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  ジョシュア・ギルダー、アン・リー・ギルダー『ケプラー疑惑』(地人書館)

 
 副題は「ティコ・ブラーエの死の謎と盗まれた観測記録」
 これは中身よりもおとなしいタイトルで、はっきり書けば『ティコ・ブラーエ殺人事件』……犯人はヨハネス・ケプラーである。(ミステリーではないから、巻頭に書いてある)
 方法は毒殺、動機はブラーエの観測記録を盗み出すことにあった……。
 この「真相」への迫り方は和歌山砒素カレー事件の方法に似ている。
 スプリング8の出番こそないが、毛髪の分析から死亡の13時間前に水銀を盛られたというが……。
 『ダヴィンチ・コード』より面白いのは確か。
 ティコ・ブラーエは「正しい天動説」を唱えた天文学者で、その観測データをもとにケプラーの法則が完成した。この科学史的な事実は変わらないだろうが、ブラーエ毒殺説が昔からあったということはまったく知らなかった。
 それにしても、えんかいな……。時効はとっくに過ぎているし、子孫から名誉毀損で訴えられる心配もなさそうだけど。
 最終的には(和歌山カレー事件みたいに)死亡13時間前の状況を再現するのは無理だろうから、疑惑は疑惑のまま残りそうだ。
 ――本書と関係ないが、10年以上前、雑誌のコラムで「ティコ・ブラーエ協会」という団体が(確かソルトレークに)あるというのを読んだことがある。それがブラーエの研究団体なのかブラーエの宇宙像の信者団体なのか不明で、調べてみたいと思っていた。が、その雑誌を紛失。そしてその後どこを調べてもそんな団体は見あたらない。ヨタ記事だったのかおれの記憶ちがいか。今も気になっている。
(2006.7.19)


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