HORI AKIRA JALINET

【森山研】は全部聴く

 「EAST PLANTS」

=== <926> jazz/salon, LA1A-HR(堀 晃), 98/10/18 12:14, 38行, 2(41)関連
標題: 【森山研】「イースト・プランツ」
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 のっけから自慢話。ぼくはこのLP、サイン入りで持っているのであります。ジャケットには、森山威男、井上淑彦、榎本秀一、望月英明氏のサインがあります。今でいう「お宝」ですね。残念ながら「定成庸二」サインが抜けている。1984年9月29日ハチでのコンサートの後で貰ったもの。14年前になるのか……。つまり、サインを貰ったのはLP発売から1年後で、もうライブは「イースト・プランツ」の雰囲気ではなかったのであります。
 「イースト・プランツ」は森山リーダーアルバムの中では、「フルロード」ととも に、レコーディング「作品」の雰囲気で……たぶん、このメンバーでのライブは行わ れなかったのではなかろうか。(ちょっと自信ないけど)
 LPにはいっさいの「解説」はなく、帯に「ジャズの洗礼を受けて、いま“東洋” が還ってきた。」と書かれているのが唯一の日本語である。
 表題作から「東洋回帰」のようとれるが、オリエンタリズムというよりも、きわめ て日本的、樹木のなかを風が吹き抜けるように、限りなく美しい。
 森山さんの作曲による「かげろう」以外の5曲は井上淑彦さんの作曲。
 ただし、この後のライブでは(半年くらい後かな)、森山グループの演奏は、もう ただ「白熱のライブ」でありました。
 「イースト・プランツ」はLP、CDでのみ鑑賞できる名演です。

 ちょっと脱線しますが、この頃、関西ではどんなライブを聴いていたか。
1983年
  9月26日 山下洋輔氏 ソロ 「ハチ」
1984年
 2月25日 森山威男クインテット 神戸 「トンボ」……あの狭い店でクインテ ットのライブがよくできたものと今でも不思議。ピアノは板橋文夫さん。阪神大震災 でトンボがなくったのは今でも寂しい。
 5月8日 「虚航船団」発刊記念で、山下洋輔さん、かんべむさしさんとSFアド ベンチャー誌で鼎談という楽しい企画があった。
 5月26日 山下洋輔・吉野弘志・小山彰太トリオライブ 「ハチ」
 9月3日 山下洋輔ソロ+鼓童フィルム・コンサート「フェスティバルホール」
 9月29日 森山威男カルテット 「ハチ」

……すでに「イーストリバー」の時代に入っていたのである。
 2テナー時代、井上さんと榎本さんの区別が、ぼくの耳では判然としない。
 ただ、ライブの記憶では、一方がソプラノを吹く時は、たいてい井上さんだった。 「hush-a-bye」では、井上さんはソプラノを吹いていた。この演奏が記録されていな いのが残念です。

                        半魚人


=== <927> jazz/salon, IU8N-TKMT(高松 紀子), 98/10/18 19:36, 15行, 1(36)関連
標題: 【森山研】「イースト・プランツ」
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 半魚人さんのおっしゃるとおり絵画的な、美しい作品だと思いました。
私が映画監督だったら、このアルバムを元に一本、つくっちゃうな。
どんな映画かと申しますと、場面は黎明の、青一色。
まず、鳥瞰でアスファルトを突き破ってすごい早さで成長する大木たち。
その大木の間を縫うようにして、むなしい最期になると知りながら、走 り続ける主人公。帽子が飛びそうになるのを右手で押さえつつ、長い足 を自慢するかのように走る。主人公が走り抜けたすぐあとに亀裂が入り 次次と大木が出現する。亀裂との競争。
イースト、とはここではないどこか、のことではないかしらん。

毎度の事ながらとてもジャンボリーな感想文でごめんなさい!

                            のりこり


=== <929> jazz/salon, IB9S-YSI(吉井 誠一郎), 98/10/19 01:24, 44行, 1(35)関連
標題: 【森山研】「イースト・プランツ」
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このアルバム、いつものように1曲1曲詳細に書こうとしたのですが、他 の【森山研】メンバーの書き込みからもわかるとおり実はサックスが2人と も全く同じ楽器で、さらにスタイルも似ている、ライナー等の記載もない、 ということでどっちがどっちなのかよくわからないんですね。ということで、 サックスに関しては殆ど言及できませんので、あらかじめ言い訳をしておき ます(^^;)。

最初の「EAST PLANTS」、冒頭からいきなりアフリカっぽいパーカッショ ンの音が入るので「お」と思わされます。しばらくして他のメンバーが入っ て来ますが、いろんなスタイルが入り乱れて一種異様な感じになってきます。 森山さんはエルヴィンにラテン系8ビートが入ったようなちょっと妙なリズ ムで叩いており(テーマ部分のベースドラムがサンバっぽい)、いっぽう定 成さんはアフリカ的な雰囲気の音を出し、またホーン2人+望月さんはどこ となく日本っぽい、物哀しい感じのするメロディを奏でる、というぐあいで す。ちょっと異色な曲かも知れませんね。
次の「竹」は、テーマのリズムがちょっとトリッキーなアップテンポの曲 です。ここではとにかく、森山さんの爆走を堪能致しましょう。
3曲めの「かげろう」はごく短い曲で、ちょうどインターミッションのよ うな感じになっています。サックス2本がゆるやかに同じメロディを繰り返 す中、森山さん(スネアとハイハットだけ使用か)と定成さん(シロホン?) があらかじめ決められているらしいリズム・パターンにしたがってユニゾン で淡々と演奏します。アドリブはないようですね。これもちょっと変な曲で はあります。
4曲め「風」は、【三拍子偏愛委員会】推薦の美しい3拍子の曲です。こ こでは定成さんがとてもいい味を出しています。また、テーマ部分の望月さ んの音が最高にあたたかくていいですね。
5曲目「FIELDS」は、のっけから入るサックス2人のバトルが見どころな んですが、前述の理由でどっちがどっちか分かりません(^^;)。でも、かな り白熱したバトルなので分からなくても楽しめます。 ラストの「遠く・・・」も【三拍子偏愛委員会】御用達の名曲であります。 日本の「土」を思わせる(でも、同時にイギリス民謡っぽい感じもするので すが)メロディーに激しく絡みつく、森山さんの必殺のブラシを聴いて悶絶 いたしましょう。

考えてみたら、全員打楽器でありかつ明らかにレコーディングのみのため の編成であった「フル・ロード」は別として、森山さんの「バンド」の録音 で森山さん以外に打楽器が入っているのはこれが(今のところ)唯一のもの であります。それとも半魚様の言うとおり、このメンバーでは実際のステー ジはやらなかったのかしらん。ううむ。

ぶる


=== <939> jazz/salon, XL4O-ENDU(遠藤 治), 98/10/20 22:34, 54行, 2(34)関連
標題: 【森山研】『イースト・プランツ』
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 次のアルバムは83年9月録音の『イースト・プランツ』。サックスが藤 原さんから榎本さんに替わったカルテットにパーカッションの定成庸二さ んが加わり、スタジオで録音されています。
 先に『マイ・ディア』のところで曲想の動と静について触れましたが、 井上さん、榎本さんというのも、そのステージに接したことがある者にと っては、これもまた動と静なのです。どちらがどちらかというと、井上さ んが静で榎本さんが動です。井上さんは太い音でよどみないフレーズを繰 り出すのですが、内省的で森山さんや望月さんの音に常にじっと耳を澄ま し、バンド全体で熱くなる感じなのに対し、榎本さんは音色的にもリズム 的にももっと挑戦的で刺激的で起爆剤として機能しています。
 とはいえ、CDで音だけ聴くと私も自信がありません。以下で間違いな いとは思いますが、もし誤りがあればご指摘下さい。私は5曲目の2人の 掛け合い部分を聴いて右よりが井上さん、左よりが榎本さんと目星をつけ て、全体を聴き直しました。

  1曲目 榎本テナー、井上ソプラノ
  2曲目 榎本テナー、井上テナー
  3曲目 ソロなし
  4曲目 井上テナー、榎本ソプラノ
  5曲目 井上テナー、榎本テナー
  6曲目 井上ソプラノ

  右より 井上 テナー:太くてよどみない
         ソプラノ:ショーター的ばきばき(6曲目など)
  左より 榎本 テナー:くすんでいる
             三拍子フレーズなど刺激的
         ソプラノ:コルトレーン的流暢(4曲目など)

(これは新宿ピットインで必ず立っていた位置とも一致しています)

 以下、曲ごとに簡単なコメントです。
 1曲目。「EAST PLANTS」。タブラのイントロから始まるかなりエキ ゾチックな8ビートの曲です。
 2曲目。「竹」。ストレートなコルトレーン・イディオムのモード・ナ ンバー。
 3曲目。「かげろう」。ソロはなく労働のようなリズム・パターンが続 きます。
 4曲目。「風」。三拍子です。「オール・ブルース」のような継続部分 と「テイク・ファイヴ」のような展開部からなります。
 5曲目。「FIELDS」。普通のように長いソロを一人ずつとるのではなく、 非常に短い単位で井上さんと榎本さんが交互に入れ替わり、やがて渾然一 体になって絶頂に達します。
 6曲目。「遠く・・・」。2テナー時代最大の傑作でしょう。基本的に 前作中の「マイ・ディア」の延長ではありますが、2本のソプラノで奏さ れる子守歌のような懐かしさの極致のテーマをバックに森山さんのブラシ が慟哭します。
 それにしても全曲を並べてみると、確かに架空のサウンド・トラックと いう風情があります。1983年といえば、「戦場のメリー・クリスマス」 で坂本龍一さんが脚光を浴びた年だったと記憶しておりますが、時代がエ スニックなものに向かっていたのかも知れません。

by ヨNDO


=== <941> jazz/salon, IB9S-YSI(吉井 誠一郎), 98/10/21 18:18, 13行, 1(14)関連
標題: 【森山研】おお
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1曲目のあの音はタブラでありましたか。アフリカじゃなくてアジアだった。 ということはアジア的色彩を出す、というのがこの曲のコンセプトだったの かしらん。
それにしても2人のサックス、やっぱり音だけだといまいち区別できません なあ。ここは半魚様ヨNDOさんの経験に頼るしかあるまい。あっしは井上さん でさえ生で聴いたのは2回ほど、榎本さんに至っては皆無であるので、細か い癖の違いまではよくわからないのでした。音色は確かに少し違うんですけ ど、聴いてるうちにごっちゃになってきちゃうし。がうがう。

ぶる


=== <942> jazz/salon, LA1A-HR(堀 晃), 98/10/21 20:35, 13行, 1(13)関連
標題: 【森山研】うーん
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 バンマスの2テナー聞き分けはすごいですね。
 再聴、そういう情景しか浮かんでこない。
 2テナーの左右がどうだったかと思うに、どうもぼくには「映像的記憶」が弱いようです。マンガ家の方はこれがすごいのですがね。10年前のネクタイの柄を記憶されていたり。
 ぼくは、食べたものと、誰かがいったダジャレというのはよく覚えているのですが。
 王は自分のホームランの感触、球種、全部記憶している。
 川上宗薫さんは、女性のパイオツの感触を全部覚えていた。
 うーん、森山さんに一度質問してみたい。
 ドラムを叩く感触をどのように記憶されているのだろう。いや、演奏や演奏会場の雰囲気など全部含めてです。
 研究テーマが広がりますねえ。

                      半魚人



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