川島令三『<図解>日本三大都市 幻の鉄道計画』『<図解>日本三大都市 未完の鉄道計画』(講談社+α文庫)

 東京、名古屋、大阪とその近郊の「あり得たかもしれない鉄道路線」と「あり得るかもしれない鉄道路線」を網羅した労作で、テツならずとも興奮する。
 
 この2冊、町歩きを趣味とする人間にとって(いや普通に電車で移動している者にとっても)、日頃利用している電車路線周辺の風景を一変させてくれる。
 近代から現代そした近未来にいたるまでの、都市交通網の生成過程と、その間に計画だけで終わった幻の路線、現在工事が進行中の路線、さらにこれからの計画(多くは幻に終わりそうな)路線が、数多くの写真と路線図で解説してある。
 『幻の鉄道計画』が明治の馬車鉄道から昭和30年代まで、『未完の鉄道計画』が昭和40年代から近未来までを網羅する。
 とても一気読みできる本ではなく、地図や時刻表と照合しながら拾い読みしている段階だが、ともかく「あ、そうだったのか」の連続で、数ヶ月は楽しめそうである。
 一例あげれば、上京すると新橋によく行くし、地下鉄銀座線もよく利用するが、この地下に幻のホームが眠っている(五島慶太に対する東京地下鉄道の抵抗の遺物)なんて、まったく知らなかった。
 いや、こんなの、ほんの一例。
 当然のこととして、おれの場合、日頃利用する大阪周辺に興味がわく。
 これまた、面白い話満載で、例示していったらきりがない。
 代表例をふたつ。
 近代史的には幻に終わった「南海の梅田駅乗入計画」……これに限らず、南海が狭軌であるために挫折する数々の計画は悲劇的である。
 近未来では、なんといっても梅田北ヤードに計画されている新駅がどんな路線になるのか。2015年に四つ橋線が延伸されて阪急十三につながるという話がほぼ決まったように報道されるが、これが幻に終わりそうな事情がよくわかる。
 おれなりに予想は立てられるのだが、年齢からいって、見届けるのは不可能であろう。
(2008.11.2)


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