に」。1曲目とともにどちらも捨て難か ったのだと思います。次の瞬間なんて誰も分からない一期一会的名 演です。

by ヨNDO


=== <956> jazz/salon, LA1A-HR(堀 晃), 98/10/28 05:51, 25行, 1(8)関連
標題: 【森山研】「虹の彼方に」
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 「虹の彼方に」「マナ」は2枚ペアでいわば静と動の組み合わせ。
 録音日が「虹の彼方に」が4月23、24日。「マナ」が24日。
 ぼくは1994年4月23日(土)の演奏を聴いている。本当は2日とも聴きたか ったのだが、24日に行ったのでは、その日に帰阪できず涙をのんだ。
 4月23日は快晴で、中央線で名古屋から多治見に向かうと、古虎渓という渓谷を 抜ける。ここの新緑が素晴らしく、余計なこといっさいを忘れて演奏会場に向かった のを覚えている。
 ただ、スタジオFは、普通に行ったのではまずわからない。多治見から車で20分 ほど。正確には土岐市になるのかな。ぼくは、当時岐阜にいた「穂高」さんの車で連 れていってもらった。
 スタジオといっても「ホール」で百人は入れる会場、ここがほとんど一杯だから、 名古屋・多治見のファンは凄い。顔見知りが数人。いつも大阪で見る名古屋在住ファ ンなど。
 ところで、CDの構成は、はっきりとテンポの違いで区分されているが、この通り に演奏されたのではなく、CD化に当たって並べ替えられたはず。23日がスローな 曲ばかりではなかった。「SUNRISE」も演奏された。演奏は休憩を挟んで18:30 〜21時。ただ、記録を残しておらず、曲名曲順が思い出せない。感激の方が大きく て、こまかいメモなど必要ない気分だったのだろう。
 したがって、どの曲が23日かがわからない。「虹の彼方に」は最初のが23日で はないかと思う。
 ……が、感想というよりも、自慢。
 「このCDのどこかにはぼくの拍手が録音されている。」
 そのことだけちょっと書いておきたかったのです。

                          半魚人


=== <957> jazz/salon, IU8N-TKMT(高松 紀子), 98/10/28 09:38, 26行, 1(7)関連
標題: 【森山研】「虹の彼方に」
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イエイ!わたくしの人生に大きな影響を与えはったアルバムでございます! こちらのサロンによろよろ混入し、「シクシク泣ける曲を」などと世迷い言 をリクエストしてお教えいただいたあのときからも早半年以上。ああ、幼児 も成長するものだなあ!わっはっはー。
 それまではきっちり系(ジョシュア・レッドマンとかね)しか知らず、ち ょっとびれびれしたような感じの演奏のものはあんまり聴いたことが無く、 聴いてもヤノピさまの近年のものだけで(昔のはちょっと怖かった)、一曲 めピレピレピレ〜ぶわおー、ゆうのんは最初「なななんですねんこりわ!」 とびびりました。2曲目の「わたらせ」も始まってすぐはちょっと怖かった。 鯨などの大型水中ほ乳類が会話してるところから始まるわけですからね。

 でも。テーマが始まってすぐ、その壮大なイメージに浸ってしまいました。 音楽が、「大きい」って感じたのはそのときが初めてでした。
「見上げてごらん夜の星を」を聴きながら、「人間として生きてることも、 そんなに悪くないな」と思います。特別に悪いことが降りかかってるひとに だけでなく、いろんなひとに聴かせてあげたい。音楽は直接、人を救うこと ができる。そう確信できる演奏であります。
 悪いことしたことないひと、手を挙げて!はーい、いませんねいませんね。 4曲目、「GOODBYE」は素直に「ごめん。」って言える曲です。後悔するっ ていうんでなくて、悪いことは悪いとはっきり自覚して、ほんで新たに出発 するとき背中をあったかい手で支えてくれる、そんな曲です。
 全部とおして聴いたら、真夏、ちいさいころお昼寝をして夕方、目覚めの ひと泣きをしたあとのような、せつないスッキリ気分を思い出しました。
すいか食べたい。

                              のりこり


=== <958> jazz/salon, IB9S-YSI(吉井 誠一郎), 98/10/28 22:23, 50行, 1(6)関連
標題: 【森山研】『虹の彼方に』
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このアルバムは『マナ』と共に、森山さんがついに本格的にジャズ・シーン に復帰したことを高らかに告げた記念碑的作品であります。僕がリアルタイ ムで森山さんのアルバムを買ったのはこの時が初めてでしたが(何せ遅れて 来たファンですから)その当時、この2枚のアルバムの同時発売はかなりの 話題を呼んでいたと記憶しています。雑誌でも、CD屋のジャズ・コーナー でも、とても大きく取り上げられていました。その「事実」は紛れもなく、 いかに多くのファンが森山さんの復活を待ち望んでいたかを如実に示すもの であります。

さて、肝心の中身ですが、まず1曲めは「OVER THE RAINBOW」です。いきな りぶっ飛ぶ林さんのアルトに些か驚かされますが、基本的には森山さんのブ ラシを堪能する曲であります。森山さんのブラシは、4ビートの曲であって も右手が殆どレガートを打たない独特なスタイルで、特にこういうスロー・ ナンバーの時の、ゆっくりと「ずああっ」と引きずる音に込められた気迫は 大変なものです。・・・余談ですが、ヨNDOさんの練習バンドにトラで行った 時、確か一番初めに「BODY AND SOUL」をやった時にこれを真似してみたので すが、思いっきり不評でございました(^^;)。後で聞いたら、みんな「倍テン ポにしろ」と合図出してたらしいのですが、僕はこの「ずああっ」をやって みたかったのと、あとスローでテンポをきっちり維持する練習をしたかった こともあり、そのまま最後まで押し通してしまったのでした。もしかしたら、 テーマの終わる直前に一瞬、間違えて倍テンポでハイハットを踏んでしまっ たので(そういう妙に細かいことをはっきり覚えていたりする)みんなそれ に引きずられてしまったのかも知れませんね。

閑話休題。2曲めにいきます。「わたらせ」であります。・・・やはり何も 言わないことにします。黙って聴きましょう。それだけです。早く自分でも ちゃんと叩けるようになりたい。

3曲めは、今は亡き坂本九ちゃんが歌ってヒットさせた「見上げてごらん夜 の星を」であります。この曲でも、森山さんの必殺ブラシを味わいましょう。 でもこれ、いい曲だなあ。・・・またも余談ですが、確か九ちゃんの葬儀で、 出棺の時にこの曲が流れ、参列者の多くが堪らず号泣したそうであります。

4曲めはこれもシクシク系の名曲「GOODBYE」です。最後のテーマ部分に入る スネアwithブラシ+ベースドラムの「だばどっと、だばどっと、どしゃーん」 というキメのフレーズが心地良いです(『ラブリー』でも似たようなことを 書いたような気がする。・・・いーじゃねーか、本当に気持ちいいんだから)。

最後は「OVER THE RAINBOW」の別テイクです。1曲めのテイクと甲乙つけが たいですね。これ、たぶんどちらかのテイクが23日の録音なんでしょうね。

ということで、まさにこれは【森山研】【シクシク系】ともに必携のアルバ ムであります。精神的にかさついてきたな、と感じた時には是非これを聴き ましょう。

                                 ぶる



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