林譲治『ルナ・シューター 2 3』(幻狼ファンタジアノベルス)
『ルナ・シューター 1』で始まった期待の月面戦闘SFが第3巻で完結した。
第1巻がほとんど月面での戦闘描写だったから、これは戦争SFと予想していたら、意外な方向に展開していく。第2巻では月面軍内部の生々しい軋轢や地球にいる異色の科学者などが描写され、第3巻では多くの謎をはらんだまま「最終的な」戦闘場面に収束していくのだが……
緊密な月面描写がさらに素晴らしく、溶岩チューブ、微少クレーター、レゴリスなどがさまざまな場面に巧妙に生かされている。
これを「かぐや以降の月SF」と位置づける松浦晋也さんの紹介文が的確だ。
松浦さんの文章に付け加えることはほとんどないのだが、ぼくが感じたのは、3巻通じて漂っている「どこか懐かしいSF」の雰囲気だ。
これが何かなと思っていたら、第3巻のあとがきを読んで氷解した。
そうか、テレビで放映された例のシリーズだったのか。
作者が明かしていることだからここに紹介してもいいのだが、できれば全巻を読んでから「あとがき」を読まれる方がいいと思う。
ぼくの場合、懐かしいといえば『ミステリー・ゾーン』と『アウター・リミッツ』になるのだが、この辺が世代の違いかな。
(2009.6.19)
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