HORI AKIRA JALINET

【森山研】は全部聴く

 「FLUSH UP」

=== <773> jazz/salon, XL4O-ENDU(遠藤 治), 98/ 8/19 01:03, 38行, 1(27)関連
標題: 【森山研】『フラッシュ・アップ』
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 2枚目のリーダー・アルバムは、1977年3月1、2日に新宿ピットインで実況録音されました。
 1977年が日本のジャズ界にとってどういう年だったかをちょっと思い出しておくことにしましょう。VSOPを招聘 して田園コロシアムで行われた第1回「ライヴ・アンダー・ザ・スカイ」が成功を収め野外コンサート時代の幕開けとな った年、渡辺貞夫さんがデイヴ・グルーシンやリー・リトナーらと『マイ・ディア・ライフ』を録音しフュージョンが確 実に拡がりつつあった年、ジャズを演奏することを志す人々を対象とした「ジャズ・ライフ」誌が創刊された年でありま す。
 1975年大晦日をもって山下洋輔トリオを退団し、しばらくレギュラー・グループによる演奏活動から遠ざかっていた 森山さんは、このアルバムで劇的な変貌をとげて、我々の前に再登場することになります。これまでの森山さんのフリー ・ジャズ演奏を知る者にとって、徹底的にジョン・コルトレーン・カルテットを踏襲した4ビート・ドラマーとして再登 場することなど、誰が想像したでしょうか。そして以後、森山さんは基本的に一貫して4ビート・ドラマーであり続ける ことになったのでした。
 本アルバムでのメンバーは、テナーおよびソプラノ・サックスの高橋和己さん、そして以後長年にわたり森山さんと行 動を共にすることになるピアノの板橋文夫さん、ベースの望月英明さんです。
 1曲目は、コルトレーンの「インプレッションズ」と同一の曲構造からなる「フラッシュ・アップ」。この曲では高橋 さんはソプラノを吹いています。
 2曲目は、コルトレーンのビレッジ・バンガードでのライヴでおなじみの「朝日のようにさわやかに」。ドラムスとテ ナーのフリーなデュオからやがてテーマが提示され、ブリッジの部分からピアノとベースが飛び込む瞬間など、実にスリ リングです。
 3曲目は、民謡風なテーマを持つミディアム・バウンスのブルースの「イエロー・ベア」。アップ・テンポの1、2曲 目もいいのですが、個人的にはこの曲で自在にフロントを鼓舞する森山さんが大好きです。

by ヨNDO


=== <778> jazz/salon, LA1A-HR(堀 晃), 98/ 8/23 18:58, 23行, 1(26)関連
標題: 【森山研】「フラッシュ・アップ」
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前の「フルロード」について、FMで聞いたのは1976年1月25日でした。75年末で山下トリオを離れて間もない時期ですね。訂正しておきます。

で、「FLUSH UP」はその翌年77年3月、新宿ピットインのライブ。
残念ながら「現場」には行ってません。
無理すれば行けないことはなかったが、当時、追っかけで上京するのはちょっとしんどかったのだろうなあ。
ハチでは山下トリオのライブは比較的よく聴けたし、森山さんのドラム1.5メートル前が指定席みたいな時期もあったから、今から考えると無理してもピットインへ行くべきであった……なとどグチをこぼすのは、これがライブ盤で、拍手や歓声が入っ ているから。
ずっとあとの「虹の彼方に」「マナ」は、少なくとも2日間のうちの1日には行きましたから、特定はできないものの、ぼくの拍手も入っているのは確か。
ミーハー的ですが、気分は違いますよね。
……あ、森山さんに限らず、今あるCDのどれに僕の拍手が入っているかチェックしてみよう。ネムのが1枚あるはず?
ということで、「森山研」としては、MINさんの「追っかけページ」を過去にまで敷衍するような、ライブ記録もテーマとして浮上してくるなあ。
高橋和己さんのテナーは結局ナマでは聴けなかった。
「FLUSH UP」の3曲、それぞれの曲想がのちの色々なアルバムに広がる原点みたいで、たいへん面白いです。

                        半魚人


=== <780> jazz/salon, IU8N-TKMT(高松 紀子), 98/ 8/23 23:18, 14行, 1(25)関連
標題: 【森山研】「フラッシュ・アップ」
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 体力と気力、知力揃ってないと聴いてて弾き飛ばされそうな、勢いの密度の濃い〜いアルバムだと思いました。んもうへにょへにょです、あたくし。
ですのであまり賢いことは書けないと思います(もともと書けないけど)。

しかしなんで、シンバルが割れたり跳んでいったり、ドラムの皮が破れたり真ん中のドラムが前に進んでいったりしないのでしょう。すごいなあ。そしてね、森山さんと高橋さんの叩き合い(高橋さんも打楽器のつもりで吹いておられるようなびしばしの音)で1:1なのが、板橋さんが入られると1:1:1の割合にしゅっと引かれるのがとてもふしぎ。知的な野獣、ゆう感じでありました(もちろん最大級の誉め言葉ですよう)。

                             のりこり


=== <781> jazz/salon, IB9S-YSI(吉井 誠一郎), 98/ 8/24 22:21, 31行, 1(24)関連
標題: 【森山研・JSは全部聴く】『FLUSH UP』
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まず1曲めの「FLUSH UP」。早めのテンポの4ビートですが、既にこの時点で、後にはもっと頻繁に出てくることになる右手のレガート・パターンがところどころに表われています。つまり「ちーん、ちーん、ちんちきちんちんちきちんちんちきちんちんちきちん」と右手でシンバル・レガートをやり、最初の「ちーん」にベース・ドラム、二つ目の「ちーん」に左手のスネアを 合わせるというパターンですね。ただし、ソロになるとまだ山下トリオ時代の痕跡がかなり濃厚です。饒舌にかつ淀みなく爆走する森山さんの姿がそこにはあります。

次に「SOFTLY, AS IN A MORNING SUNRISE」です。前奏のドラムソロ→サックスとのデュオ部分の叩き方には、これまた山下トリオの頃のスタイルがかなり残っていますね。ただし、メロディに入ってからはエルヴィンと極めてよく似たフィル・インが多く聴かれるようになります。やはり意識していたのかなあ。前述のレガート・パターンも聴こえます。しかしソロになるとまた 山下トリオ色が前面に出てきています。

最後の「YELLOW BEAR」になると、スローな曲ということもあるのでしょうが山下トリオ時代の痕跡は殆ど見られません(ただし、曲自体は結構硬質な感じがする)。おそらくはこれが、いわば「Gentle Side of Takeo Moriyama」とでも言うべき側面の原点なのではないかと思います。

結局、山下トリオ脱退後の森山さんのスタイルはすべて、このアルバムに繋がっているのかなあ、という気がします。まあ、森山さん自身、最近の東京でのライヴなどで「今だに20年前と同じことをやっています」などと言ったりしているのですが。しかし、今聴いてもまったく古さを感じないというのは凄い。だいたい、ここまでユニークなスタイルを作り上げてしまうと、 もはや時代などというものはあまり関係なくなってしまうのかも知れません。

ぶる



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