筒井康隆『壊れかた指南』(文藝春秋)
今世紀になって書かれた短篇、ショートショート、全30篇。
ぼくはここに収録された作品のほとんどをすでに読んでいた。
ある時期、小説誌に載ったSF系作品を全部読む必要があり、その期間とほとんど重なっていたからである。
だから半年に3、4篇のペースだろうか。
こうして短編集で再読……やっぱり最初の読み方が適切だったと思う。一気に30篇を読むのは危ない。こちらが壊されてしまう危険性がある。
一日1、2篇読んでいくのがいいのではないか。
『敵』や『銀齢の果て』など「老人小説」が続いたところに、作者はよく「究極の老人小説は作者がボケているのかどうかわからない作品」といった発言が多いから、本当にそれを実践しているのかと錯覚しそうになるからである。
むろん極めて緻密に小説を「壊して」いる作品もあって、ボケていてこんな解体作業ができるわけがない。
もうひとついえば、小説誌に掲載されているのを読む場合、こういっては何だがステレオタイプの短篇が並んでいる中にあって、筒井作品はやっぱりその毒と切れ味で輝いている。
最近の小説誌が詰まらないのは、総じて長すぎるからである。30枚で書けるはずが5、60枚というのが多い。こんな中で本短編集収録の作品を読むと、やっぱり短篇の文体というのはここまでそぎ落とさないといかんのだなあと痛感する。
全て面白いが、わがベスト3は「余部さん」「鬼仏交替」「逃げ道」。
(2006.7.29)