とり・みき『冷食捜査官@』(講談社)『ロボ道楽の逆襲』(イースト・プレス)

 
 とり・みき氏の新刊2冊が相次いで刊行されたが、これはもうSFギャグマンガの最高水準を示すものではないか。
 『冷食捜査官』は合成食品による統制下にある近未来、地下貯蔵庫から発掘される冷凍食品(自然食品)がブラックマーケットに出回っている。それを摘発するのが冷食捜査官である。
 90年代初期から描き続けられている連作12話で、タイトルは「10月はたそがれの国」「マグロが出てきた日」「コオリの微笑」……と過去のSFや映画などのモジリになっている。それぞれの話はパロディではないが、例によって細部に過去の名作へのオマージュや、背景にさまざまな「絵のギャグ」が描き込まれていて、その密度が凄まじい。
 全体の雰囲気は明らかにとり・みき版サイバーパンクである。
 一方、『ロボ道楽の逆襲』は、十数年間に発表されたさまざまな作品が集められている。しかも、表題作がギャグ・マンガの「リミックス」という「中編」であって、さらにホラーやパロディやパスティーシュなど全十数編が、書き下ろし作品でつながれていて、全体がさまざまな「とり・みきキャラクター」が織りなす悪夢的な物語という構成になっている。
 とり・みきマンガは(この2作に限らないのだが)翻訳SFを含むこの30年のSF史が凝縮され醸造発酵してとんでもないドブロク……じゃなかった銘酒に仕上げられている。人によっては悪酔いするだろうけど。
 ともかく、恐ろしいところまで来たなあ……と感嘆。
(2008.12.15)


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