鈴木則文『エロ将軍と二十一人の愛妾』
東映には一時期「大奥エロもの」というジャンルがあった。
おれが見たのは、学生時代に石橋劇場で見た石井輝男『徳川女絵図』だけだけど。
これは異常な将軍がやりまくる設定で、大奥で開催される「女相撲」が凄まじかった……太田房江が赤ふんどしでゲスト出演すれば似合ってたんじゃないかと思う、体型からいっても。
で、ひょんなことから入手したのがこのDVD。
『エロ将軍と二十一人の愛妾』、監督は鈴木則文で1972年作品。
徳川家治が「恍惚の人」になり(なんと田中小実昌!)、田沼意次(安部徹…熱演!)が擁立しようとするのが、勉学一筋の童貞男、筆おろしのために吉原に連れていったら膣痙攣を起こしてしまう。
そこで田舎から出てきたそっくりさんを代役にたてるのだが、こいつが無類のスケベにして絶倫男……今岡清がやれば似合いそうだが、演じるは林真一郎……これが大奥でやってやってやりまくるという話。
裸で出てくるのは21人どころか、数十人の尻をズラーーーーッと並べて「耐久テスト」やったり、とんでもない場面が続出する。
由利徹や岡八郎が中国人で出てきたり、基本的には喜劇仕立てなのだが……今観て気づくのは、これは『影武者・徳川家康』の先取りではないか!?
徳川家将軍が最下層(本作品ではどん百姓)と入れ替わる設定だけでなく、鈴木則文の反権力的な姿勢が貫かれていて、それは、たてつづけに妊娠させたに、田沼の女房を差し出させたり、さらには「皇女を娶って下賎の血を入れる」という相当やばい展開をみせる。
鈴木則文恐るべし。
隆慶一郎の二十年近く前にこんな怪作があったとは……。
引き続き『徳川セックス禁止令』が見たくなるなあ。
(2007.11.21)