梶尾真治『波に座る男たち』(講談社)
カジシンの新境地。落ち目のヤクザ一家が捕鯨に乗り出す冒険活劇小説である。
故・岡本喜八監督に捧げられている。
この2点だけでもわかるとおり、これは「独立愚連隊 海へ」と題すべき痛快活劇小説である。
いや、全編これ喜八作品へのオマージュといっていいほど。
個別の場面のパロディこそないが、ヤクザ一家の描写は『ダイナマイトどんどん』を彷彿とさせるし、クジラ撃ちとくれば、やっぱり『暗黒街の弾痕』を思い出すものなあ。
台湾マフィアとの銃撃戦なんて、独立愚連隊と暗黒街シリーズをミックスして船に乗せたような雰囲気。
つまり、(かなわぬ夢だが)岡本喜八による映画化を想定して書かれたとしか思えないのである。
そしてその面白さ、喜八作品のレベルに迫っている。
たいしたものだ。
カジシン、すごい作家になったなあ。
そのうち火野葦平の域に達するのではないか……。
(2005.8.31)