林譲治『ルナ・シューター 1』(幻狼ファンタジアノベルス)
最初の一行がいい。
「地球は青くない」
月面から見る地球はまばゆいばかりに輝いているのである。
その月面で、凄まじい戦闘が開始される。
乏しい装備(地球からの搬送方法が限られている)で「数年間で半数近くが戦死する」地球の部隊が闘う相手は、ラミアと呼ばれる、異星から来たらしいヒューマノイド軍団。いびつなロボットのような形状で、なんと刀を振り回す(やがて銃器を持つように進化していくのだが……)。
なぜ(たぶん太陽系外から来たらしい高度な文明をもつ種族の)ロボットが刀を振り回すのか、なぜ戦場が月面に限定されるのか……。
色々な謎をはらんでスタートした林譲治氏の新シリーズ。
『ウロボロスの波動』に始まる人工降着円盤シリーズに見られる「本格宇宙SF」と架空戦記で鍛えた「戦争SF」の資質が合体した、期待のシリーズ幕開けである。
ともかく魅力的なのが月面考証。
代表的なのが、月面で敵のラミアを狙撃する場面。月面の重力、自転によるコリオリ力の影響、相手を倒すための弾道速度が脱出速度を超える(誤射すると弾丸は人工衛星になる!)ことによる制約などから、弾道は恐るべき制約を受ける……。等々。
『地球光』(これは戦争SFではないけど)から半世紀、月面描写はここまで来たかと感嘆する。(2008.9.11)