丸本池鶴『ガウディへの讃花』(美研インターナショナル)
『ガウディへの讃花』
なんとも贅沢な写真集である。
丸本池鶴さんは池鶴フラワーを主宰するフラワーデザイナーである。
リーガロイヤルのチーフデザイナー、大阪万博の迎賓館花装飾担当などを経て、フラワーザザインのワールドカップ世界大会に日本から初めての代表として参加、受賞歴多数……と、たいへんな人なのだが、花にあまり興味のないおれは、そんなエライ人だとは知らなかった。
時々「ハチ」で会うジャズ好きの人……くらいに思っていたのである。
その丸本さんのフラワーデザインというのがどんなものか、初めて見たのが十数年前、『音と花』という「舞台」で、これは山下洋輔さんのピアノとのジョイント・セッションであった。
山下さんのピアノのイメージに合わせて舞台に花が飾られはじめ、その花のイメージで曲想が変化し、それが花のイメージに反映して……と舞台が音と花で埋められていく、ユニークなセッション。
その華麗さには、さすがの花オンチのおれも感嘆したものである。
その丸本さんが、昨年暮、バルセロナ、ガウディのバトリョ邸でフラワー・セッションを行ったという。
これは新聞で知っていた。
ただ、いったいどんなことが行われたのか……。
バルセロナには十年ちょっと前に行ったが、バトリョ邸は非公開で、表から外観を眺めただけだった。
その時のフラワーデザインが写真集になった。
独特の曲線をもつ窓や階段、タイル壁に触発されて、邸内の色々な場所に「ほとんど現地調達した」という花と花器で「讃花」(オマージュフラワー)が飾られいてる。
屋上のタイルのオブジェに飾られた花など、そのままタイルが花器になっている。
つまりバトリョ邸を器にした花の造形ともいえる、贅沢な試みである。
残念ながら永続的に飾られるものではないが、そこがまた花の美学なのであろう。
また行ってみたくなるなあ……
(2005.8.22)